【毎日新聞特集「なるほドリ」:放射性物質拡散をシミュレーション】
◇地域防災計画見直しに活用 原発事故に備え
なるほドリ 福島第1原発の事故で放射性物質の影響がいろいろな形で現れているね。福井県の原発で事故があった場合に備えて、滋賀県内でも放射性物質拡散のシミュレーションを準備しているって聞いたけど、どうやるの?
記者 県琵琶湖環境科学研究センターで研究していた光化学オキシダントのシミュレーションを応用します。天気の予測に使われる「MM5」という気象モデルや、化学物質の発生場所、大気中での化学反応などを組み合わせ、光化学スモッグの発生場所を調べるシステムです。東アジア規模の天気の動きや、県周辺の地形、風向き、湿度などを計算し、小さな物質の動きを追うことが可能で、放射性物質の広がり方を予測できると考えられています。
Q 放射性物質のシミュレーションでは何を考慮するの?
A 同センターの大気圏担当、園正さんによると、半減期(放射能が半分になるまでの時間)や、それに伴う放射線量の変化、粒子の大きさや重さが変わることによる対象物質のふるまいの違いを考慮する必要があります。今後、放射線の専門家の意見を踏まえてプログラムを設定するそうです。
Q 事故がどの原発でいつ起きるかによって、広がり方も違うんだよね?
A 風や天気、事故の規模や発生場所によって全く違います。幾通りも考えられる状況の中で、実際に防災計画に役立つシミュレーションを準備する必要があるのです。県防災危機管理局によると、考えられるパターンの数を増やせば精度が上がりますが、どこまでやるかは今後の検討課題。シミュレーションは今年度中に用意するそうです。
Q どうして今になって始めるの。東日本大震災前には検討しなかったのかな。
A 国の原子力安全委員会は従来、原発事故に備えるのは原発からおおむね8~10キロの地域でいいとしてきました。こうした地域を防災対策重点地域(EPZ)と言います。ところが東日本大震災ではEPZ圏外の多くの住人が避難を迫られ、その中には原発から47キロ離れた人たちもいます。滋賀県の場合、長浜市と敦賀原発の距離が最短で13キロですが、地域防災計画では「屋内待避が必要になるような放射線は到達しない」という想定でした。
Q 想定が甘かったんだね。
A それが分かり、原発に近い日本中の自治体が防災計画を見直しています。滋賀県の計画でも今後、原発事故は避難が大前提となり、計画を立てるうえでシミュレーションが活用されることになります。<回答・石川勝義(大津支局)>
==============
あなたの質問をお寄せください。〒520-0806(大津市打出浜3の16)毎日新聞大津支局「質問なるほドリ」係(ootu@mainichi.co.jp)
(8月24日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20110824ddlk25070341000c.html
◇地域防災計画見直しに活用 原発事故に備え
なるほドリ 福島第1原発の事故で放射性物質の影響がいろいろな形で現れているね。福井県の原発で事故があった場合に備えて、滋賀県内でも放射性物質拡散のシミュレーションを準備しているって聞いたけど、どうやるの?
記者 県琵琶湖環境科学研究センターで研究していた光化学オキシダントのシミュレーションを応用します。天気の予測に使われる「MM5」という気象モデルや、化学物質の発生場所、大気中での化学反応などを組み合わせ、光化学スモッグの発生場所を調べるシステムです。東アジア規模の天気の動きや、県周辺の地形、風向き、湿度などを計算し、小さな物質の動きを追うことが可能で、放射性物質の広がり方を予測できると考えられています。
Q 放射性物質のシミュレーションでは何を考慮するの?
A 同センターの大気圏担当、園正さんによると、半減期(放射能が半分になるまでの時間)や、それに伴う放射線量の変化、粒子の大きさや重さが変わることによる対象物質のふるまいの違いを考慮する必要があります。今後、放射線の専門家の意見を踏まえてプログラムを設定するそうです。
Q 事故がどの原発でいつ起きるかによって、広がり方も違うんだよね?
A 風や天気、事故の規模や発生場所によって全く違います。幾通りも考えられる状況の中で、実際に防災計画に役立つシミュレーションを準備する必要があるのです。県防災危機管理局によると、考えられるパターンの数を増やせば精度が上がりますが、どこまでやるかは今後の検討課題。シミュレーションは今年度中に用意するそうです。
Q どうして今になって始めるの。東日本大震災前には検討しなかったのかな。
A 国の原子力安全委員会は従来、原発事故に備えるのは原発からおおむね8~10キロの地域でいいとしてきました。こうした地域を防災対策重点地域(EPZ)と言います。ところが東日本大震災ではEPZ圏外の多くの住人が避難を迫られ、その中には原発から47キロ離れた人たちもいます。滋賀県の場合、長浜市と敦賀原発の距離が最短で13キロですが、地域防災計画では「屋内待避が必要になるような放射線は到達しない」という想定でした。
Q 想定が甘かったんだね。
A それが分かり、原発に近い日本中の自治体が防災計画を見直しています。滋賀県の計画でも今後、原発事故は避難が大前提となり、計画を立てるうえでシミュレーションが活用されることになります。<回答・石川勝義(大津支局)>
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あなたの質問をお寄せください。〒520-0806(大津市打出浜3の16)毎日新聞大津支局「質問なるほドリ」係(ootu@mainichi.co.jp)
(8月24日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20110824ddlk25070341000c.html