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「水を抱く」 石田衣良

2013-09-19 | 本と雑誌

S

新潮社 322ページ 1600円+税

週刊新潮に連載された石田衣良の最新 恋愛小説。
29歳独身の伊藤俊也は医療機器販売会社の営業マン。彼は出会った30代の美しい女性ナギに翻弄され、惹かれていく。
ナギは本名も含めて全てが謎の女性。スマホのメールと電話番号だけでつながる関係。なぜかナギは自分の人生をあきらめているようなところがあり、毎日を刹那的に暮らしている。そして俊也に突然キスをしたり、バーのトイレで戯れたり。しかし、セックスをすることはなかった。俊也の仕事は大手クライアントへの機器の売り込みが佳境。これが成功しないと社内の俊也の立場が悪くなり地方への左遷も起こりうる状況になる。俊也は仕事に追われながら、自由奔放に生きるナギにさらに惹かれて行く。

やはり石田衣良。こういう女性を描いては彼にかなう者はいません。ここまで勝手な、しかし可愛い女性はいないでしょう。でもこの本の世界では血が流れた、魅力的な女性として生きています。私も惹かれます。一瞬 「美丘」の生まれ変わりの女性なのか と思うところもあり。

またまた描写がスゴイ。
・信号が青になった。春の淡い空に緑のLEDがにじみ出している。俊也は巨大な生物の息のような春風に背を押され、渋谷・公園通りの夜道をのぼっていった。
・恋は観覧車のようなもので、乗る気になるまで眺めていればいいのだ。
・夜空を低く流れる雲は、地上のネオンサインを反射して、生きものの内臓のように赤黒く膨らんでいる。
・見あげるとハーフミラーの壁面に反射した空が何層にも青く折り重なっている。梅雨まえの乾いた風にはガラスの粉でも舞っているようだった。さらりと肌をすべった風は、白いシャツの中を冷ましていく。
・全てがスマートフォンでかんたんに検索可能であるのは確かに便利だった。だが、その便利さのおかげで意外な驚きや出会いといった生のスリルはずいぶんとみすぼらしいものになってしまった。
・多くの男たちは、女性の魅力をとり違えている。顔立ちが整っているとか、乳房がおおきいとか、脚がきれいだなどというのは、ただの遺伝にすぎない。表面の皮一枚と骨格の出来不出来だ。問題はその女性のなかにどれほどの欲望と熱量が潜在しているが。その欲望がどんな形でねじれ、表現されるときにどんなゆがみを生むのか。異性としての女性のおもしろさは、そこにある。

週刊新潮で読み、改めて単行本で読み直しました。やはり石田衣良の恋愛小説は変わっていて(ユニークで)、しかも面白い。お薦めです。


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