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集中思考のとらわれに気をつける

2009-06-08 | Weblog
●集中思考のとらわれに気をつける  

集中するということは、思考を一つの視点に限定して、それを深めていくことになる。それが正解であれば深みのある解決へたどりつける。自分でも驚くほどすばらしい答えに到達できる。だからこそ考える時は集中せよとなる。  

しかしである。
たとえば、表にある水がめ問題を解いてみよう。A、B、Cの水がめを使って、右端の水量を求めてみる。問題1から順にやってみてほしい。
表 水瓶問題 別添  

この間題のおもしろいところは、問題7、問題8である。上から順に解いてきた人は、ここでも「B-A-2C」という公式を使ってしまうはずである。ある実験によると、八三%もの人がこの公式に従って解いたという。ところが、問題7、問題8だけ与えて解いてもらうと、ほとんどの人がAとCだけを使ってただちに解いてしまう。  
問題6までを解く間に、思考の構えが一つの視点にとらわれてしまったために起こることである。  数学の問題を解くといったことだけでなく、悩みなども意外にこうした思考のとらわれに陥ることが多いので注意する必要がある。  

では、どうしてこんなことが起こるのだろうか。  
何かを考え出すと、人は常にある仮説、あるいは視点を頭のなかに作って進めていく。こうするとこうなるはずだ、という予測と言ってもいい。  
集中思考をすると、この仮説、視点予測が強力に働き出して、頭のなかの関連する知識が、その仮説、予測のもとに再構成される。これはメンタルモデルと呼ばれる。そして、外の世界が、その目なるモデルを確認する素材としてしか見えてこなくなる。かくして、思考のとらわれ(思い込み)に陥ることとなる。  

水がめ問題を解く時も、問題4、問題5あたりになると仮説が相当に強力になる。もはや別の仮説を考えることは不可能で、問題6は仮説を一層強く確認するためのものにすぎなくなる。  
しかし、思考のとらわれは悪いことばかりではない。とらわれることによって、スムーズに思考が展開し、深く考えられることもある。問題なのは、そのとらわれたメンタルモデルが誤っている場合であり、なおかつその誤りにみずから気づくことができない場合である。  

そこで、その思考のとらわれから解放される方法、または心がまえのいくつかを考えてみよう。  

まず、出発点でできるだけたくさんの視点、選択肢を列挙しておく。ムダだ、くだらない、関係ない、などとは絶対に思わないで、思考をあれこれと巡らして、ともかく頭に浮かんでくるものを書き出してみる。そのためには、最初からこれだ、という集中思考ではなく、拡散思考をした方がよい。具体的な方法としては、次の三つがあげられる。  
(1)箇条書きする。  
(2)一つの思いつきから連想を線でつないで、イラストに示す    ような連想マップを書く。  
(3)関係のあるものを近くに配列してみる。

ついで、もっとも見込みのありそうなものに思考を集中してみる。この場合、最初に直観的に頭に浮かんできたものが、確率的には当たる可能性が高いようである。  
そして、その方向でともかくやってみる。うまくいけば、とりあえず「よし」として、放っておく。ここでも、何をもって「よし」とするかは、直観にゆだねるしかないが、「ああ、すっきりした」「なるほどそうか」といった感じを持てた時は大丈夫のようである。  

時に、どうしても思考が進まなくなり、暗礁に乗り上げてしまったら、これまたそこまででやめにして別の方向から攻めてみる。これを二度、三度と繰り返す。  
そしてまた、解けたものについて、もう一度それでよいかの確認をする。と同時に、もう一つ別の視点から問題をとらえ直してみる。ダブル・チェックをするのである。  
こんなことに心がければ、集中思考の落とし穴に陥ることもないはずである。