へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

農協の軽トラ

2006-06-19 20:46:42 | ひるまのもめごと
たまには、生徒や先生じゃない、普通の「女性」と話しがしたい。
女生徒にいかがわしい行為をする教師が、理解できないね。その点は、藤川と意見が一致。でも、俺の下半身は品行方正

俺と白いやつは、春休み(事件は春休みの出来事)なのを幸いに、チャリを旧姓依田…婿養子の農協勤務の木村の軽トラに乗せて、衣笠米穀店に向かった。
荷台では、チャリを押さえるために乗せられた、白いやつがしかめつらをしてぶつぶつ文句を言っていた。
そりゃそうだ。通行人がくすくす笑っているからだ。
「けどよ、衣笠米穀店の奥さんから中島教授に送られた鉢を割ったぐれえでよ、いなくなっちまうことあんのけ?やぁっぱよ、なまはげ娘がイヤで逃げ出したってのが真実味があって、ここいらじゃ、みんな納得すべ?」
「まあ、そうだけどよ」
何でこいつと話すとナマリが出ちまうんだよ。
「他にのぶちゃんに失踪する理由って、あんのけ?ねがっぺ?バスケをよ、日本一にしたっぺ?生徒にはひでえあだ名つけられてっけどよ、ないよりマシだっぺ?」
「そーいや、笑い話でよ、のぶちゃんを“唐変木”って呼んだら、生徒がさ、“先生、唐変木ってどんな木ですか?”って聞いてくんだよ、笑っちまうべ?」
他人が聞いたらどんな会話だ。でも、ここいらじゃ、ナマリは標準語。シャレた都会弁やギャル語は、軽蔑の対象だ…って、うそうそ。本人たちは、標準語をちゃんと話しているつもりなのである。未だに、がんぐろ茶髪元気。パラパラ大好き。
「まあなんだな、まじめなのぶちゃんのことだから、悪いと思って出家なんかしちゃったりしてな」
あながち、無くはないな、と俺は依田の言葉にうなづく。そーいや、チャリドロボーが変なことを言ってたな。
「カラスに肩を止まらせた男が、俺のチャリを盗んでこい、と言ったらしい。まさかと思うが、のぶちゃんかな」
俺は、頭のすみに残っていたこの妙な出来事を思い出した。忘れてたわけじゃない。それ以前に、あのドドメ色のパフィオなんとかと中島教授の衝撃が強すぎて、思い出せなかったんだ。
「カラス~?なあんだい、そりゃ」
旧姓依田は、呆れた声を出して俺を見たが、
「カラスって言った?」
と、何かを思い出しらしく聞き返してきた。 と、後ろからガラスを叩く音がした。
「どこ行くの、とっくに過ぎたよ」
白いやつが怒鳴っている。
「あ、ほんとだ」
旧姓依田は、慌ててブレーキをかけた。

できることなら、通り過ぎて欲しかった、と思うのは変じゃないよなっ。

とりあえず、つづく

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