へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

あしたは入学式

2012-04-05 23:49:04 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

今日から、学校が始まった。
といっても、入学式前なのでぼくらはふつうに部活にきていた。
一応、クラスはおとうさんの書類をみてしまい、わかっちゃった。
う~ん、担任が久保田先生って、どういうことだ?
まあ、いいけどさ。
え?事務職のおとうさんの書類をどうやってみたかって?
おとうさん、財布を忘れて、ぼくにお金をせびりにきたんだな。
「大学行けばさあ、キャッシュコーナーあんじゃん」
と、おとうさんの真っ赤なままチャリを乗り回しながら、文句を言えば、
「やかましい、財布ごと忘れたんだ、キャッシュカードなんか、持ってねえ」
と、情けない答えが返ってきた。
「高校入ったんだからさ、お小遣い値上げ要求しちゃおうかな」
「ちゃんと休まずに行けたら、値上げしてやる」
強気な言葉だなあ、昔のおとうさん、どこいった。
そういえば、中1の時の事件?以来、あんまりぐずぐず言わなくなったな。
しつこくいろんなこと言わなくなったしなあ、うっとおしくなくなってよかったけど。
「うるせえな、くそおやじ、ちゃんと行くよ」
くるくる事務局前を回っていると、けんちゃん号が放置してある。
相変わらずの骨董品だけど、でも目立つなあ。
そこに、青いチャリに乗った阿部さんが猛烈な勢いでこっちに向かってきた。
「ちょっと、こんど~さん、農協のけんちゃん先生の友達の木村さん」
「木村さん?あの人がどうしたって?」
農協の木村さんっていうのは、けんちゃん先生とのぶちゃん先生の中学時代からの友達で、婿養子に入る前は与田さんとかいっていた人だ。
「米がまだ届かないよ。早く届けるように文句いって」
米だけは農協からしっかり届く、うちの学食。藤川家の米は、藤川家が営業している定食屋に回すので、学校までは手が回らない。
え?何で定食屋だって?考えても見てよ、おしゃれにメシを食らう一族か?
「おかしいなあ、昨日届くはずだったのに」
二人のやりとりを耳にしながら、阿部さんのチャリに目をやれば、青いコアラのシールがはってある。ぼくの視線に気づいた阿部さんは、
「ああ、これドアライダー、名古屋の実家に買ってもらった」
と、自慢げだ。
はいはいはい。。。
学校の桜はようやく開花を始めた。
あしたから、ぼくは高校生なんだなあ、とふとおとうさんを振り返ったら、なんとなく老けたような気がしたのは気のせいかな。
まだ、36だったよなあ。。。ほかの人からみれば十分に若いんだろうけどね。