荒波です。
あの討ち入り騒動のあと、24日は藤川家の法事だった。
その日、朝から藤川家の別邸に派遣されて、法事の後の食事会の準備を阿部さんの指示のもとセッティングに忙しかった。
「まったく、おぼっちゃんも早く結婚していただければ、この仕事は若奥様のお仕事になるんですけどね」
阿部さんはぶうぶう文句をいっている。
「その前に隠し子とかいたりして」
白崎が笑えば、マジになった阿部さんは、
「冗談でも言わないでくださいよ~。考えるだけで数えちゃうから」
と、怒るどころか本気で心配している。
「あの藤川先生とやら、どれだけの女性とナニしてきたんだろう」
「さあ、数え上げたらきりありません。それと、ここのうちの男どもはみなそうですので、誰が誰の子供やらになりますよ」
「は?」
「ほれ、須庭寺の先々代は確か、ここの殿様の隠し子というか、そういうおうちの方ですよ」
「え~!」
「何人なんだか…」
俺たちは顔を見合わせて、やっぱりこういうおうちの人たちの感覚って、俺たち庶民とは違うということを改めて認識して、ため息をつきあったのであった。
「そうそう、わたくしの旧姓は高畠と申しまして、ほら前田家のお松さんと同じ苗字なんですのよ。まったくの他人なんですけど」
はいはい。
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