待ちきれぬほどに愛して散る銀杏
(まちきれぬほどにあいしてちるいちょう)
雨音のリズムがかはり銀杏散る
(あまおとのりずむがかはりいちょうちる)
年満月(としみつづき)
***
散歩の途中で
急に雨が降ってきた
大降りではないけれど
濡れてしまうくらいの雨ですから
走って帰ることに
走ることの苦手なきみは
なかなか走ってくれない
そうだ・・こういうときは
おだてるに限る
ねぇえ~~
将来の先生!
すると きみは
怪訝な顔をする
きみの口癖は
パパと同じ
お医者さんになると・・
頼もしい限り~~
十二月はね・・ぇ
師走といって
師(先生)も走るんだよ・・
走り回るほど忙しいから
そう言う様になったんだって・・
だから将来の先生も
いまから走る練習しなくっちゃぁあね
それ走れっ・・走れっ・・
やったぁあ・・きみは全速力
やっぱりきみは素敵な先生になれるぞっ
・・・・
***
満ちてゆくこの一年
みなさんご存知のように
十二月になると
師(お坊さん)も走り回るから「師走」
でもこれは
江戸時代にこじつけられた俗説のようです
「師走」という漢字は当て字で
万葉の時代から「十二月」とかいて
「しはす」と読ませていたそうです
その語源はさまざまな説があって
「し」の方は
仕事 為す事 年 四季など
「はす」の方は
ほとんど「果つる」と解釈しているようです
走るにしても 果つるにしても
あわただしいことには変わりありません
十二月の異称の中に
年満月(としみつづき)というのがあります
年が終わるのではなく
さまざまな思いであなたの一年が
満ちてゆくと思ってみてはいかがでしょう
一年の締めくくりの月を
満ち足りた思いで過ごせますように
山下景子著「美人の日本語」より