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来年のことを言うと鬼が笑う

2021年11月01日 | ことば遊び
去年から今年にかけてコロナ騒動で相当に人心が参っているから、「来年こそはいい年になりますように」と願わずにはいられない。
ところが、「来年のことを言うと鬼が笑う」ともいわれているので、そんな諺を調べてみた。

将来のことは予測できないということ。予知能力のある鬼は、来年の話をする人間を見て「明日のことすら分からぬくせに」と笑い飛ばすという。
また、厳(いか)めしい顔をして、とても笑いそうもない鬼でさえ笑うからともいう。

全国にたくさんあるこの種の昔ばなしから、次の「島根県の昔話」を選んでみた。
昔々、とても強い相撲取りがいました。ところが突然の病で、ころりと死んでしまいました。人は死ぬと、閻魔大王のところへ連れていかれます。生きている時に良い事をした者は、楽しい極楽へ送られます。生きている時に悪い事をした者は、恐ろしい地獄へ送られます。閻魔様は、相撲取りに聞きました。「お前は生きている時、何をしていた❔」「はい、わたしは相撲をとって、皆を楽しませてきました」「なるほど、そいつは面白そうだ。よし、お前を極楽に送ってやろう。だがその前に、わしに相撲を見せてくれ」「でも、一人で相撲をとる事は出来ません」「心配するな。ここには強い鬼がたくさんおる。その鬼と相撲をとってくれ」

閻魔様は、一番強そうな鬼を呼んできました。相手が鬼でも相撲なら負ける気がしません。相撲取りはしっかりと四股を踏んでから、鬼の前に手をおろしました。鬼も負けじと四股をふんで手をおろしました。「はっけよい、のこった!」閻魔様が言うと、相撲取りと鬼が四つに組みました。鬼は怪力で相撲取りを押しますが、相撲取りは腰に力を入れて「えい!」と、いう声とともに鬼を投げ飛ばしました。投げ飛ばされた鬼は岩に頭を打ちつけて、大切な角を折ってしまいました。 角が折れた鬼は、わんわんと泣き出しました。「こらっ、鬼が泣くなんてみっともない!」閻魔様が言いましたが、でも鬼は泣くばかりです。
困った閻魔様は、鬼を慰めるように言いました。「分った分った。もう泣くな。来年になったら、新しい角が生えるようにしてやる」そのとたん鬼は泣きやんで、ニッコリと笑いました。
そんな事があってから、『来年の事を言うと鬼が笑う』と、言うようになったそうです。   <<おしまい>>

栃木県益子町にある「西明寺」には、こんな「笑い閻魔」がいる。
   

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