ひとみの目!

元神戸市会議員・社会保険労務士・行政書士
人見誠のブログです。

熊本・北九州 その2

2012-02-07 14:46:42 | 日記
北九州市では、エコタウン事業の取り組みについて、環境学習拠点である北九州市エコタウンセンターで話を聞きました。

 北九州市は、1901年に国内初の本格的近代溶鉱炉を持つ官営八幡製鐵所されるなど、四大工業のひとつとして日本の高度成長を支えてきましたが、1960年代に産業公害が深刻化したため、さまざまな協定を締結したり下水道を整備するなど市民・行政・企業が一体となり取り組んできました。
 北九州市は、そういった長年にわたる「モノづくりのまち」としての産業基盤や技術力、公害克服の過程で培われた人材・技術・ノウハウ等を活かし、資源循環型社会の構築を図るため「環境保全政策」と「産業振興政策」の統合した独自の地域政策として、1997年(平成9年)から若松区響灘地区を中心に「北九州エコタウン事業」を進めています。
 エコには「エコロジー」と「エコノミー」の両方の意味があり、環境だけでなく産業蓄積を進めており、現在29の事業が行われており、約600億円の投資規模(民間:国:市=7:2:1)で、約1,340人の雇用が生まれています。
 響灘地区は、約2,000haの埋立地で、「実証研究エリア」と「総合環境コンビナート・響リサイクル団地」に分かれています。
 「実証研究エリア」では、企業・行政・大学の連携により、最先端の廃棄物処理技術やリサイクル技術を実証的に研究する機関を集積し、環境関連技術開発拠点を目指しています。
 「総合環境コンビナート」では、環境産業の事業化を展開するエリアで、大手企業が進出しており、ペットボトルリサイクル事業や家電リサイクル事業などが行われています。
 土地は、進出企業が所有しているケースと、工場は所有し倉庫は賃借しているケースがあるとのこと。
 「響リサイクル団地」は、市が土地を整備し、事業者に長期間賃貸することで、中小企業の環境分野への進出を支援するエリアで、自動車リサイクル事業や食用油リサイクル事業などが行われています。
 また、各事業の相互連携によりリサイクル率向上や運搬経費の削減に取り組んでおり、さらには、複合中核施設(ガス化溶融炉)で残渣処理による溶融物の再資源化を図るとともに発生する熱を利用して発電を行い、その電力をエコタウン企業に供給するという、ゼロ・エミッション(あらゆる廃棄物を他の産業分野の原料として活用し、最終的に廃棄物をゼロにすること)を目指す取り組みが行われています。
平成14年からはその他の地区において、風力発電事業や小型電子機器回収実証実験(IC基盤からのレアメタル回収)などが行われています。

 次に、西日本ペットボトルリサイクル株式会社のペットボトルリサイクル工場を見学しました。
 ペットボトルを粉砕してペレット化し、フレークやペレットを作っており、24時間操業で年間約2万トン、約45,000万本のペットボトルのリサイクルが可能とのこと。
 その後、エコノベイト響の医療廃棄物のリサイクル工場を見学しました。
 エコノベイト響は、麻生グループのひとつで、グループ内の医療機関からの医療廃棄物から固形燃料などをつくりセメント工場などで利用するという、グループ内循環を中心に行っており、1日25tの処理が可能とのこと。
 ETDという高周波滅菌処理システムを導入することにより医療廃棄物のリサイクルが可能となったが、燃やしたほうが安いといったネックがあり、特にプラスチックから再生容器を作る事業はあまり進んでいないとのことでした。

 エコタウン事業は平成9年に4地域でスタートし、現在26地域で行われています。
 工業都市に多く、取り組み内容はそれぞれの地域で異なっており、地域産業の廃棄物を活かす取り組みが行われています。
 北九州市も例外ではなく、地域の工場・事業所などから排出される産業廃棄物等を地域の中でリサイクルするシステムが構築されています。
その取り組みの成果もあって昨年「環境未来都市」に選定されています。
 その点、例えば神戸市の環境未来都市構想の内容を見ても、地域産業の廃棄物を活かす取り組みは少ないように思います。
 神戸市としてもクリーンエネルギーの推進等だけでなく、基幹産業や医療、観光等からの廃棄物のリサイクル事業を進めていくといった取り組みを進めていくことが必要ではないでしょうか。

次に、北九州環境未来税についてお伺いしました。
 北九州市では、「環境未来都市」を建設するために必要な環境施策を推進するための安定財源の確保を目的として、平成15年10月1日より法定外目的税である「環境未来税」を課税しています。
 産業廃棄物の最終処分業者及び自家処分業者に対し、市内の埋立処分場で処分する産業廃棄物の埋立量に応じ1,000円/㌧(平成15~18年度は暫定税率500円/㌧)を課税し、平成22年度で約11億円の税収があり、北九州エコタウン事業や地球温暖化対策推進助成事業(太陽光発電設備を設置する市民などに補助金を交付)などに活用されています。
 納税義務者を排出業者とすれば課税権の及ぶ範囲や課税技術上の問題が生じること、また中間処理を課税対象としないことは中間処理(リサイクル・減量化)推進のインセンティブとなることから、最終処分業者課税方式を採用しました。
 現在納税義務者(処分業者)は、5社で収納率はほぼ100%で効率がよいとのこと。
 先行事例として平成14年に三重県の産業廃棄物税が施行されたことがあり、地元業者や議会では時代の流れとの意見が趨勢で比較的スムーズに条例は成立したとのことで、条例の施行により埋立処分量は年々減少してきておりリサイクル効果や減量効果が出てきているとのことでした。
 北九州市では処分料金が他都市に比べて比較優位にあったり、近隣に埋立処分地が少ないということもあり、課税できた側面はあると思われます。
 しかし、神戸市としても環境施策を推進するための財源確保のひとつの方法として、市民債の発行などだけでなく、北九州市の事例を参考に法定外目的税も検討材料とすべきではないでしょうか。


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