宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

東田直樹(1992-)『自閉症の僕が跳びはねる理由』(2007年、15歳)、角川文庫(その1)  

2017-06-13 22:39:18 | Weblog
はじめに
A 人と会話ができない。人と話をしようとすると、言葉が消えてしまう。
A-2 人に言われたことに、対応できない。
A-3 精神的に不安定になると、すぐにその場所から走って逃げ出してしまう。
B 自閉症を、個性と思ってもらえたら嬉しい。
C 会話はできない。筆談はできる。
C-2 パソコンで、原稿も書ける。以下、自閉の世界を、旅してください


第1章 言葉について:口から出てくる不思議な音
1
A 筆談が、自分の気持ちを表現する手段。
A-2 話せないし、表現手段がないと、孤独で、夢・希望もなく、人形のように過ごすだけ。
A-3 最初は文字盤で、字を指さした。
2
B 「ひとり言が、大きくてうるさい。」
B-2 見たこと、思い出したことを、反射のように言ってしまうため。
3
C 「同じことを何度もたずねる。」
C-2  聞いたことを、すぐに忘れてしまうため。
4 
D 「質問された言葉を、オウム返ししてしまう」。
D-2 相手の言っていることを、オウム返しで、場面として思い起こそうとするため。
5
E 「何度言われても、禁止されても、再びやってしまう。」
E-2 前にしたことが思い浮かばないし、また、何かにせかされるように、それをやらずにいられないため。
6
F 赤ちゃんのように話しかけるのは、やめてほしい。みじめな気持ちになる。年齢相応に、対してほしい。
7
G 「イントネーションがおかしかったり、言葉の使い方が独特。」
G-2 言いたい言葉(気持ち)と実際に話す言葉が、ずれてしまうため。
G-3 本を読むときにイントネーションが変なのは、文字を読むのに精いっぱいで、内容を想像しながら読んだりできないため。
8 
H 「すぐに返事をしないのは、なぜか?」
 ①頭で考えたことが、すぐに言葉にならない。
 ②答えようとすること、つまり言おうとした言葉が、頭から消えてしまう。
 ③かくて相手が何を言ったか、自分が何を話そうとしたのか、わからなくなってしまう。
9
I 言葉になったことが、自分の言いたいことでないことがある。
I-2 例えば「はい」と「いいえ」を間違える。自己嫌悪で、誰とも話したくなくなる。
I-3 僕たちの言葉を、信じすぎないでください。
10
J 「どうして、うまく会話できないのか?」
J-2 話したいことは話せず、関係のない言葉がどんどん口から勝手に出てしまう。
J-3 体さえ、自分の思い通りにならない。不良品のロボットを運転するよう。
J-4 いつもみんなに叱られ、弁解も出来ない。
J-5 今は、筆談とパソコンで、コミュニケーションできる。


第2章 対人関係について:コミュニケーションとりたいけれど・・・・
11 
A 「目を見て話さない!」
A-2 ①眼がこわいので「人の声」だけ聞こうとする。②「耳をそばだてている」ので、何も見えないのと同じ。
12 
B 「手をつなぐのが嫌いか?」
B-2 興味があるものがあると、手を放して、そっちへ行ってしまう。手をつなぐのが嫌なのではない。
13
C 「ひとりが好きなのか?」
C-2 他人に迷惑をかけていないか、いやな気持にさせていないか、気にして、人といるのが辛くなる。
14
D そばにいる人が、声をかけてくれても、気づかないことがある。
D-2 「知らん顔をするひどい人」、「知能が遅れている人」ではない。
D-3 声だけでは、「人の気配を感じる」ことができない。
15
E 「表情が乏しい!」と言われる。
E-2 楽しいorおもしろいと思うことが、「みんなとは違う!」
E-3 人の批判、馬鹿にする、騙すなどで、笑うことはできない。
E-4 みんなの見ていない時、ひとりで美しい物をみたり、楽しいことを思いだして、心からの笑顔が出る。
16
F 「体に触れられるのがいやか?」⇒いや!
F-2 自分でもコントロールできない体を、他の人に触れられると、自分が自分で無くなる恐怖がある。
17
G 「手のひらを自分に向けてバイバイするのはなぜか?」
G-2 自分の体の各部分が、よくわからない。だから、自分の目で確かめらるよう、自分に手のひらを向けてバイバイする。
18
H 楽しい場面が、突然、頭にひらめいて、けらけら笑うことがある。思い出し笑い!
19
I 記憶がバラバラでつながらない。
I-2 しかも記憶が突然、嵐のように再現されるフラッシュバックが起る。
I-3 フラッシュバックは、いやな思い出ばかり。
I-4 その時は、泣かせておいてほしい。
20 
J 自閉症のせいか、僕は、少しの失敗でも天地がひっくり返るほど、いやだ。
J-2 例えば、コップに水を注いだ時、水がこぼれただけでも、我慢できない。
J-3 たいした失敗でないと、分かっていても、感情を抑えられない。
J-4 僕自身が壊れてしまいそうなので、泣いたり、わめいたり、物を投げたりする。
J-5 この津波が終わって落ち着くと、自分が暴れた後があって、自己嫌悪に陥る。
21
K どうして「言われても、すぐにやらない」のか?
①「気持ちの折り合いがつかない」。自分で自分を励まさないと、行動に移せない。「やりたくない」のではない。
②あるいは、「自分の体が思い通りにならない」。体を自分のものと思ったことがない。
22
L 「僕たちは見た目では、言っていることを理解しているのかいないのかも分からないし、何度同じことを教えてもできません。」
L-2 しかし「頑張りたい気持ち」はみんなと同じ。「だめだとあきらめられると、とても悲しいです。」
23 
M 「迷惑をかけてばかりで誰の役にも立たない人間」が、どんなに辛くて悲しいか、みんなは想像もできないと思います。
M-2 僕が一番辛いのは、自分のせいで悲しんでいる人がいることです。
24
普通の人になりたいか?⇒自分が好きになれるのなら、普通でも、自閉症でも、どちらでもいいです。


第3章 感覚の違いについて:ちょっと不思議な感じ方。なにが違うの?
25 
A 「ピョンピョン手を叩きながら跳びはねる」のはなぜか? 「空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶる。」
A-2 「跳んでいる自分の足」、「叩いている時の手」など、「自分の体の部分がよく分かるから気持ち良い」。
A-3 「体が、悲しいことや嬉しいことに反応する。」
B 体の硬直は、体が「硬くなること」ではなく、「自分の思い通りに動かなくなること」だ。
26
C 空中に字を書く。これは、覚えたいことを確認するため。
C-2 場面は忘れても、文字や記号は忘れないので、人が歌を口ずさむように、文字を思い出す。
27 
D 耳をふさぐのはなぜか?音が気になるため。
D-2 音を聞き続けると、自分がどこにいるか分からなくなる。地面が揺れて周りの景色が襲ってくるような恐怖。それを避け、自分を守り、自分の位置をはっきり確認するため、耳をふさぐ。
28 
E 手や足の動きがぎこちない。それは、手や足が、どこから付いているのか、どうやったら自分の思い通りに動くのか分からないため。
E-2 だから人の足を踏んでも分からなかったり、人を押しのけても分からないことがある。
29
F 僕たちは、苦しさを人に分かってもらうことができず、自分の体の中にためこみ、体の毛を抜いたり、感覚がおかしくなったりする。
30
G 髪や爪を切られて痛くないのに大騒ぎする人は、たぶん、そのことが悲しい記憶と結びついているため。
G-2 痛いのに平気な顔をしていたら、たぶん、分かってもらうのが大変なので、我慢した方が、簡単なため。
31 
H 自閉症の人の中には偏食が激しい人がいる。それはおそらく、食べ物にあまり多くの種類があり、習得が大変で、なかなか食べ物だと感じるようになれない。だから食べなれたものしか食べない。
H-2 食べ物と感じられていないものは、食べてもつまらない。
32
I 物を見る時、最初に部分が目に入ってきて、その後、徐々に全体が分かる。
I-2 物はすべて美しさを持っていて、それを自分のことのように喜べる。物といることは、一人でいるのでなく、たくさんの仲間と過ごしていることだ。
33
J 気温による衣服の調整が難しい。例えば、暑くても、服を脱ぐことを思いつかない。
J-2 服は自分の体の一部のようなものなので、同じだと安心する。いつも同じものを着ていたりする。
34 
K 時間は、ずっと続いていて、はっきりした区切りがなく、ぼくらは困る。
K-2 時間を想像(※イメージ)できない。
L 自分が何をしでかすのか、また、自分がこの先、どうなるのか、こわい。
35
L 寝ない時期(睡眠障害)があるが、叱らないで、見守ってほしい。
35-2 ちょっと言わせて
M ぼくたちは、おかしいほどいつも、そわそわしている。
M-2 時間の流れに乗れない僕たちはいつも不安。ずっと泣き続けるしかない。


第4章 興味・関心について:好き嫌いってあるのかな?
36
A 回っているものは楽しい。回転するものは、規則正しく動き、様子が変わらない。変わらないことが心地よい。どこまでも続く永遠の幸せのよう。
37
B 手をひらひらさせるのは、直線的に光が目のなかに飛び込んで、目が痛くなるのを防ぐため。
B-2光をみていると、僕たちはとても幸せ。
38
C 並ぶことは愉快。水などが流れ続けることも快感。
C-2 線や面(パズルなど)が大好き。頭の中がすっきりする。
39 
D ずっとずっと昔、人がまだ存在しなかった大昔に帰りたい。
D-2 時間に追われる生活は嫌だ。
D-3  水の中は、静かで自由で幸せ。自分が望むだけの時間がある。
D-4 水の中なら時間が一定の間隔で流れているのが、よくわかる。
E 僕たちは原始の感覚を残したまま生まれた人間。
E-2 僕たちは時間の流れにのれず、言葉も通じず、ひたすらこの体に振り回されている。
40
F コマーシャルが流れるとテレビの前にとんでいくのは、繰り返し同じで、自分の知っているものが映っていて嬉しいから。
F-2 まるで友達が遊びに来てくれたような感覚になる。
F-3 コマーシャルの内容がよく分かっていて、すぐに終わるので安心して見ていられる。
41
G 『おかあさんといっしょ』のテレビ番組が好き。
①優しいもの、かわいらしいもの、美しいものが大好き。
②ストーリーが単純で、予測がつきやすく安心。
③繰り返しが多いので好き。知らない土地で、知っている人に会ってほっとするのと同じ。
④争いごとや、かけひきや、批判は苦手。
42
H 電車の時刻表やカレンダーを覚えるのが好き。
H-2 数字が好き。例えば1は、1以外の何も表していない。単純明快が心地いい。
H-3 時刻表やカレンダーは誰が見ても同じだし、決まったルールの中で表されているのが、分かりやすい。
H-4 目に見えない人間関係やあいまいな表現は、とても理解するのが大変。
43
I 長い文章は嫌なのではなく、すぐに疲れたり、何を書いているのか分からなくなったりする。
44
J 追いかけられると、相手と自分との感覚が縮まるのが、おかしかったり怖かったりするので、つい逃げ続けてしまう。
K 速く走ることを意識すると、手や足をどう動かせば速く走れるのかを考えてしまい、考え始めたとたん、体の動きが止まり、走れなくなる。
45
L 緑が好きなので、散歩が好き。緑を見ていると障害者の自分も、この地球に生きていて良いのだという気にさせてくれる。緑は命の色。
46 
M 自由はとても不自由な時間。
M-2 いつも使っているおもちゃや本があれば、それで遊ぶが、それは好きなことでなく、できること。やることが分かっているから安心。
M-3 僕が本当にしたいことは、難しい本を読んだり、一つの問題について議論したりすること。
47
N 自閉症の僕の楽しみは、自然と遊ぶこと。自然が友達だ。
N-2 人に対する場合のように、相手が自分のことをどう思っているだろうとか、何を答えたらいいのだろうかとか、考えなくていい。


第5章 活動について:どうしてそんなことするの?
48
A 目についた場所に飛んでいきたくなる気持ちをおさえられない。だからすぐにどこかに行ってしまう。
A-2 ただし行きたいというのでなく、いつの間にか体が動いてしまう。悪魔がとりついたかのように、自分が自分でなくなる。
A-3 マラソンや歩いて、体がすっきりすると、自分の体の位置(重力を感じる)が自覚でき、落ち着ける。
49
B すぐ迷子になってしまうのは、自分がどこにいればいいか分からない、その場所の居心地が悪いため。
B-2 安心できる場所を見つけようと、無意識のうちにふらふらと歩いたり、びゅーんと走って行ったりする。
B-3 自分の居場所を探さないと、自分がこの世界で一人ぼっちになってしまうと思う。
B-4 僕たちの理想の居場所は、結局、探せない。森の奥深く、または深海の海の底にしかない。
50
C 幼稚園の頃、何度も勝手に家を出て、警察に保護された。
C-2 何か目的があって飛び出すわけでなく、何かに誘われるように、体が動いてしまう。
C-3 外に出ないと自分が自分でなくなる。なぜだかわからないけれど、どこまでもいかなければならない。
C-4 戻らない。道に終わりがない。道が僕らを誘う。
D 車にひかれそうになって、その恐怖が記憶に強く残り、家を一人で出ていくことがなくなった。
51
E 自閉症の人は、繰り返しが好きだ。
E-2 それは自分の意志によるのでない。脳が命令する。
E-3 脳の命令に従う間は、気持ちよく安心できる。
E-4  自分の気持ちと関係なく、脳が色々要求する。
E-5 それに従わないと地獄に突き落とされそうな恐怖と、戦わなければならない。
52
F 何度、注意されてもやってしまう理由。
F-2 『自分が何かしでかす→何か起こる→誰かに注意される』という場面が、強く記憶されると、その場面を再現したい気持ちが生じ、しかも再現するとこの上ない感電したような快感がある。ビデオの再生のようなもの。F-3 その快感を得ようと、繰り返し、再現する。
F-4 これを理性で我慢するのは苦しくて、苦しくて大変だ。僕たちを止めてほしい。
53
G どうしてこだわるのか。
G-2 好きでやっているのでない。やらないといてもたってもいられない。
G-3 自分の体でありながら、こだわりをやめることが出来ず、人にも迷惑をかけてしまい、自閉症の本人自身が、一番悩んでいます。
G-4 脳が終了のサインを出せば、こだわりは、ある日突然、なくなる。
54
H 誰かに、ぼくが「ジュース飲む」と言っても、「どうぞ」と言われないと、いつまでも飲まない。合図がないと、僕たちの脳に、次の行動のスイッチがはいらない。
H-2 それをやぶって行動するのは、自分がどうにかなってしまいそうなくらいの恐怖がある。
H-3 僕たちは大騒ぎし、泣いて叫んで叩いて壊して、僕たちは抵抗するでしょう。
H-4 でも、あきらめないで、僕たちと一緒に戦って下さい。
55
I いつも体が動いてしまう。
I-2 じっとしていると不安で怖くていたたまれない。じっとしていると自分が、この身体に閉じ込められていると実感させられる。
I-3 僕はいつも出口を探している。動いていると落ち着く。
56
J スケジュールや時間を視覚的に表示されると、強く記憶に残りすぎて、そのことに自分を合わせることだけに集中してしまい、変更になるとパニックになってしまう。
57
K 思い通りにならない体、うまく話せないため伝えられない気持ちを抱え、僕たちの感情は極めて複雑・繊細になっている。
K-2 目に見える行動は幼いが、心の中はみんなと同じように複雑です。
K-3 気が狂いそうになってパニックになる。ただし、自傷、他傷行為をするときは、止めて下さい。
58
L 自閉症とは、文明の支配を受けず、自然のまま生れて来た人のことだ。
L-2 太古の昔からタイムスリップしてきたような人間。

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東田直樹(1992-)『自閉症の僕が跳びはねる理由』(2007年、15歳)、角川文庫(その2) 《感想》 

2017-06-13 22:29:53 | Weblog
《感想》
 『自閉症の僕が跳びはねる理由』の東田直樹氏の見解を、次のようにまとめてみた。
 第1は、言葉の問題。頭で考えたことが、すぐに言葉にならなかったり消えてしまうこと。
 第2は、他者の問題。他者に対して、過剰に対応する。他者が恐い、他者に迷惑をかけている、誰の役にも立たないことに絶望している。
 第3は、定型・繰り返し・予測可能性の問題。定型・繰り返しの出来事のみが、予測可能で、安心できるし好きだと言われる。
 第4は、他者への恐怖と対照的に、物・自然との親和性の感情。
 第5は、体の問題。自分の体がコントロールできない。
 第6は、記憶の問題。記憶がバラバラであり、また嫌な記憶のフラッシュバックが起きる。
 第7は、「脳の命令」(衝動)の問題。自分の気持ちと関係なく、脳が色々要求する。それに従わないと地獄に突き落とされそうな恐怖と、戦わなければならない。
 第8は、自閉症者の感情の問題。感情の津波。思い通りにならない体、うまく話せないため伝えられない気持ちを抱え、彼らの感情は極めて複雑・繊細になっている。
 第9に、時間の問題。自閉症者は近代社会の時間の流れに乗れない。だから彼らはいつも不安。ずっと泣き続けるしかない。居場所がない。
 最後に、東田直樹氏が自閉症についての定義を提出する。自閉症とは、文明の支配を受けず、自然のまま生れて来た人。太古の昔からタイムスリップしてきたような人間。



◎言葉の問題(Cf. 1章 言葉について:口から出てくる不思議な音)
・人と話をしようとすると、言葉が消えてしまう。(はじめにA)
・会話はできない。筆談はできる。(はじめにC)
・パソコンで、原稿も書ける。(はじめにC-2)
・見たこと、思い出したことを、反射のように言ってしまう。(1章B-2)
・相手の言っていることを、オウム返しで、場面として思い起こそうとする。(1章D-2)
・頭で考えたことが、すぐに言葉にならない。(1章H)
・答えようとすること、つまり言おうとした言葉が、頭から消えてしまう。(1章H)
・言葉になったことが、自分の言いたいことでないことがある。例えば「はい」と「いいえ」を間違える。自己嫌悪で、誰とも話したくなくなる。  (1章I)
・話したいことは話せず、関係のない言葉がどんどん口から勝手に出てしまう。(1章J-2)
・空中に字を書く。これは、覚えたいことを確認するため。(3章C)
 場面は忘れても、文字や記号は忘れないので、人が歌を口ずさむように、文字を思い出す。(3章C-2)
・長い文章は嫌なのではなく、すぐに疲れたり、何を書いているのか分からなくなったりする。(4章I)


◎他者の問題(Cf. 2章 対人関係について:コミュニケーションとりたいけれど・・・・)(※◎定型・繰り返し・予測可能性の問題も参照)
・「目を見て話さない!」(2章A)
 ①眼がこわいので「人の声」だけ聞こうとする。②「耳をそばだてている」ので、何も見えないのと同じ。(2章A-2)
・他人に迷惑をかけていないか、いやな気持にさせていないか、気にして、人といるのが辛くなる。(2章C)
・声だけでは、「人の気配を感じる」ことができない。(2章D-3)
・「迷惑をかけてばかりで誰の役にも立たない人間」が、どんなに辛くて悲しいか、みんなは想像もできないと思います。(2章M)
 僕が一番辛いのは、自分のせいで悲しんでいる人がいることです。(2章M-2)


◎定型・繰り返し・予測可能性の問題:安心できるし好きだ(Cf. 4章 興味・関心について:好き嫌いってあるのかな?)
・回転するものは、規則正しく動き、様子が変わらない。変わらないことが心地よい。どこまでも続く永遠の幸せのよう。(4章A)
・コマーシャルが流れるとテレビの前にとんでいくのは、繰り返し同じで、自分の知っているものが映っていて嬉しいから。(4章F)
・『おかあさんといっしょ』のテレビ番組が好き。(4章G)
 ②ストーリーが単純で、予測がつきやすく安心。
 ③繰り返しが多いので好き。知らない土地で、知っている人に会ってほっとするのと同じ。
・電車の時刻表やカレンダーを覚えるのが好き。(4章H)
 数字が好き。例えば1は、1以外の何も表していない。単純明快が心地いい。(4章H-2)
 時刻表やカレンダーは誰が見ても同じだし、決まったルールの中で表されているのが、分かりやすい。(4章H-3)
 目に見えない人間関係やあいまいな表現は、とても理解するのが大変。(4章H-4)
・自由はとても不自由な時間。(4章M)
 いつも使っているおもちゃや本があれば、それで遊ぶが、それは好きなことでなく、できること。やることが分かっているから安心。(4章M-2)
・スケジュールや時間を視覚的に表示されると、強く記憶に残りすぎて、そのことに自分を合わせることだけに集中してしまい、変更になるとパニッ クになってしまう。(5章J)


◎他者と対照的に物・自然との親和性の問題
・物はすべて美しさを持っていて、それを自分のことのように喜べる。物といることは、一人でいるのでなく、たくさんの仲間と過ごしていること  だ。(3章I-2)
・緑が好きなので、散歩が好き。緑を見ていると障害者の自分も、この地球に生きていて良いのだという気にさせてくれる。緑は命の色。(4章L)
・自閉症の僕の楽しみは、自然と遊ぶこと。自然が友達だ。(4章N)
 人に対する場合のように、相手が自分のことをどう思っているだろうとか、何を答えたらいいのだろうかとか、考えなくていい。(4章N-2)


◎体の問題(Cf. 3章 感覚の違いについて:ちょっと不思議な感じ方。なにが違うの?)
・体が、自分の思い通りにならない。不良品のロボットを運転するよう。(1章J-3)
・自分でもコントロールできない体を、他の人に触れられると、自分が自分で無くなる恐怖がある。(2章F-2)
・自分の体の各部分が、よくわからない。だから、自分の目で確かめらるよう、自分に手のひらを向けてバイバイする。(2章G-2)
・「ピョンピョン手を叩きながら跳びはねる」のはなぜか? 「跳んでいる自分の足」、「叩いている時の手」など、「自分の体の部分がよく分かる から気持ち良い」。(3章A-2)
・体の硬直は、体が「硬くなること」ではなく、「自分の思い通りに動かなくなること」だ。(3章B)
・手や足の動きがぎこちない。それは、手や足が、どこから付いているのか、どうやったら自分の思い通りに動くのか分からないため。(3章E)
 だから人の足を踏んでも分からなかったり、人を押しのけても分からないことがある。(3章E-2)
・服は自分の体の一部のようなものなので、同じだと安心する。いつも同じものを着ていたりする。(3章J-2)
・いつも体が動いてしまう。(5章I)
 じっとしていると不安で怖くていたたまれない。じっとしていると自分が、この身体に閉じ込められていると実感させられる。(5章I-2)
 僕はいつも出口を探している。動いていると落ち着く。(5章I-3)


◎記憶の問題
・記憶がバラバラでつながらない。(2章I)
・しかも記憶が突然、嵐のように再現されるフラッシュバックが起こる。(2章I-2)
 フラッシュバックは、いやな思い出ばかり。(2章I-3)
 その時は、泣かせておいてほしい。(2章I-4)


◎「脳の命令」(衝動)の問題(Cf. 5章 活動について:どうしてそんなことするの?)
・興味があるものがあると、手を放して、そっちへ行ってしまう。手をつなぐのが嫌なのではない。(2章B-2)
・目についた場所に飛んでいきたくなる気持ちをおさえられない。だからすぐにどこかに行ってしまう。(5章A)
 ただし行きたいというのでなく、いつの間にか体が動いてしまう。悪魔がとりついたかのように、自分が自分でなくなる。(5章A-2)
・幼稚園の頃、何度も勝手に家を出て、警察に保護された。(5章C)
 何か目的があって飛び出すわけでなく、何かに誘われるように、体が動いてしまう。(5章C-2)
・自分の気持ちと関係なく、脳が色々要求する。(5章E-4)
 それに従わないと地獄に突き落とされそうな恐怖と、戦わなければならない。(5章E-5)
・何度、注意されてもやってしまう理由。(5章F)
 『自分が何かしでかす→何か起こる→誰かに注意される』という場面が、強く記憶されると、その場面を再現したい気持ちが生じ、しかも再現する とこの上ない感電したような快感がある。ビデオの再生のようなもの。(5章F-2)
 その快感を得ようと、繰り返し、再現する。(5章F-3)
 これを理性で我慢するのは苦しくて、苦しくて大変だ。僕たちを止めてほしい。(5章F-4)
・どうしてこだわるのか。(5章G)
 好きでやっているのでない。やらないといてもたってもいられない。(5章G-2)
 脳が終了のサインを出せば、こだわりは、ある日突然、なくなる。(5章G-4)
・誰かに、ぼくが「ジュース飲む」と言っても、「どうぞ」と言われないと、いつまでも飲まない。合図がないと、僕たちの脳に、次の行動のスイッ チがはいらない。(5章H)
 それをやぶって行動するのは、自分がどうにかなってしまいそうなくらいの恐怖がある。(5章H=2)


◎感情の問題(Cf. 4章 興味・関心について:好き嫌いってあるのかな?)
・自閉症のせいか、僕は、少しの失敗でも天地がひっくり返るほど、いやだ。(2章J)
 例えば、コップに水を注いだ時、水がこぼれただけでも、我慢できない。(2章J-2)
 たいした失敗でないと、分かっていても、感情を抑えられない。(2章J-3)
 僕自身が壊れてしまいそうなので、泣いたり、わめいたり、物を投げたりする。(2章J-4)
 この津波が終わって落ち着くと、自分が暴れた後があって、自己嫌悪に陥る。(2章J-5)
・光をみていると、僕たちはとても幸せ。(4章B-2)
・僕たちは原始の感覚を残したまま生まれた人間。(4章E)
・僕たちは時間の流れにのれず、言葉も通じず、ひたすらこの体に振り回されている。(4章E--2)
・『おかあさんといっしょ』のテレビ番組が好き。(4章G)
 ①優しいもの、かわいらしいもの、美しいものが大好き。
 ④争いごとや、かけひきや、批判は苦手。
・すぐ迷子になってしまうのは、自分がどこにいればいいか分からない、その場所の居心地が悪いため。(5章B)
 安心できる場所を見つけようと、無意識のうちにふらふらと歩いたり、びゅーんと走って行ったりする。(5章B-2)
 自分の居場所を探さないと、自分がこの世界で一人ぼっちになってしまうと思う。(5章B-3)
・思い通りにならない体、うまく話せないため伝えられない気持ちを抱え、僕たちの感情は極めて複雑・繊細になっている。(5章K)
 目に見える行動は幼いが、心の中はみんなと同じように複雑です。(5章K-2)
 気が狂いそうになってパニックになる。ただし、自傷、他傷行為をするときは、止めて下さい。(5章K-3)


◎時間の問題
・時間は、ずっと続いていて、はっきりした区切りがなく、ぼくらは困る。(3章K)
 時間を想像(※イメージ)できない。(3章K-2)
 自分が何をしでかすのか、また、自分がこの先、どうなるのか、こわい。(3章L)
・時間の流れに乗れない僕たちはいつも不安。ずっと泣き続けるしかない。(3章M-2)
・ずっとずっと昔、人がまだ存在しなかった大昔に帰りたい。(4章D)
 時間に追われる生活は嫌だ。(4章D-2)
・水の中は、静かで自由で幸せ。自分が望むだけの時間がある。(4章D-3)
 水の中なら時間が一定の間隔で流れているのが、よくわかる。(4章D-4)


◎「自閉症の僕」が出した自閉症についての定義
・自閉症とは、文明の支配を受けず、自然のまま生れて来た人のことだ。(5章L)
 太古の昔からタイムスリップしてきたような人間。(5章L-2)

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