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【1108/17:揺さぶり死事件】湖南の双子次女揺さぶり死判決 生活の中から支えを 

2011-08-02 23:23:43 | Weblog
【毎日新聞特集「現場から記者リポート」:湖南の双子次女揺さぶり死判決 生活の中から支えを 】

 ◇孤立防ぐ態勢作り必要
 
 湖南市の自宅で昨年10月、生後6カ月の双子の次女を揺さぶって死なせたとして傷害致死罪に問われた窪恵美子被告(37)の裁判員裁判が7月、大津地裁であり、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役4年)の判決が言い渡された。傍聴を続ける中で、背景にある過酷な育児環境を知った。各地で相次ぐ虐待事件を減らすにはどうしたらいいのか。窪被告の夫を訪ね、考えた。【村山豪】

 「やったことの重さが一番身にしみているのはあなた。協力を得ながら、長女を育ててください」。7月15日午後3時、大津地裁。飯島健太郎裁判長の静かな言葉に、窪被告はかすかな声で「はい」と答えた。

 双子を出産したのは結婚から約7年半後の昨年3月。迷った末の不妊治療で授かったのは三つ子だった。未熟児出産のリスクや母体への負担を考え、減胎手術に踏み切った。手術前、窪被告は何度もおなかの子に「ごめんね」と語りかけていたという。亡くなった次女はよく泣いた。実家も遠く、サポートを受けることは難しかった。公判の被告人質問で事件当日のことを聞かれ、言葉をつまらせ「思い出せない」と語った背中が印象的だった。

 会社員の夫(35)は昼休みに家事を手伝いに帰ることもあったという。「部屋に入ると、妻はよく倒れ込むように横になっていた」。朝はどちらかの子の泣き声で目覚める日々。授乳も排せつの世話も2人分。「自分も仕事と家事の両立で精いっぱい。育児から逃げられない妻の気持ちまで受け止める余裕はなかった」。判決後、妻は四国の実家で、長女も近くの自身の実家で別々に暮らす。「いつかまた3人で」。それが今の目標だ。

 乳児の虐待事件は後を絶たない。昨年1月には堺市で生後2カ月の女児が母親に強く揺さぶられて亡くなり、7月、大阪地裁堺支部は母親に懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。大津地裁の執行猶予付き判決に検察関係者は「事件を減らすために実刑は必要だったのでは」と語る。

 ただ、事件を「人ごとではない」と案じる母親は多い。湖南市内で双子を育てる親の会「ビーンズ23」に参加しながら3歳の兄弟を育てる母親(37)は出産後、数時間に1回は夜泣きで起こされ、1歳まではゆっくり寝る暇も、外出する暇もなかったという。「赤ちゃんは悪くないけど、つい手が出てしまう」。公判でも同じ立場の母親4人の嘆願書が紹介された。

 子育て支援の強化は自治体の大きな課題。多胎児のいる家庭にはより積極的な支援が必要だという。湖南市では今年1月から新生児訪問や4カ月、10カ月健診に加え3カ月と6カ月目にも保健師が訪ねている。3歳まで120時間を限度にホームヘルパーを無料派遣する事業も始めた。大角勝一・同市健康政策課長は「悩みを話すのが苦手なお母さんでも何度も顔を合わせれば異変に気づけるかもしれない」。臨床心理士で元児童相談所職員の桜谷真理子・立命館大教授(人間福祉専攻)は「家庭への介入は覚悟もいるが、最悪の事態を想定した関わりが必要では」と語る。

 孤立する若い親たち。核家族で育ち、赤ちゃんの抱き方も分からない私があした親になったら……。不安を共有し、生活の中から支える態勢作りが求められているのだと思う。

(8月2日付け毎日新聞・電子版)

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20110802ddlk25040553000c.html

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