その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

かぎろひ

2007年12月21日 | Weblog

 

かぎろひ

 

***

 

今日は友達の話を~

 

彼女いわく

 

「いけない」と思いつつ

彼の携帯メールを見てしまった

彼がもっとも頻繁に

やり取りをしている相手は

彼女のもっとも親しい友だった

頭にカァ~と血が上り

彼の送ったメールを見たら

なんと

彼女のための

サプライズバースデーの

打ち合わせだった

・・・・

「ごめんなさい・・・」

~~~

この話を聞いて・・

なんとも

むなしい気がしてしまった

感動を与えるのも受けるのも

自然が一番だね

***

 

果てしなく受け継ぐ感動

~東(ひんがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて

かへりみすれば 月西渡(かたぶ)きぬ~

万葉集(柿本人麻呂)

かぎろひは

二ので一時間前に見られる

最初の陽光といわれ

よく晴れた寒さの厳しい日にしか

見られない現象だそうです

陽炎(かげろう)の語源とも言われるかぎろひですが

もとは かぎる火

つまり

ちらちら光る火という意味です

柿本人麻呂が詠んだかぎろひは

やはり

日の出前の光のほうがふさわしいですね

毎年

この歌が詠まれた

旧暦11月17日に

この歌が詠まれた「阿騎野(あきの)の丘」で

「かぎろひを見る会」が催されるそうです

千三百年以上前の歌

風景 そして感動を今なお

受け継いでいるなんて

何と壮大なロマンなのでしょう

いつまでも伝えて生きたい宝物ですね

(山下景子著「美しい日本語」より)

 

 

 

 

 

 


月天心(つきてんしん)

2007年12月20日 | Weblog

 

月天心(つきてんしん)

 

***

 

わたしはいつも

 

デートの最後に

 

彼に同じ質問をする

 

「どれくらい好き?」

 

すると彼は

 

いつも決まって

 

月と地球を結ぶ距離くらい

 

わたしはいつも

 

「どれくらい好き?」と聞くのは

 

わたしを元気にする

 

呪文だから~~

 

いつも必ず答えてくれて

 

ありがとう

 

***

 

つきと地球を結ぶ線

冬の月は

ひときわ天高く輝いています

天心は 天の中心のこと

あたかも 月が

天の中心に見えるので

こう呼ばれます

もうひとつ 天心には

天の心という意味もあります

冴えわたった空から月の光は

優しく見守ってくれる眼差しのようです

冬の夜道も

真上からのスポットライトを

浴びるような気分で歩けば

足取りも軽くなりますね

ふと 足をとめて 空を見上げませんか

月と地球の中心を結ぶ一直線上に

自分が立っているような感覚を

味わうことが出来ます

本当にちっぽけだけれど

自分の宇宙の一員だと

そう思える一瞬です

(山下景子「美人の日本語」より)

 

 

 

 

 

 

 


どんでん返し

2007年12月19日 | Weblog

 

どんでん返し

 

***

 

ニュース番組を見ていたきみが叫ぶ

 

どんでん~~?

 

なにさ・・どんでん返しって

 

どぇんぐり返しなら知ってるぅ

 

それ始まった

 

新しいもの好きな性格

 

質問の嵐が迫っている

 

でもこの言葉は・・

 

自信たっぷりに

 

受けて立てるぞっ

 

ところが・・

 

質問が来ない

 

振り返ると

 

君は既に消えて異空間へ

 

どうやら質問攻撃は

 

おばあちゃんを攻めているようだ

 

高みの見物といこう

 

やってるやってる~

 

どうなるかな・・

 

***

 

不自由の逆転劇

歌舞伎の舞台演出のひとつで

正しくは龕灯返し(がんどうがえし)といいます

江戸時代に考え出されたとは思えないほど

大掛かりな舞台装置です

大道具ごと それも

たいていの人がのったまま

背景が後ろに九十度倒れるように

回転していき それにつれて

底の部分が垂直に立って

次の新しい背景になるという仕掛けです

大きな山場ですから

「ドーン デーン ドーン デーン」と

鉦(かね)や太鼓の

派手な鳴り物が入ります

ここからどんでん返しと

呼ばれるようになりました

限られた条件の中で

何とかしようと工夫した結果

こんなすごい装置まで

あみ出す事が出来たのですね

奇跡も

限られた条件の中だからこそ

生まれるのかもしれません

不自由さを感じたら チャンスです!!

(山下景子著「美人の日本語」より)

 

 

 

 


月冴える

2007年12月18日 | Weblog

 

年の瀬

 

***

 

またまた大笑いなことが

 

我が家の早耳くん

 

やってくれました

 

ねぇえ~ねええ・・

 

どうして年のせいだと忙しいの?

 

え?なんのこと?

 

さっき宅配の人がいってたよ

 

年のせいで忙しいって~

 

しばし無言で・・

 

ハタと気がついた・・

 

それって

 

年の瀬で忙しいって言わなかった

 

???

 

怪訝な顔である

 

年の瀬 でしょう

 

さらに???である

 

・・・・

 

言葉の意味が分かって

 

一件落着

 

年のせいは年の瀬で忙しい

 

***

 

明日は宝船

 

瀬は 川の流れが浅いところ

または 急流のことです

一年を川に見立てると

暮れも押し迫ったこのころは

瀬にあたるということでしょう

「瀬」の語源は

「塞(せ)く」または「切(せ)る」だそうです

一年の節目を前にして

岩に堰きとめられた場所のように

流れが速くなっているのですね

~年の瀬や 川の流れと 人の身は

あした待たるる その宝船~

俳人 宝井其角と

赤穂浪士 大高源吾が

討ち入り前に交わしたと言われる歌です

討ち入りを考えに入れなくても

充分味わえますね

舟で川の瀬を越すように

年の暮れをやっとのことで

乗り越えることを

「年の瀬越し」というそうですが

その舟は

明日には宝船になるかもしれない・・

そんな夢を抱かせてくれます

(山下景子著「美人の日本語」より)

 

 

 

 


夜這い星(よばいぼし)

2007年12月16日 | Weblog

 

夜這い星(よばいぼし)

 

***

 

思い出すね

 

宿舎の塀を乗り越えたら

 

下に寮長がいて

 

慌てふためいて

 

スカート引っ掛けて破いたこと

 

二度目に見つかったときは

 

あなたが逃げ出すとき

 

財布落として

 

仕方なく捕まったとき

 

始末書書く手が震えていた

 

遠い遠い思い出

 

でもそれがあって

 

今がある

 

・・・・

 

***

 

恋する魂

流れ星・・昨日少しだけ見ることができた

寒さをこらえて真っ暗な空見上げていた

突然思わぬ方向から・・スーっと

流れ星の正体は

宇宙に散在している塵だそうです

その流れ星の呼び方も

地方によってさまざまです

他の星に縁を切られて

落ちてゆくところだと思って「縁切り星」

反対に

他の星に嫁ぐところだとみて

「星の嫁入り」という地方もあります

「夜這い」も

昔は「婚(よばい)」と書いたぐらいで

もともとは「呼ばい」

結婚を求めて呼びかけることだったそうです

昔は

恋しいと思いつめていると

魂だけが抜けだして

その人のもとへ行くと信じられていました

流れ星は恋する魂というわけですね

流れ星が消えないうちに

願い事を三回唱えると

叶うといわれていますが

いつもあっという間に消えてしまいます

恋心は

ものすごい速さで

飛んでいってしまうものなのですね

(山下景子著「美しい日本語」より)

 

 

 

 

 

 


徒花(あだばな)

2007年12月15日 | Weblog

 

徒花(あだばな)

 

***

 

どこで覚えてきたのか

 

おばあちゃんに聞いた様子がない

 

徒花ってどんな花と

 

久しぶりの質問

 

色は 形は

 

どこに行くと見られるの

 

矢継ぎ早の質問

 

・・・

 

わかりやすく答えられなくて

 

本のどこかに出ていたことを思い出し

 

読んで聞かせて

 

一緒に覚えられて良かったねというと

 

知らないこともあるんだね~

 

そうだよ

 

人は勉強してもしても

 

それで終わりはないんだよ

 

生きている間

 

知らないことに出会って

 

勉強できるんだよ

 

勉強はあてもなくするのではなくて

 

神様から必要な分だけ

 

与えられるんだよ

 

だから感謝しないとね

 

勉強できることを

 

~~~

 

***

 

必要な花

咲いても 実を結ばない花

咲いても 直ぐ散ってしまう花

そして 季節はずれに咲く花

徒花という言葉で

表される花たち・・・

「徒(あだ)」は

無駄とかむなしいという意味です

果たして本当に

無駄なのでしょうか

蟻(アリ)を観察すると

本当に働いているのは20%だそうです

その働いている蟻だけを集めてみると

その中の20%しか働かなくなるそうです

反対に

最初働いていなかった80%の蟻を

集めてみるとそのうちの20%は

働き出したそうです

つまり

働いていない蟻も

必要な存在だったわけです

命に無駄はないのだと思います

徒花と呼ばれる花たちも

きっと

なんらかも役割があるはずです

すべての花が必要な花

大切な花なのです

(山下景子「美しい日本語」より)

 

 

 

 

 

 


箒星(ほうきぼし)

2007年12月14日 | Weblog

 

箒星(ほうきぼし)

 

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毎年流星群を見ようと

 

夕食を早くして

 

夜の片付けも済ませて

 

夜空を眺める準備は完璧

 

なのに・・なのに

 

雨だったり

 

うっかり眠ってしまったり

 

せっかく見られても一人だったり

 

きみと一緒に見たい

 

そんな願いは

 

今日は叶うかも

 

暖かくして見ようね

 

~~~

 

***

 

天のお掃除

箒星は彗星のことです

彗星の「彗」という字も 手で草ぼうきをとって

掃いている様子を表わす漢字だそうです

箒(ほうき)は

もともと「ははく」

鳥の羽を使っていたので

「羽掃く(ははく)」といったのだそうです

「箒星」という呼び方も残っているので

この箒星も

 掃除用具のほうきに似ているからというより

「ははき星」が変化したものではないでしょうか

天が穢れを掃き清めていると

考えられていたようです

昔は どちらかといえば

不吉なものと考えられ

妖星とよばれたり

出現すると世が乱れるとさえ言われたそうです

でも 星を見ていると

心が洗われるような気がしませんか

本当はわたしたちの

心を掃き清めようとしているのかもしれません

(山下景子著「美人の日本語」より)

 

 

 

 

 


行く秋

2007年12月13日 | Weblog

 

行く秋

 

***

 

今年は新しいコートで

 

一緒にお出かけしようね

 

そんな話も決まらないうちに

 

秋が早足で

 

去っていってしまった

 

ねぇ待ってよっ~ぅ

 

買ったばかりのコート

 

着る時がないじゃない

 

クローゼットで

 

出番待たされている

 

コートもあきらめ顔です

 

今晩イルミネーション見に行こう

 

お出かけは突然やってきた

 

きれいだね・・

 

うつくしい・・

 

わたしとどっちが・・

・・・

・・・

 

***

 

紅葉の美しい季節が

今年は早足に過ぎてゆく

風も冷たくなり

空気も乾いていきます

冬に入る前の自然の静けさ

木々は落葉をはじめ

野の花は色を失い

その凋落をとめるすべはありません

そんな思いを言葉にしたのが

「ゆく秋」です

春と秋は美しく心地よい季節なので

その季節が行ってしまう

少しでも引き止めておきたいという名残惜しさ

詠嘆がこもっています

秋を惜しむ言葉は他にも

「秋の別れ」「秋の名残」「秋の行方」など

「行く秋や秘仏は紅をさし給ふ」

(原田青児)

(道行めぐ著「美しい日本語」より)

秋が早足だったので書きそびれた

少し遅い秋の話題です

 

 

 

 

 


人間(ひとあい)

2007年12月12日 | Weblog

 

人間(ひとあい)

 

***

 

図書館で借りた本に

 

歯医者の診察券が挟まっていた

 

きっと

 

前に借りた人が

 

栞代わりに使っていたんだね

 

診察券の住所に

 

返送してあげた

 

そうやって始まった文通

 

もう5年にもなる

 

時々デートするんです

 

図書館で・・・

 

歳をとっても

 

お茶のみ友達だねって~

 

人の出会いは

 

とてもドラマチック

 

~~~

 

***

 

人と人間の違い

普通に読めば「にんげん」ですが

実は

この字はほかにも読み方があります

「じんかん」と読めば

仏教用語で人の住む世界 現世のこと

「ひとま」と読めば 人のいないとき

そして

「ひとあい」と読めば

人付き合いや人に対する愛想のことです

人愛とも書きます

どれも

人と人との関係を表わす言葉ですね

人は一人では生きてゆけない・・・

だから

人との関わり方が

人間そのものなのでしょう

何といっても人間関係が

一番自分を磨いてくれるもの

人間=人愛という

優しい響きの言葉と共に

人と接してゆくといいかもしれませんね

(山下景子著「美人の日本語より」

 

 

 

 


結構(けっこう)

2007年12月11日 | Weblog

 

結構

 

***

 

学生時代から

 

あこがれ続けてきた先輩の

 

バースデーパーティーに呼ばれた

 

最近

 

料理に凝っていると聞き

 

奮発して

 

パスタマシーンを

 

プレゼントした

 

1週間後・・彼から

 

バースデーパーティーの招待状が届いた

 

やった・・やった・・

 

けっこうけっこう~

 

作戦大成功

 

~~~

 

***

 

 

便利なものの宿命

結構は

字の通り 構えを結ぶ

つまり 組み立てて作り上げるということが

もともとの意味だそうです

建築や文章について使われていました

「悪い結構」や「へたな結構」もあったのですが

ゆきとどいた 見事な

結構も多かったのでしょう

結構といえば

「良い結構」をさすようになりました

そして どんどん

幅広い意味を持つようになりました

今では大変便利な言葉です

便利すぎて

どんどんあいまいになっていってしまった気もします

それが 余計

日本人には重宝な言葉として

好まれたのでしょう

この言葉がどう移ろいでいくかは

これからの日本人の気質が

どう変わってゆくかによるのかもしれませんね

(山下景子著「美しい日本語」より)