へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

押さえのエース?藤川おこる・・・

2006-03-23 15:26:07 | へちま細太郎

藤川だ・・・。

俺は、キれた。
自分で言うのもなんなんだが、この端正な顔立ちの俺に、これから合コンに行くというこの俺に、こともあろうにあの細太郎のクソガキが納豆入り豆腐をぶつけやがった。
世の中には、していいことと悪いことがある。この家族は、細太郎が素直でいい子であるということをよいことに、全くの基本的なしつけをしていない。
光一のバカが、小さいころに女装しようが(俺だって姉貴のスカートをはいた記憶がある)、リカちゃんを持っていようが、髪をなでようがどうだっていいことだ。
問題は、この犬にリカちゃんといういわくつきの名前をつけた時点で、家族がそろいもそろって反対しなかったことだ。
はっきり言うぞ。リカ・・・梨香と書くんだが・・・それは、この細太郎の母親の名前だ。
梨香とのことで光一がどれだけ傷ついているか、俺は広之から聞いて知っている。
ヤツが母親のことで細太郎に負い目があることもわかるが、はっきり言うべきだ。
細太郎も、父親がどれだけ今回のことでショックを受けているか、細太郎も理解するべきだ。

俺は、ドアと壁に手をかけると、思いっきり足を振り上げチェーンを踏み切った。
俺に踏まれている剛は、俺の力がかかって、
「ぎえっ
と悲鳴を上げた。
「どけ
ドアを開けると中に飛び込んだ。
「細太郎
俺は、床に座ってフライパンをたてにしている細太郎に突進していった。
犬のリカが立ちはだかって吠え立てたが、俺はかまわない。
「何だよ、入ってくんなよ、ナンパ野郎
「あ~誰に向って口きいてんだあ
びくっと細太郎がおびえた表情をした。
「もういっぺんいってみやがれ誰に向って口きいてんだ?あ?このクソガキが~
細太郎の表情が恐怖に変わる。
俺は細太郎を後ろ向きに肩に抱え上げると、思い切りケツを叩いた。
「いたあい
「痛いじゃねえだろうが
ようやく起き上がった剛が中に飛び込んできて、
「何してんですか、藤川さん」
と、俺を止めようとする。
「あ?」
俺はそのままの姿勢で振り返った。
「げっ」
俺にすごまれた剛は後ずさりして、及び腰になった。これで警察官だっていうんだからあきれたもんだ。
「おろしてよ~おろしてよ~
肩の上で細太郎が暴れた。
「いや、降ろさない」
「おとうさんならそんなことしないよ~おとうさん、たすけてよ~
結局、オヤジを頼るんじゃねえかよ。
「うるせえな、オヤジに助けを求めるなら、なぜオヤジをバカにした」
「してないよしてないよ
「じゃ、なぜ、この犬にリカってつけた」
細太郎はいったん動きをとめ、息を吸った。次の瞬間左足を大きく振り上げた。
みえみえだ、細太郎。
俺は、細太郎の足をぐいっとつかむと、
「こんなことぐらいで俺がやられると思ってんのか」
「うるさい、おろせおろせ。犬になんて名前をつけようが自由だろ、おろせ」
「いいや、降ろさねえ」
「おまえには関係ないだろう、おろせよ、ナンパ野郎」
足をばたばたとさせる。足が顔に当たろうが、俺はかまわない。
「死んじゃえ、バカバカおとうさんおとうさあん助けてよ、おとうさあん
剛は、真っ青になっている。
光一も剛もおふくろには殴られて育っているが、親父にはあまり叱られた記憶がないらしい。ましてや、俺のようなヤンキーに絡まれたこともない。
剛や広之は公立の進学校、光一は中高一貫の私立の進学校だ。
俺とは違い、優等生の王道を歩んでいる。
ま、広之は・・・別だけどな。。。

「細太郎・・・、黙れ」
俺は、静かに言った。
「おまえが暴れていては、おとうさんは何も話してくれないぞ」
ドアの間に光一の姿が見えた。
「うるさい、うるさい」
「そうか、じゃあ、ほんとのことをおとうさんではなく、俺が話していいんだな」
「え?」
細太郎は、動きを止めた。
光一が、ゆっくりと中に入ってきた。
ほんと、いつもながら物音をたてず、泥棒みたいに現れるやつだ。

さて、俺は疲れたから、引っ込むかな。
押さえは、長いイニングは無理なんだ。。。