へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

細太郎の決心

2006-12-05 17:29:49 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

ぼくはいきなり知らないおばさんから、
「つばさくん」
と声をかけられ、腕をつかまえられてずるずると引きずられていきました。
おばさんは、ぼくをつかまえたまま携帯で、
「つばさ君を見つけました。ええ、無事です。上野の科学博物館にいました」
と話しています。
「何だよ、ぼくはつばさなんかじゃないぞ、翔って名前だっ
と、おばさんの手をふりほどこうとしましたが、すごい力でつかんでいるのでできません。
「何を言っているんです、いいから来なさい」
おばさんはぼくをかかえあげると、近くの駐車場に停まっている車にぼくを押し込めると、
「だめよ、出ちゃ」
ときつく言葉をかけてにらみました。
こわくなんかないけど、走っている車から飛び降りるなんて、無謀なことするもんか。
ぼくは、明日、無事で帰る、と書置きしてきた以上、ぼくはちゃんと家に帰らなくちゃいけません。
今頃、どんなにかおとうさんやおばあちゃん、おじいちゃんが心配していることでしょう。
ぼくは、今になってとんでもないことをしたと思い始めました。思い始めた以上、無事で帰らなくちゃいけません。
このおばさん、ぼくを誘拐するのかもしれない。
でも、ぼくのうちは貧乏な公務員だぞ。あ、でも、よく藤川先生といるから間違えているのかな?ぼくが若様に見えるなんて、まんざらでもない。
それとも、ぼくのおかあさんのうちがお医者さまだってどっかで調べた人が、ぼくを誘拐したのかもしれない。
というか、ぼくのために、おかあさんの家の人が身代金を出してくれるのかな。出してくれないかもしれない。出してくれるのなら、ぼくに会いに来てくれたはずだものね。
車は高速道路を走って、都心からどんどん離れていきます。
ぼくは、ここからどうやって逃げようか、それを一生けんめい考えていました。


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