三流読書人

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ドングリ小屋住人 

劣情を煽る

2006年08月23日 06時12分04秒 | 読書
毎日新聞 2006年8月21日「発信箱」

《 「劣情をあおるな」 山田孝男
 フランスは第一次大戦でドイツの侵攻をよく防いだが、多大な犠牲を払ったために戦後は反戦思想が行き渡り、平和と繁栄に浸りきっていた。野望を秘めて軍拡に努めたヒトラーの意図を見抜けず、パリはあっけなくドイツ軍に占領されてしまう。昨年日本語訳の復刻版が出た「フランス敗れたり」(1940年)は、渦中を生きた作家、アンドレ・モーロワの回想記である。
 ひるがえって今日。防衛白書によれば、中国の国防費は18年連続で2ケタの伸び率を示した。米国防総省年次報告によれば、中国の意図は短期的には台湾の独立阻止だが、長期的には東アジアで活動する他国軍にとって確実な脅威となり得る。北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器が日本にとって重大な脅威だ。政府が的確な情報を示して国民を説得する限り、自衛隊が米軍の協力を得てよく対処し得る国防政策を支持したいと思う。
 同時に、中国なり北朝鮮なりの独裁政権の意図や軍事的能力を見極めて対抗することと、中国人、朝鮮人を敵視することは区別しなければならないと思う。「フランス敗れたり」の冒頭でチャーチル(後の英首相)はモーロワに「女の愛だの男の野心だのではなく、ドイツに追い抜かれたフランスの空軍力について書きたまえ」と忠告するが、ドイツ人をののしったりはしない。
 最近は平和ぼけ批判の名の下に、身もふたもない民族的偏見をかき立てる出版物が目に余る。相手国が自国民の劣情をあおる反日宣伝に走ろうとも、日本の市民社会は真の国防と悪乗りを厳しくより分ける成熟を示すべきだろう。(編集局) 》
 

「平和ぼけ批判の名の下に、身もふたもない民族的偏見をかき立てる出版物が目に余る。相手国が自国民の劣情をあおる反日宣伝に走ろうとも、日本の市民社会は真の国防と悪乗りを厳しくより分ける成熟を示すべきだろう。」
 全く同感である。
 しかし、『毎日新聞』記者氏なかなか書きますね。頑張って下さい。
 7月30日付のこのブログも似た内容です。ひまのある方はご一読下さい。




 劣情をあおる出版物の一部。2冊「聞けわだつみの声」はさまってますがこれは別。必読です。