迷歩録 投影

　　肌寒く　　開いた椿　　縮みけり　　静まり返る　　大隅の里


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひのひら　　ろくべえ


　　　　未明に降った雨は止んだが、雲が深くたちこめ、陽射しはなく、

　　　肌寒い一日となりそうな南九州である。庭の椿が咲き始めたが、

　　　今日は蕾に戻り、開くタイミングを図っているようにも見える。

　　　　植物というものは、人間よりはるかな繊細な感覚を持ち合わして

　　　いるのであろう。気温や湿度、気圧、といった様々な環境の変化に

　　　敏感に反応する。

　　　　道端に咲いていた菜の花が、今日は少し、萎れて見える。これは

　　　見る側の私の心理的問題なのかもしれないが、そうでもないのか知

　　　れない、いずれかはわからないが、見る側の心理が投影されるのも、

　　　これまた事実であろう。

　　　　このように人間というものは、己の心理をあるものに投影して、

　　　自分の姿を見てるということになる。この投影だけでも冷静に見れ

　　　ることは、人間関係の中でもとても大切な思考となるのではないだ

　　　ろうか。