電気自動車のインフラ投資を行うベタープレイスの日本法人、ベタープレイス・ジャパン代表取締役社長 藤井清孝氏の著書です。氏は、マッキンゼー、ファースト・ボストン、ケイデンス・デザイン・ジャパン、SAPジャパン、ルイ・ヴィトン・ジャパンと錚錚たる企業を経験され、日本を内外から見つめてきた経歴をお持ちの方だそうです。このような職業を選んだ根底には「外国から最新のビジネスモデルを日本に移入し、日本企業を強くすることに貢献する」ことがあるそうです。少なからず外資の仕事のやり方や技術を学び、最終的には日本のためになりたいと思っている下名の想いにも繋がる点があります。但し、今はいささかジレンマがあるのは確かですが・・・
本書の主旨は、グローバリゼーションに乗り遅れた日本の問題点と為すべき3つの課題です。特に、日本の現在の問題点については、ずばり分かりやすく解説をしていて、普段思っていることを改めて整理することができる点が良いです。但し、問題点に関する記述の割りに、為すべき「革命」がちょっと抽象的では?と思ってしまいます。日本の産業構造、社会を変えるということに主眼を置くと、こういう論調になってしまうのかもしれません。
まず、問題提起として、日本が直面する時代の特徴として、
- 明らかに正解のない時代
- 世界第2位の経済規模の腕力が効かなくなる時代
- 従来の「強み」が「足かせ」になる時代
- 「ものづくり」の世界的な構図が大転換している時代
- アジア、アメリカとの関係が、本質的に変化している時代
- 少子高齢化、内向きの人材を前提とした時代
- 新しいタイプのリーダが求められる時代
詳細は割愛しますが、いずれもこれまでの日本の強みや積み上げてみたものが、逆に障害になっていて、大きな転換期を求めているというもの。例えば、日本は一業種に参入企業が多く、成長期に切磋琢磨しながら競争をしてきた時代はよかったが、今は韓国や中国、台湾の攻勢にあい、シェアを下げていっているという、今の日本製造業の核心を突いています。
また、外資の日本子会社が消えていく傾向にあることも指摘しています。市場も小さくなり、かつ特殊、有望な人材も少なく、外資にとっては、中国やインド、シンガポールの方がよっぽど魅力的なのです。もちろん、うちの会社も対岸の火事ではありません。
そこで、本書では、これからの日本が必要とする以下の3つのイノベーションを説いています。
1) ビジネスモデル・イノベーション
デジタル化に乗り遅れ、いまだにアナログ的なものづくりをしている日本も、世界の潮流に乗り遅れず、デジタル時代のビジネスモデルに転換する。
2) ガバナンス・イノベーション
過去に自発的にガバナンスの変化を経験したことの無い日本において、異なるガバナンスの選択肢を設け、その結果、危機感を持った社会を作る。
3) リーダーシップ・イノベーション
多様性からエネルギーを生み出し、全体感を持ち問題自体を定義でき、グローバルな仕組の中で日本の繁栄を図る力を持つ次世代のリーダーを育てること。
グローバル化の中で、他国のような成長が必要かどうかは議論の分かれるところであるが、資源を持たない日本は、輸出で稼がないと、外国から資源を買えず、生き残って行く事はできないと思います。かと言って、今更ブータンのようなのんびりした小国にも戻れません。
ならば、成熟国家の多様化中で、ハートもソフトも質を高め、内需、というより国民の幸福感を高めることで、外貨を呼び込みしかないと思います。
その為には、これまでの固定観念にこだわらない若い世代のリーダーが必要なのですが、成熟国家の日本では、政治家も経営者も投票に行く有権者も年寄りが多く、よって、問題先送りの施策ばかり。
よって、3つ目のイノベーションにあるように、自分を含めた、若い世代が、発言力と実行力を高め、世代交代をしていく中で、新しい日本を作って行かなければ行けないと思います。別にたいそうなことではなく、まずは個々が、指示を待つのではなく、問題意識と目標を持ち、自ら行動をしていくことの積み重ねだと思います。