へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

孟宗学園の1日その2

2006-09-26 22:33:34 | へちま細太郎
こんにちは、へちま細太郎です。

藤川先生と、タコ壺保健室の前で待ち合わせをして、学食にお昼ごはんを食べにいきました。藤川先生が4時間目に授業がなかったおかげで、12時になる前に学食に入ることができました。
学食は大学生がけっこういましたが、たびたび遊びにくるおかげで、ぼくは知らなくてもみんながぼくを知っていてあいさつをしてくれます。
「ぼくって、そんなに有名人?」
じょうだんでいうと、
「ある意味有名人だぞ、なんといっても、こう~いっちゃんが有名人だからな」
藤川先生は、焼き魚定食のさんまをつつきながらいいました。
「え~?なんで~?」
ぼくは少しょう不まんでした。
「おとうさんが有名人だから、ぼくはそれで有名人なのかあ」
「仕方がないだろ。学園内では、チャリに乗った色の白い事務員といえば知らない人間はいないからな」
「そうか」
そんなことで有名なのか…、ぼくは、少しおかしくなりました。
「ぼく、有名人になりたいなあ」
「あ?」
いっしょうけんめいにごはんを食べていた藤川先生は、顔をあげました。
「何でだ?」
「う~ん、だって、いろんな人に名前とか顔とか知ってもらってあいさつされるのは、すごくうれしいことだから」
「そうか。だったら、一生懸命生きることだな」
「そんなんでいいの?」
ぼくはおどろきました。
「俺のうちはな、まずは飯をちゃんと食えと教わるんだ」
「どうして?」
そういえば、藤川先生のうちは、お殿様だったんだよなあ。
「戦国時代に、生き残るために、よく食ったんだよ。腹が減っては戦ができないってね。飯食えば、頭に栄養がまわっていろんなことを考えられるようになるんだぞ。だから、細太郎、たくさん、飯を食え。そしたら、有名人になれる」
藤川先生は、焼き魚定食をおかわりしました。
「藤川先生、さんまサービスするからね」
「おばちゃん、さんきゅー
藤川先生、元気だねえ。もしかしたら、おとうさんなんかより、藤川先生の方が、よっぽど有名人だと思うなあ。
その時、ジャージの集団が入ってきました。
「お、ぼっちゃん、元気だね、もしかして、子ども~?」
と、その中の一人がちゃかして、肩を叩いてきました。
「あ~?」
藤川先生の視線がキッとなりました。
「おれはなあ、飯食ってるときに邪魔されるのが嫌いだって、てめえは何度言ったらわかるんだ、この野郎」
「あ
藤川先生が、その学生をケリとばしちゃいました。
「あ~あ」
学生はひっくり返っちゃいましたが、
「すいません」
と、すなおにあやまってきました。
「わかれば、いい」
こういう場合、逆ギレするんだろうけど…というか藤川先生の方がわるいよなあ…でも、みんな藤川先生にはさからったりしません。どうしてだろう。すごくふしぎだったけど、
「あいつ、生徒に絶大な信頼があるからなんだよ」
と、しょうがやき定食を持ってきたのは、久保田先生です。この先生は数学の先生で、似たような性格みたいです。
「それに、あの2人、年中行事でさ、あいさつみたいなもんなんだよな」
は?ケリ入れるのが、あいさつ
なぞだけど、でも、藤川先生、いい人だったんだね。そういう意味では、まちがいなく有名人だと思いました。
そこへ、おとうさんが顔を出しました。
「細太郎~いたのかあ
げっ、いやだあ
ぼくは、こそこそとかくれるようにしましたが、おとうさんがとなりにすわってしまいました。
「なんで、藤川と飯食うんだよ~
みんないっせいにぼくたちをみました。くすくすわらっている人もいました。

ぼく、やだよ~


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