新国立競技場 検証委 報告書公表 速報
下村文科相・河野JSC理事長の責任を指摘
白紙撤回された新国立競技場の整備計画について問題点などを調べている文部科学省の検証委員会(委員長=柏木昇・東京大名誉教授)は、2015年9月24日、第4回検証員会を開き、報告書をよりまとめ、下村文部科学大臣に提出した。
報告書では、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)と監督官庁である文科省の責任の所在が不明確で、意思決定に問題があったと指摘した。河野一郎JSC理事長や下村博文文科相、事務次官については、組織の長として問題が起きないように組織内の調整を図ることを怠ったとした
この検証員会は、2015年7月17日、約3年半に渡って進められた新国立競技場の整備計画が“白紙撤回”された事態を受けて、整備計画のこれまでの経緯を検証するために、文部科学省に第三者組織として設置された。
検証委員会の構成は、委員長に柏木 昇氏(東京大学名誉教授)、委員に國井 隆氏(公認会計士)、黒田 裕氏(弁護士)、為末 大氏(一般社団法人アスリート・ソサエティ代表理事)、古阪秀三氏(京都大学教授)、委員長代理に横尾啓介氏(経済同友会専務理事/みずほ証券常任顧問)で、検証協力者として岸 郁子氏(弁護士)の協力を得た。
「検証結果:問題点の検証」の総論として以下の点を指摘した。
(1) 検証にあたっての前提
▼ プロジェクトの難度の高さ・複雑さ
2019年開催のラグビー・ワールドカップに間に合わせるというタイトな工期で、最高水準の建設技術が求められるデザインを実現するという極めて“難易度”が高いプロジェクトであった。また、東日本大震災の復興事業の影響で、資材費や人件費などの建設費が高騰する中で、建設計画見直しが再三にわたって行われたことで、一層、“複雑”化していった。
▼ 異なる工事費の取り扱い
さまざな工事費の数値が出されたが、それぞれの概算値は、“計算基礎”と“算出主体”、“制度”が異なるものであり、このような“性質の異なる数字”を横並びで比較することは慎重でなければならない。
(2)見直しに至った主な要因
▼ 集団的意志決定システムの弊害
意思決定が“トップヘビー”で、機動性がなかったことで、“意志決定の硬直性”を招いた。
▼ プロジェクトの推進体制に係る問題
大規模かつ複雑なプロジェクトであったにも関わらず、既存の組織やスタッフで対応してしまった。
▼ 情報発信のあり方に係る問題
情報発信の透明性の向上や、国家プロジェクトに対する国民理解の醸成が図られなかった。
(3) 見直しすべきだったタイミング▼ 2013年8月に設計会社JVから、ザハ・ハディド氏のデザインをベースに関係団体の要望をすべて満たした場合、工事費が3000億円を超えそうだという報告がなされ、その際に工事費の削減案が関係者で検討されている。
▼ 2013年9月に東京五輪の招致が決定した後、この削減案を基づき一度ゼロベースでザハ・ハディド案を見直しする一つのチャンスがあった。
▼ プロジェクトを動かす必要が生じた2015年9月から年末にかけてが、ゼロベースで見直しを行う一つのタイミングだったの考える。
(4) 責任の所在について
▼ 結果として、このプロジェクトの難度に求められる整備することができなかったJSC、ひいてはその組織の長たる理事長にあるといわざるを得ない。
▼ 文部科学省についても同様に解するべきであり、その組織の長たる文部科学大臣及び事務方の最上位たる事務次官は関係部局の責任を明確にし、本プロジェクトに対応することができる組織体制を整備すべきであった。
検証結果 事実認定
(新国立競技場整備計画経緯検証員会 2015年9月24日)
新国立競技場の工事費・解体工事費の変遷について
(新国立競技場整備計画経緯検証員会 2015年9月24日)
2015年9月24日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
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