一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中井広恵と行く稚内ツアー(第8手)・夢の海鮮三昧

2012-06-20 00:27:39 | 将棋イベント
熱闘の余韻冷めやらぬまま、今回の稚内ツアーのもうひとつの目玉である、懇親会の準備が始まった。
部屋の前の庭にはブルーシートが張られ、即席の焼き場が造られていた。きのうは植山悦行七段もこちらに来て、設営の手伝いをしたという。ありがたいことである。
底の深いケースの中には、殻付きのウニ、ホタテ、毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニ、北寄貝、ツブ貝、タコ、イカなどの海産物が、これでもかというくらい入っていた。漁師を生業にしている会員が、きのう獲ってくれたものだ。目も眩む光景である。
テーブルの上には刺し身の盛り合わせ、ウニなどが載り、みなが好みの席に座った。私の前は渡辺俊雄氏、その左に金内辰明氏が座った。こんな重量級が眼前にいては、緊張で海鮮の味も分からない。私は極度の人見知りなのである。
中井広恵女流六段、植山七段、大野八一雄七段はというと、向こう側に固まって談笑しており、まったく戦力にならない。
私の左にはHis氏が座っているが、両強豪に関心はなさそうだ。こちらが戸惑っている中、午後4時10分、中井女流六段の音頭で「乾杯!」となった。
さっそく殻付きのウニが配られる。二つに割られているが、トゲの部分が蠢いている。新鮮さの証である。
中の身をプラスチックのスプーンで掬って食べるが、そのスプーンが足りなかった。
私は
「こんなこともあろうかと、保存していたのがあるんですよ…」
とつぶやき、スーツのポケットからプラスチックのスプーンを取り出す。それを見ていた渡辺・金内両氏が爆笑した。
ウニはなめらかで、美味かった。ウニ特有の臭みがまったくなく、いくらでも入りそうだ。これがウニ本来の味なのだろう。
両強豪とは、ひょんなことから、話の糸口をつかむことができた。私はふたりを退屈させないよう、話題を振る。
渡辺氏は元アマ竜王、金内氏は元朝日アマ名人という、輝かしい棋歴の持ち主。最近はプロアマの垣根も低くなってきているが、おふたりにプロ入りの意向はないのか、聞いてみた。渡辺氏だったか金内氏だったか失念したが、稚内の将棋熱をアテこんで、いま勤めている会社に、自ら稚内勤務を申し出たほどなのだ。その将棋熱はハンパではない。
「仮にプロになれたとしても、いいとこC2どまり。プロになる意志はまったくない」
と異口同音の答えだった。
将棋が強くなるには? の問いには、金内氏が「将棋に勝つためには」と捉え、それには「得意戦法を持つこと」と答えてくれた。
私は刺し身の盛り合わせを食す。続いてズワイガニ。瑞々しくて美味い。
私は北海道を30回以上訪れているが、食にはあまり関心がなく、ランチに握り寿司を食べることが贅沢の部類に入るほどだった。しかしそれは大きな損失だったと考えざるを得ない。
しばらく経つと、大野七段がこちらに来た。雑談のあと、渡辺氏と隣室で一局指すことになった。これはゼニの取れる一戦である。
金内氏にはHis氏が対局を申し込んだ。私は臆してしまって対局どころではないが、His氏はいい機会と捉えているのだ。
私は引き続きカニと格闘。美味いには違いないが、食べ切れない量である。別の支部の方と歓談。
His氏の対局が終了したあとは、引き続きKun氏が挑む。Kun氏は対抗戦2回戦で、渡辺氏と交えている。両強豪と指せるのは稀有なこと。これはKun氏、至福の時間だったろう。
タコのブツ切りが出てくる。焼いたものに塩コショウがかけられていた。これが美味い! 東京では絶対にできない食べ方である。
タラバガニも焼かれて出てきた。アツアツのところを食べる。これも美味い! 本当に美味いものは、何も手をかけなくていいのだ。 
刺し身の皿がようやく空になった。支部の人がそれを下げたら、すぐに同量のおかわりが出てきたので、目が点になった。
金内氏との将棋を終えたKun氏に呼ばれた。行ってみると、中井女流六段が庭で焼き手をやっていた。
私は縁側に腰掛ける。
「何がいいですか?」
と中井女流六段。その軍手姿が、マニアにはたまらない。
私はホタテを焼いてもらう。中井女流六段は、「師匠、もう醤油入れていいですか?」「これ、もう焼けてますか?」とA氏にイチイチ聞いている。
これじゃ中井女流六段、焼き網に食材を乗せただけじゃないか!? などと言ってはいけない。中井女流六段がくれた焼きホタテは、バターがじんわり利いて、美味だった。
宴もたけなわだが、懇親会にはさらなる目玉企画があった。稚内支部と関東組がペアを組んでの、ペア戦である。その組み合わせは中井女流六段と支部有志で決めたようだ。今回は中井女流六段のお父さんも参戦する。
部屋の一隅に再び対局場を作る。今度は脚付きの将棋盤だ。
全13ペア参加で、1回戦はぶら下がりの5局。×2、×2で、総勢20人が盤を挟んだ。なんだか男臭いというか加齢臭漂うというか(失礼)、凄まじい人いきれの中、7時40分、ペア戦の開始となった。
優勝ペアには活きホタテが贈られる。優勝候補は渡辺・Honペア、金内・Isペアだろう。私は1回戦休み。現在焼き手をしている、N氏がペアだった。
持ち時間は10分だから、ポンポン進む。先の2ペアは手堅く勝利を収めたようだ。
進行にバラつきが出たが、構わず2回戦を始める。N氏は三田村邦彦似のイケメン。ある支部員氏によると、ペア将棋を指したことがあるのだが、自分の指し手に自信が持てないようで、一手指すごとに相方の顔色を窺うという。
何とも頼りないが、だからといって弱いわけではなさそうだ。私との指し手が噛み合えば、優勝も夢ではないと思った。
2回戦、私たちの相手は、植山・Kubペア。変則的だが、関東組のペアである。
Kub氏は対抗形を好むが、どちらかといえば居飛車党だろう。急戦を勉強しているから、逆にいえばこちらが居飛車で急戦を仕掛ければ、うまく攻めこめるような気がした。
時間が押しているので、持ち時間5分で対局開始。私たちは予定どおり居飛車明示。植山・Kubペアは四間飛車に振った。私たちは▲5七銀左から元気よく仕掛ける。N氏はやはり一手指すごとに私を見るが、その指し手は正確だ。
私は、こちらのほうが形勢がいいんだから、自信を持ってくれよっ!! という意味で、力強く駒を打ちつける。
結果は私たちの快勝。植山七段によると、こちらの指し手は「パーフェクト」だったらしい。
金内・Is戦はHis氏ペアを相手に大逆転勝ち。厄介なペアが残ってしまった。
準決勝、私たちの相手は中井女流六段と。その相方は、先ほどN氏の人となりを教えてくれた方だ。中井女流六段とはペアを組みたかったが、それは無理な話。とにかく盤面に集中することだけを心掛けた。
こちらの先手で対局開始。作戦どおり、四間飛車に振った。しかし早めに▲6七銀としなかったのは私のミス。△7五歩から△7二飛とされ、立ち遅れを衝かれた格好になった。
将棋が2局になって、だいぶ人いきれが薄くなっている。準決勝のもう一局は渡辺・Hon-金内・Is戦。第三者だったら、これが事実上の決勝戦と言いたいところ。しかし私たちがどちらかと決勝戦を戦うことになるかもしれない。簡単に優勝はさせない。
その前にこちらの将棋だ。私たちが非勢のまま終盤に突入したが、その差は意外に離れていなかったようである。
金内氏とIs氏が歓談している。どうも、決勝に進出したようだ。私はどちらかというと、こちらのペアがイヤだった。
私は端を攻める。△1二歩に▲1三香、△1二香に▲1三角と強引だ。しかしこの強襲が何とか通り、ここからは最後まで私たちの息が合って、逆転勝ち。まさかの決勝進出となった。
対局が終わった人々は、食事と歓談に夢中だ。ほとんど注目されない中、すぐに金内・Isペアとの決勝戦が始まった。
(つづく)
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2 コメント

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判官贔屓か (不利飛車迷人)
2012-06-20 10:12:30
>ここからは最後まで私たちの息が合って、逆転勝ち。まさかの決勝進出となった。



ペア将棋の難しさは如何にペアの息を合わせるかと言うことのように思います。

一番ペアに空気を会わせづらい(失礼)と思われた一公さんがここまで勝ち上がれるとは予想外の快挙と感じていました。

別にIs氏には恨みがあるという訳では無いのですが、金内氏に土を付けて欲しいと考えていたのは私一人では無いでしょう。

ここまで来たら一公ペアに是非勝って貰いたいと心の中で応援していたのですが・・・・・
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残念でした (一公)
2012-06-21 00:37:08
>不利飛車迷人さん
決勝進出は望外でした。お互いが指し手の狙いを読んで、3手一組の指し手を続けられたのがよかったようです。
決勝戦は残念でしたが、力いっぱい指したので、悔いはありません(あります)。
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