へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

孝太郎君のぼやき

2011-03-29 22:28:18 | へちま細太郎

どうも、(仮)山下軍団の西村孝太郎です。ちなみに弟は、進次郎…うそだわえ~。

俺は、母親が藤川家の娘だから、坊ちゃんとはいとこにあたる。
でもって、法事のために帰省する予定が、地震のために横浜で足止めをくらっていた。
俺んちの西村家ももとはご華族様だったらしいが、戦後つぶれちまって藤川家に家屋敷を買い取ってもらって食いつないできたらしい。西村家のじいさんってやつが、鷹揚なやつでな、別にそれも何とも思わない、食わしてもらうのが当たり前って性分なので、おやじも大層苦労したらしい。おふくろもそんなおやじに同情して、というのが結婚の真相。二人は今でもラブラブだ。
まいったね、どうも。
そんなわけで、俺も性格は西村家に似て鷹揚でのんびりだ。でもって、人が好いから、断水が続く仲間のために、水を買いあさって車に詰め込み、美都に向けて渋滞する国道をひたすら走った。
マックが食いたい、というから1万円分も買いあさり、車の中はハンバーガーの匂いが充満し、家にたどり着いた時には、見るのも嫌になっていた。
でもって、車に水とマックを詰め込んだまま、(仮)山下軍団たちのいうままに須庭寺に向かった。
なんで、須庭寺にいるんだ?といやあな予感がした。
で、ついてみりゃあ、
「よ、久しぶりだな」
と、副住職のゾクおやじが待ち構えていた。
「なんだよ、何の用だよ」
「法事な、あの有様で延びた。で、おまえらに片づけてもらおうと思ってな」
「何?」
屋根瓦が落ちている本堂を除けば、(仮)亀梨&山下軍団と細太郎とその仲間たちが、頭に手ぬぐいをまき、てんでに仏像の破片を持って右往左往していた。
「げ、GANTZかよ」
そのまんま回れ右をして帰ろうとしたとたん、首根っこをつかまれ、
「てめえ、帰ろうなんて、ふざけたこと抜かしてっと、ぶちかまずぞ」
と、僧籍にあるまじきはドスのきいた声を出した。
「マックはうちのか~いい、娘のおやつにやるからな。感謝するぞ」
くそっ!!だましやがったな、このくそぼーず。
本堂を見れば、片づけに飽きた連中が破片を投げ合っていた。
罰あたり~!!


田吾作の銅像

2011-03-29 13:02:27 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

ぼくたちは地震の日、午後は総出でキャンパス内大清掃だったために外にいた。
すさまじい地鳴りと木々が揺れたり、校舎のがたがたいう音が聞こえてきて、かなりの大型の地震だということがわかった。
たかのりの担任の赤松は衝撃で腰を抜かし、一番悲鳴をあげてうるさかったのはやっぱりはるみだった。
さすがに野茂は落ち着いててきぱきと行動していて、中学の生徒会長だけはあるな、と感心した。
え?いつ決まったのかって?
そりゃ、空白の時期ですよ
でもって、実は大学の園芸学部の畑の入口には、あの田吾作の銅像が立ってたんだけど、根元からポッキリと折れてしまった。
藤川先生はここぞとばかりに銅像を穴に埋めてしまい、首から上だけが出ていただけだった。
「とんでもねえ子孫だ」
タコ壺保健室の匿名希望の東山先生が呆れている。
太陽に照らされていっそう不気味に輝いている小百合はふるふるふるえていて、
「お、余震」
といわれるなり、リポDをぶっかけられて満足の武者震いをしていた。
「ずいぶん、いい待遇だね」
と質問すると、
「地震の前から様子がおかしかったから、抱えて外に出た瞬間揺れた」
といつになくほめているではないか。
「かわいがってやるか、これからは」
匿名希望の東山先生は、それでも六甲おろしを小百合に聴かせながら葉っぱを丁寧に拭いていた。
田吾作の銅像とエライ違いだな。


藤川家の法事、延期になる

2011-03-29 01:00:47 | へちま細太郎

へろ~、藤川だよ、子猫ちゃんたち、みんな元気にしてたかな?

春の彼岸も過ぎたが、毎年春分の日に行われる藤川家の法事が延期された。
これは、地震の被害もあり、被災地に対して遠慮をしたため、ということになっている。
が、実は、菩提寺須庭寺も御多分にもれず地震の被害にあい、本堂の須弥壇と見てくれだけのダミーのご本尊やあまたの仏像が、ことごとく倒れ壊れてしまったからだ。
「蔵の中を点検したらな、文化財はみな無事だ」
と、住職はカラカラと笑い、
「この際、平成の大修理といたそう」
「そうじゃの~」
とじいさいんと二人でそろばんをはじき始まった。
「その前に、直せるものは直しておこう。もったいないからな」
「器用なやつはおらんか?」
「めんどうだ、掃除もやらせてしまえ」
手つかずの本堂の前の階段に座り、紀藤造園のおやじと建設会社の社長で宮大工の小早川と額を寄せ合って密談をしていた。
「本堂はまったく片付いていないのよ~」
住職の娘で、副住職の妻のことみがぼやく。
高校生の時に副住職であるあのヤンキーおやじの毒牙にかかり、結婚させられたばかりか、今では5人目が腹の中にいる。
「でも、おりゃあ、ラッキーだね、法事なんてめんどくせえ」
「あんたなら、いうと思ったわ」
と、そんなわけで、俺は、OB連中を呼んで本堂を掃除させることにした。
「で、バイト料、誰が払うんだ?」
「バカモノ、ボランティアだ」
それじゃ、誰もこねえよ、と(仮)亀梨軍団を思い浮かべていたのだ。