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【0801/08:大津、猿害問題】朝日特集記事:比叡の「神猿」、群れごと捕獲、餌付け中止後、被害続き

2008-01-04 23:34:14 | Weblog

比叡山のふもと大津市で、野生のニホンザルが人を襲ったり、民家や畑を荒らし回ったりする被害が後を絶たず、市は来月から、群れごと一網打尽にする捕獲作戦に乗り出すことを決めた。古来、比叡山のサルは「神の使い」。だが、観光客や市が続けてきた餌付けが10年前に中止されると、エサを求めて人里を襲うようになった。あの手この手の対策も効き目はなく、高齢化が進む地区住民の疲労も色濃い。市は人手とカネをつぎ込んだ「最後の手段」に期待を寄せる。

【写真】捕獲され、大津市営放牧場のオリの中で暮らす大津E群のサルたち=大津市山上町で

「サルが屋根の上で走り回る。ものすごい音で眠れやしない」「庭の野菜を手当たり次第に食い荒らす。追い払おうとすると、大きなサルに威嚇された」――。

昨年12月22日、大津市役所で開かれた「ニホンザルとの関(かか)わり方を考えるシンポジウム」。被害が集中する同市坂本、穴太(あのう)両地区の住民ら約80人が参加し、市側に次々と不満をぶつけた。地元では数年前から季節を問わず、人を恐れないサルとの「攻防」が続く。女性の買い物袋に襲いかかったり、追いかけられた子どもが転んでけがをしたりする被害も相次いでいる。

市鳥獣害対策室などによると、市周辺の山で暮らすサルの群れは11あるが、中でも住宅地への出没率が高いのが、比叡山を本拠とする「大津E群」(約50頭)。延暦寺の門前町にあたる両地区を中心に、出没回数は1日あたり1.4回。ほかの群れの0.01~0.27回を大きく引き離す。06年の県の調査では、E群とみられるサルに一度でも被害に遭った家が市内で6000軒に達した。

近くの日吉大社では、サルは「神猿(まさる)」と呼ばれる神の使いだ。「勝る」「魔去る」に通じるとされ、国指定重要文化財の楼門にも守り神として木像がある。

比叡山では、1960年ごろから研究者がサルの生態研究のために餌付けを始めたとされる。比叡山ドライブウェイの利用がピークだった60年代半ばには、観光客による餌付けも広がった。その後、エサ欲しさに群れが住宅街に現れるようになり、困った市は85年から97年まで山中でエサを与え続けたが、専門家から「個体数が増えすぎる」と指摘され、中止した。

昨年1月以降、市職員が土日返上でパトロールを続け、サルの出没情報を住民の携帯電話にメールで配信している。地元住民は「穴太猿害対策会」を設け、情報を受けて現場へ急行。市から提供されたエアガンや爆竹、連発花火で追い払う。ただ、最近はサルが武器に慣れ、目立った効果は期待できない。

対策会のメンバー約20人の平均年齢は60代後半だ。沢康博会長(70)は「自分たちもいつまでサルを追えるかわからない」と嘆く。

市は一時、射殺も検討したが、動物愛護団体の抗議で断念。生け捕り策に切り替え、市営放牧場に3000万円でオリを新設した。昨年1月には31頭を捕獲し、リーダー格のオス3頭と繁殖能力のあるメス9頭は飼育。残るサルには唐辛子スプレーを浴びせ、人の怖さを教え込んで山へ返した。

それでも、サルによる被害は昨年、11月末までに286件にのぼり、前年より25件減っただけ。群れには子ザル8頭も生まれ、「ボスザル捕獲作戦」は失敗に終わった。

市議会は先月、群れ全頭を生け捕りにするため、ハンターの人件費など670万円を盛り込んだ補正予算案を可決。市は県から捕獲許可を得て、作戦に取りかかる。担当者は「40年に及ぶ餌付けで、人間の食べ物しか口にしないサルの群れになってしまった。もはや、ほかに策はない」と言う。

(1月4日付け朝日夕刊の記事)

http://www.asahi.com/life/update/0104/OSK200801040043.html

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