へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

燕vs虎

2012-08-19 23:36:16 | へちま細太郎

こんばんは、父のピカイチです。

長いお盆休みの最終日、片山教授とタコ壷に誘われて神宮まで野球を見に行った。
半ば、強引だ。
タコ壷とバカ殿の関係は、あれからしりすぼみになるかと思いきや、何だかあちこちデートし歩いているらしい。
もっとも、本人たちはデートではないと、むきになって反論している。
ま、ど~でもいいが…。
俺と教授と広之、ひまな浜中は1塁側、タコ壷と桜井、慶子は怒号渦巻く3塁側へと別れた。
「傘、お土産ね」
おふくろの注文通り傘を家族分買った。
「こんな小さくて700円もすんのか」
痛い出費だ。
教授は、6サマこと宮本が出場できないでいることに、面白くない表情だ。
「やっぱり、宮本あってこそのスワローズだ」
と、ぶつぶつ言っていたが、タフマン先着1万名さまに大盤振る舞いというイベントに、機嫌もコロっと変わってしまった。
「滋養強壮にはタフマンが一番だ」
タコ壷保健室のドドメ色の蘭は、持ち主と違ってリポビタンDが好物だが。
試合は、3塁側から聞こえてくる「くたばれ○売、くたばれ読○」という意味不明な叫び声に、
「相手が違うだろうが」
と、広之は呆れていたが、
「11球団共通の敵なんだ」
という教授のこれまた理由になっていない理由をかまされて、反論するのをやめてしまった。
途中、タイガースのノーアウト満塁のチャンスを潰してヤンヤヤンヤの大喝采だ。
「兄弟で3アウトをとるのは、世界でもあるまい」
教授はビールをカブのみして、喜びの雄叫びだ。
対して3塁側からは、悲鳴と落胆とヤジがあがっていた。
「あの3人も怒鳴っていそうだな」
浜中も何杯めかのビールを飲み、苦笑してヤジを聞いていた。
否定できないから、黙って頷く。
試合は、8回裏に追いついたものの、9回表に6点も取られて、結局負け。
やれやれだ。
しかし、入口で待てど暮らせど3人の女どもが戻ってこない。
勝利の2次会も終わり、トラッキーも去ったはずなのに、おかしい。
「トイレか?」
「にしても、遅い…」
「ゴミ拾いしてたのよっ
という、慶子の鬼声に俺達はびくびくっ。
「ゴミ拾い?」
広之が怪訝な表情を慶子に向けると、
「あんた、教師のくせに周りのゴミをうっちゃらかしてきたのっ?」
と、応援バットで殴り返された。
「ちゃんとゴミ置場に置いてきた」
「それだけじゃ、ダメなのっ
慶子たち3人の後ろには、関ケ原と鳥羽・伏見の我が家の先祖たちが、タイガースのハッピを着て、ジェット風船よろしく漂っていた。
まだ、やってたのかよ~。
なに?見えてるじゃねえかだと?
気のせいだ。
阪神の勝利と同じように、気のせいだ。
と、目をこすったら、関ケ原に殴られた。
ちきしょ~っ
これから、美都まで長い時間電車に乗って帰るのかよっ
ほんと、こなきゃよかったぜ。



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