ひとみの目!

元神戸市会議員・社会保険労務士・行政書士
人見誠のブログです。

省庁ヒアリング研修会 その6

2012-07-29 22:18:35 | 日記
最後に、総務省の方から「公立病院の現状について」お話をお伺いしました。

全国の病院に占める自治体(公立)病院の割合は、病院数で3.4%、病床数で6.1%(平成23年12月末)にすぎないが、へき地医療拠点病院・救急救命センター・地域周産期母子医療センターなどになっている割合は高く、拠点病院などとしての役割が大きい。

公立病院の経営状況を見てみると、平成18年度には78.9%の事業所が経常損失を生じていたが、平成22年度には54.6%の事業所が経常利益を生んでおり、改善してきている。
とくに、300床以上の大病院で経営状況が改善してきている。
ただ、一般会計からの繰入金があって黒字になっており、決して楽な状況ではない。

総務省では、地域において必要な医療提供体制を確保するため、平成20年度内に公立病院改革プランを策定し、公立病院改革に積極的に取り組むよう要請した。

公立病院改革プランは、各自治体において
① 給与・定員管理の適正化や経費の節減合理化などによる「経営効率化」
② 基幹病院とサテライト病院・診療所間の機能分担を徹底し医療提供体制の環境整備を行う「再編・ネットワーク化」
③ 指定管理者制度や地方独立行政法人化など民間的経営手法を導入する「経営形態の見直し」
という3つの視点に立って改革プランを作成し、公立病院改革を推進することで地域医療を確保しようとするもの。
現在すべての団体において改革プランが策定されており、兵庫県内では、42の病院がプランを策定している。

「経営の効率化に係る計画」では、平成23年度に黒字化を見込む病院が15、黒字化を見込めない病院が27。
神戸市の中央市民病院・西市民病院ともに、黒字化を見込めない病院に入っている(ただし、平成21年度、平成22年度は黒字)。

「再編・ネットワーク化に係る計画」では、平成20年度までに策定した病院が16、平成21年度・22年度に策定した病院が15、平成23年度以降に策定予定の病院が11。
神戸市の中央市民病院・西市民病院ともに、平成20年度までに策定した病院に入っている。

また、「経営形態の見直しに係る計画」では、平成23年9月末時点で経営形態の見直しを行っていない病院が19、すでに見直しを行っている病院が23。
神戸市の中央市民病院・西市民病院はともに地方独立行政法人に移行しているため、「すでに見直しを行っている病院」に入っており、今後見直し実施の予定はない。

といったお話がありました。

小泉政権以降、医療の崩壊や公立病院の経営難が言われていましたが、近年の診療報酬の見直しなどにより、公立病院の経営状況も少しずつ改善してきているのかなと感じました。
神戸市の2病院の状況も含め、今後の状況の推移を注視していきたいと思います。

*参考:公立病院改革プランの実施状況等(平成23年9月30日現在)http://www.soumu.go.jp/main_content/000147135.pdf

省庁ヒアリング研修会 その5

2012-07-05 17:20:50 | 日記
つぎに、厚生労働省の方から「我が国の医療保険制度」についてのお話をお伺いしました。

国民医療費は年々増加し、2010年には37.4兆円に達する見込みで、そのうち75歳以上の高齢者の医療費は12.7兆円で、全体の約3割を占めている。

医療費は、急速な高齢化や医療の高度化等によって、今後GDPの伸びを大きく上回って増大する見込みで、それに伴い保険料・公費・自己負担の規模も、GDPの伸びを大きく上回って増大する見込み。

現在の各保険者(市町村国保、協会けんぽ、組合健保、共済組合など)の比較をしてみると、市町村国保は65~74歳の占める割合、加入者一人当たりの医療費が高いが、加入者一人当たりの平均所得が低く、所得に占める保険料の割合は相対的に高くなっている。
逆に組合健保は、65~74歳の占める割合、加入者一人当たりの医療費は低いが、加入者一人当たりの平均所得が高く、所得に占める保険料の割合は相対的に低くなっている。

市町村国保を詳細に見てみると、世帯主の職業は、昭和40年(1965年)には、自営業・農林水産業が約6割だったが、近年は15%程度となっている。
年金生活者等の無職者の割合が1割未満からに35%程度に大幅に増加するとともに、被用者(パートやアルバイトなど)が約2割から約3割に増加している。
また、世帯の所得階層は、「所得なし」の世帯が年々増加し約3割で、「所得100万円未満」の世帯(約2割)を含めた低所得者世帯は約5割となっている。
さらには、市町村国保の約4分の1が、被保険者数3,000人未満の小規模保険者となっており、市町村の国保の中で格差が生じてきている。

年齢階層別の1人当たりの医療費を見ると、高齢になるほど一人当たり医療費は増大する傾向にあり、高齢者の医療費をどのように国民全体で公平に負担し合うのかが課題となっている。
そこで、保険者の枠組みを超えた世代間の支え合いを行っている。
つまり、65~74歳の医療給付費の費用負担については、協会けんぽ・組合健保・共済組合など被用者保険と国保の間で財政調整を行い、75歳以上の医療給付費の費用については現役世代が約4割を負担するという支援している。

今後国保は、都道府県単位での財政運営の推進や、低所得者保険料軽減の拡充や保険者(市町村)への財政支援の拡充などによる財政基盤の強化を進めていきたい。

といったお話がありました。

神戸市の国保においても状況は大変厳しく、例えば保険料の減額または減免を受けている方は約6割になっています。
健康保険の一元化について質問しましたが、現在は一元化は検討しておらず、保険者間や世代間での調整を行っていく方針との答えでした。
いずれにしても、年金だけでなく医療保険も財源を含めた制度の抜本的な見直しをする時期に来ていると思います。

省庁ヒアリング研修会 その4

2012-07-04 23:05:50 | 日記
翌日も省庁ヒアリング研修会で、まず厚生労働省の方から「我が国の医療提供体制」についてのお話をお伺いしました。

医療提供体制の現状を見てみると、まず病院数は平成2年をピークに1割減少しており、また有床診療所が大幅に減少している一方、無床診療所が増加している。
病床数は、平成4年をピークに減少している。

国際比較をした場合、日本は人口千人当たりの病床数は多いが、人口千人当たりの臨床医師数は少ない。
また、平均在院日数が多い、という傾向にある(もっとも、病院の定義が各国で違うので単純比較はできない)。

医師不足が問題となっているが、医師数は毎年約4,000人程度増加している。
診療科別にみても多くの診療科で医師は増加傾向にあり、減少傾向にあった産婦人科や外科においても、増加傾向に転じている。

医師不足問題の背景には、
①大学医学部(いわゆる医局)の医師派遣機能の低下
②病院勤務医の過重労働
③女性医師の増加で、出産・育児による離職の増加
④訴訟など医療に関する紛争の増加に対する懸念
があると思われる。

そこで、
①都道府県が責任を持って医師の地域偏在の解消などに取り組む「地域医療支援センター」を設置し、運営を支援
②産婦人科、小児科等の厳しい勤務環境にある診療科で医師が不足していることから、そのような医療機関へ財政支援
③医師でなくても対応可能な業務を医師が行なっていることが病院勤務医の厳しい勤務環境の一因になっていることから、医師と他の医療従事者等との役割分担を推進
④女性医師の増加に対応し、院内保育や子育て相談の充実、復職支援のための都道府県の受付・窓口の設置等の支援
⑤産科医療補償制度など医療リスクに対する支援体制の整備
などをおこなっていく。

将来像として、患者ニーズに応じた病院・病床機能の役割分担や、医療機関間、医療と介護の間の連携強化を通じて、より効果的・効率的な医療・介護サービス提供体制を構築していきたい。
そのために、在宅医療の充実や、地域包括ケアシステムの構築をおこなっていきたい。

また、電子レセプトはかなり整備されてきているが、電子カルテや処方箋はまだまだなので今後進めていきたい。
それにより、医療連携などが進むことに期待したい。

といったお話がありました。

民主党政権になってから診療報酬のプラス改定等が実現しているので、それらにより病院勤務医の勤務環境の改善などが進んでいくことを期待したいと思います。
また、介護で今年4月から24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスが創設されましたが、神戸市も含めニーズがあるかどうかわからないなどで様子見の傾向のところが多いのではないでしょうか。
新しいサービスですので手探り状態で当面やむをえない部分もあるかもしれませんが、国が地域にニーズのないサービスを押し付けていくことだけはないようにしていただきたいと思います。

省庁ヒアリング研修会 その3

2012-07-02 17:20:17 | 日記
つぎに、内閣府の方から「地域主権改革」についてお話をお伺いしました。

地域主権改革の内容についてはこれまでの記事と重複する部分は省略します。

「義務付け・枠付けの見直し」についてのお話がありました。

これまで国が一律に決定し自治体に義務付けてきた基準・施策などを、地方が条例等で自ら決定し改めることができるよう、これまで2回の見直しが行われ、引き続き見直しを行うことになっている。

これまでの見直しで地方独自の事例も出てきている。

例えば、
公営住宅の入居基準・・・収入基準や入居者の範囲を拡大するなど
道路標識・・・文字の大きさを拡大、標識板や文字の寸法を縮小するなど
保育所の設備、運営・・・「乳児室」や「ほふく室」の1人当たりの面積基準を引上げたり待機児童対策のため引下げる、国の基準を上回る保育士を配置するなど

これらの事例などを参考に各自治体でも地域の実情にあわせて見直しをおこなっていただきたい。

また、二重行政について、境界をファジーにする方がニーズに応えられる側面もあるのではないか。
ただし、重複する部分は出てくるので、議会での議論などを通じ個別に解決を図ってはどうか。
新しい公共など地域団体等にどう関与してもらうかは、その地域の判断だ、
とのことでした。

神戸市ではまだあまり義務付け・枠付けの基準の見直しについての議論は聞きませんので、神戸市でも取り組んでいければと思いますし、国でもさらなる基準の見直しとうまくいかなかった事例も含めたいろいろな事例の公表などをおこなっていただければと思います。

参考:義務付け・枠付けの見直しに関する地方独自の基準事例(内閣府ホームページから)
http://www.cao.go.jp/chiiki-shuken/doc/gimuwaku-jirei.pdf

省庁ヒアリング研修会 その2

2012-07-01 23:55:33 | 日記
つぎに総務省の方から地方財政の現況についてのお話をお伺いしました。

租税総額77.4兆円のうち、国の租税収入は42.3兆円、地方の租税収入は35.1兆円で、比率は国:地方=55:45。

歳出総額160.1兆円のうち、国の歳出は66.2兆円、地方の歳出は93.9兆円で、比率は国:地方=41:59。

租税収入と歳出の比率の違いは、国から地方へ地方交付金などで財産移動を行なっているから。

地方交付税は、地方公共団体の財源の不均衡を調整し、財源を保障するためのもので、地方の固有財源。
所得税・酒税の32%、法人税の34%、消費税の29.5%、たばこ税の25%が充てられ、交付税総額の94%が普通交付税、6%が特別交付税。

地方によって租税収入には偏りがあり、都道府県税の人口一人当たり税額をみると東京は18.0万円に対し沖縄県は7.2万円と2.5倍の格差が生じている(平成22年度)。

しかし、各都道府県の歳入の「地方税+地方交付税+地方譲与税」の金額の割合は、どの都道府県もほぼ同じような割合になり、地方交付税により財源保障・財源調整が図られているといえる。

地方も財源不足額が増加してきているが、それは景気の低迷に加え、社会保障関係費の増加や減税、景気対策など国の施策に地方が協力してきたことによる公債費の増加等が原因で、平成24年度も引き続き大幅な財源不足が生じる見込み。
地方財政は、平成24年度末見込で約200兆円もの巨額の借入金残高を抱えることになる(企業会計分をあわせれば227兆円)。

そこで、上記の所得税や法人税などからの地方交付税に充てられる率の引き上げなどを主張しているが、国も厳しい財政状況の中で実現していない。

しかし、平成24年度予算では、地方交付税は前年度より0.1兆円増の17.5兆円を確保し、別枠で東日本大震災の復旧・復興のための震災復興特別交付金0.7兆円、緊急防災・減災事業0.6兆円などを確保した、といったお話でした。

地方も独自財源の確保など工夫をしなければいけませんが、国全体の税制の中で安定した地方財源もいかに確保するか、についても検討されなければいけないと思います。
例えば、消費税増税の際には地方への配分の割合も増やされることになっています。
それだけで地方財源が十分に確保されるわけではありませんが、消費税増税は地方財政に関する問題でもあるといえるのではないでしょうか。

参考;地方財政状況調査関係資料(総務省ホームページより)
http://www.soumu.go.jp/iken/jokyo_chousa_shiryo.html