昨年2016年4月の名人戦7番勝負で
佐藤天彦(あまひこ・福岡県福岡市出身:当時8段)が第5局(5月31日)で当時の羽生善治(はぶよしはる)名人に勝ち、名人位を奪取し9段位に。
- 「名人位」のほうは、ほかのタイトル戦と同じで1年後に防衛戦があり、この勝敗によって「タイトル防衛」か「タイトル失冠(挑戦者がタイトル奪取)」が決まります。
- 一方「段位」のほうは、下がることがない「称号」で、年間固定給料などは所属する級(これは成績によって上下する)によって決まり、これに各種タイトル戦予選などの対局料などが入るようです。
- よって羽生は、今まで名人位のほうが優先されるため9段は名乗っていませんでしたが、名人を奪取されたあとの今では9段位です。ただし羽生は、ほかのタイトルを保持しているため(2017年04月現在:王位・王座・棋聖)、こちらのほうが優先され、「羽生三冠」などと呼ばれているようです。
- 羽生は2016年度(2017年3月31日終了)のA級順位戦(下記参照)では稲葉などに敗れ、惜しくも挑戦者になれず、稲葉が優勝し現在名人位に挑戦中ということです。
そして佐藤は1年間名人の地位にあり
翌年となる今年2017年4月、佐藤天彦名人に挑戦してきたのが、同じ30歳前の稲葉8段(兵庫県西宮市出身:甲子園球場も西宮市にある)。名人戦の場合も、毎年A級順位戦優勝者の挑戦を受けなければならず、これを保持者の側から「防衛戦」とも称され、挑戦者の側から言えば「タイトル挑戦」になります。
一昨日2017/04/06に始まった今年の名人戦7番勝負の1局目、2日目の昨日の夕方、先手佐藤が投了し、後手番の稲葉が7番勝負の初戦を飾ったという次第です。〔棋譜はこちら〕
挑戦者の後手稲葉が指した
- 44手目「△35歩(打ち)▲同飛△26歩(歩の突き出し)」
- 53手目▲24歩に対する「△25角(飛取り)▲23歩成(銀取り)△34角(角逃げ)」
などが先手佐藤名人や解説者はもちろんのこと視聴者の読みにもない指し手だったようで、稲葉の力強さを見せつけました。
ただし、まだ7番勝負の1局目が終わっただけであり、佐藤名人も名うての妙手発してきた人なので、この先どうなるか、まったく分りません。
将棋名人戦と言えば
ずっと、羽生善治か森内俊之のどちらか、あるいは両者の対戦だったので、これぞという時以外は比較的無難な進行が多かったように記憶しています。
しかし若い佐藤・稲葉の時代になって、中盤からどんどん新しい手が生まれるようになり、目を離せなくなりました。
「将棋」と言えば、並んで語られることが多いのが「囲碁」
囲碁の発展も見逃せません。このゲームでは、どうしても先着する先手が有利なため「コミ」というハンディを後手に与えることで、勝敗のバランスを保っております。コミに関してこちらによれば
- 1939年 コミを4目半に
- 1974年 コミを5目半に
- 2002年 コミを6目半に
この勢いだと2000年代の後半(2050年以降)には
- コミは7目半になっているかも知れません。この調子でどんどん先手が有利になり、その都度コミを増やすことで「勝敗のバランスを保っている」とも言えます。
- 囲碁の世界で「研究が進み、コミが減る」という時代がやってくるのでしょうか。
一方将棋の場合
江戸時代の頃から先手・後手の拮抗は続いており、こちらによれば2008年度だけでしょうが「後手の勝率50.2%」という年もありましたが、その後、落ち着いてきて、プロの棋戦でも「少し先手が有利(先手の勝率53%程度)」と言える状況になってきました。
また同じこちらでは、プロ棋士にも勝つようになってきたコンピュータソフト同士の1700局の結果として「先手の勝率が52%」と拮抗しているので驚きます。
将棋の場合、あと100年ほど「先手が一方的に有利」にはなりそうにありません。
つまり将棋は、勝敗が均衡するようなルールになっていて
囲碁のような「コミ」というバランスをとる必要がない絶妙のゲームになっているようです。
ただし将棋と囲碁のどちらがゲームとして立派かについては、好みによって意見が分かれます。
チェスの場合、こちらによれば
先手が有利と判定されてはいても、先手の40勝28敗(32引き分け)だそうで、これをどう解釈するか・・・・・・
①引き分けが多すぎる。←ゲームとして行き詰まっているか?
②引き分けを度外視すれば先手の勝率は59%〔=40/(40+28)〕
③引き分け32を半分の勝ち(それぞれ16)とみなせば、先手の勝率は56%〔=(40+16)/100)〕
ということで統計の扱い方にもよりますが、将棋とチェスを比較すると、それほど大きな「先手有利」の差が示されているとは言えず、ややチェスのほうが「先手有利」程度なのかも知れません。
人間のゲームとしての地位は、まだまだ続いているようです。
さてさて、皆様はどう思われますか。