へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

最悪な写真 その1

2006-03-06 18:50:07 | へちま細太郎

お世話になっております。細太郎の父です

細太郎は、アパートにも帰らず、実家におります。私も仕方がありませんので、実家で一晩を過ごしましたが、母親の嫌味と父親の余計なおせっかいが食欲を減退させ、さらに、細太郎に話しかけてもほとんど無視をするので、味までわからなくなってしまいました。
細太郎~、お願いだぁ~、せめて口をきいてくれ~
「イヤダ、フォー
ほ、細太郎・・・
「ばっちい、ばっちい、ばっちいけーおしり、ぺんぺん」
下品だぞ、細太郎

俺は、うちひしがれたまま職場に行った
俺の職場は学校だが、俺は教師じゃない。事務職員だ。
学校は私立の中学・高校と、敷地の奥には大学がある。正門から入ってすぐ右手に中学・高校の校舎があり、左手に体育館と講堂だ。奥に歩いていくと校庭があり、そのさらに生垣の向こうに大学の校舎が、かなり広い敷地を占領している。
講堂には事務室があり、中学・高校、時には大学の事務も一括して請け負っている。本部は別にあるのだが、主に、生徒用の経理が中心の事務室で、俺はここにいる。さらに講堂の1階は学食も兼ねていて、寮暮らしの生徒たちが朝食を食べて登校していく。時には、朝食を食べてこない生徒や教師たちで賑わっているが、ほとんどはおしゃべりタイムだ。
朝の喧騒が過ぎ、伝票を持って俺は学内の移動手段としてちゃりんこに乗り、まずは高校に行き、職員室に向った。
「何なの、時化たツラして」
と声をかけてきたのは、いつも俺をいじめる女性教師だ。こいつはバレンタインデーに、毎年食いかけのチョコを投げてよこす性悪女だ。避けて通っても、
「よ、相変わらず白いな」
「いつもより、白いですね。何かあったんですか?」
と、恒例の挨拶で迎えられる。
「あんたらね、ちゃんとした挨拶ってもんができないの
「色の白いのが悪い」
色の白いのは俺のせいじゃない。
「細太郎君元気ですか?」
いつも優しい言葉をかけてくれる優しい女性教師は、細太郎だけにしか興味がないのか、それ以上は聞いてこない。
どーせ、俺は魅力ねえよ。。。
「それがさ、細太郎が口をきいてくれないんだよ」
それでも俺は、ここへくると愚痴をこぼしたくなる。
「何、反抗期?」
「小学校3年でしょ、反抗期ではないよね」
こういう時はさすがに教師の顔に戻って、ああでもないこうでもない、と議論を戦わしてくれるのだが、またもやあの性悪女が、
「毛、生えたんじゃないの?」
と、にべもなく言ったもんだから、
「あ、あたり
「きっと、そうだよ」
と、変な方向に話が飛んでいってしまった。
「そんなんじゃない」
「じゃあ、なんだ」
じろりとにらまれた。女のくせにこえ~
「何か、隠してるだろ」
こいつらは悪さした生徒にゲロさせるプロだ。俺はこれ以上ここに留まってはロクなことがない、とさっさと用事を済ませて早々に退散することにした。
だいたい言えるか、きっかけが俺の小さなころの女装写真(というか、コスプレか?)とリカちゃんだなんて。。。
「おい」
いきなり、肩をつかまれぐいっと引き寄せられると、
「こういっちゃ~ん先々週の金曜日の飲み会でさあ、こんな写真撮ったんだけどさ~。どうする?引き伸ばす?」
と、飲み仲間の英語教師の藤川が、1枚の写真を俺の目の前にすっと差し出した。

う、なんじゃこりゃあ

こんな写真、覚えがないぞ~
ちきしょ~、や、やられた

明日へつづく