先週は「日本語の授業・実況中継」と題して中級文法の授業の進め方を紹介しましたが、今回は語い指導の方法についてです。
(先週の記事はコチラ ⇒ 「日本語の授業・実況中継 1-1」)
語い指導(中級レベル以上)の授業準備は、この4冊の小学生向け国語辞典から始まります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/bd/71042cf1a00bdf96ab174fa6e3a61755.jpg)
例えば、「自慢(する)」という言葉を教えたい場合、まずそれぞれの辞書の「自慢」に関する記述に目を通します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/aa/16555030f723c15ef4128e54f89d3742.jpg)
「自分のことや自分に関係のあることを他の人にほこること」(「ほこる」が未習語)
「自分のことを他人に示して、得意になること」「自分のことや自分のものを、とくいになってしゃべったり、見せたりすること」(「サッカーが得意です」の「得意」は理解できても、「得意になる」が難しい)
一番わかりやすいのは「自分のものや自分のことを、自分でほめること」なので、それらしい絵を添えて、これを「自慢」の定義として使うことにします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/37/620d915b15d4baab893bd2de5e1f4d61.jpg)
次に、例文をチェックすると…
「自慢話」「自慢の作品」「妹は自分のかいた絵を自慢している」「成績を自慢する」「うでまえを自慢する」が出ています。
「こと」を自慢する例文は、シンプルでわかりやすい「成績を自慢する」で決まりです。
口頭で「テストで100点をとったことを―」なども付け加えます。
「もの」の自慢は「妹は自分のかいた絵を―」がよさそうですが、学生たちにとってあまり身近な例とは言えないので、「Aさんは恋人にもらったバッグを自慢している」に変えました。
最後に、「でもね、あまり自慢はしないほうがいいですよ~。どうしても自慢したいときは、笑顔で『ちょっと自慢してもいいですか?』と聞いてから、自慢してください!」と教えます。
二つ目の例は「費用や時間を使う」という意味の「かける」です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/43/ebc1b653bd99a94cc5e24ee131278b2e.jpg)
「皆さんは何にお金をかけますか」「何に時間をかけますか」と質問をし、お金や時間をかける対象には「~に」という助詞を使うことを意識させます。
いくつか答えを引き出した上で、例文「夕食の準備に時間をかける」「趣味にお金をかける」を表示します。
このとき、他動詞「かける」と対になる既習の自動詞「かかる」にも触れ、「~がかかる」「~をかける」という助詞の違いを確認した上で、いくつか文を言わせます。
ここで、多義語としての「かける」の復習もしておきたいですね。
「何をかけますか」と質問すると、「待ってました~」とばかりに、さまざまな答えが返ってきます。
「電話をかけます」から始まり、「めがねをかけます」「しょうゆをかけます」「カレンダーをかけます」などなど。
最後に水色の部分を表示し、学生からは出にくかった「声を/心配を/迷惑をかけます」などの説明を加えて終了です。
三つ目の例は「つまずく」です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/1c/461747ac956fb11c33bda89f050df953.jpg)
こういう動作を表す語句は、やはりイラストを見せて理解させるのが一番です。
「石につまずく」「階段でつまずく」で、「[もの]につまずく」「[場所]でつまずく」という助詞の使い分けを押さえます。
そして、「つまずいて、ころんでしまいました」では、「つまずいて」という「て形」の確認をします。
応用練習として、「駅の階段でつまずいて、ころんで、けがをしてしまいました」のような長い文を作らせてみるのも面白そうですよね。
* * * * *
学生たちは、その日に学ぶ新出語句に母語訳をつける作業を前日の宿題としてやってきます。
時間も限られているため、授業で扱うのは、使用頻度の高い重要語句や使い方が難しい語句だけです。
ただし、使い方がそれほど難しくなくても、日常生活の中で耳にする機会の多い語句、使用する可能性が高いと思われる語句については必ず取り上げるようにしています。
今回の例でいうと、二つ目の「かける」のような語句です。
このとき、学んだ言葉を使って例文を作らせると、若者らしい自由な発想から、こちらの想像をはるかに超えた、驚くほど興味深い文が生まれたりもします。
(学んだ「文型」を使った例文作りは、使える状況や語彙に一定の制約がかかる場合もあるため、自由度が低くなります。)
また、その言葉を含む2~3往復の対話文をペアで考えさせ、全体の場で発表させるのも楽しいですよ。
クラスの雰囲気が一気に盛り上がります。
伸び伸びと「言葉の海」を泳ぎ回っている学生たちの姿は、やはり見ていて気持ちがいいです。
学生たちに泳ぎ方を教え、溺れそうになっている学生がいたら手を差し伸べる。
それが日本語教師の仕事なのかも…。
(*^^*)
(先週の記事はコチラ ⇒ 「日本語の授業・実況中継 1-1」)
語い指導(中級レベル以上)の授業準備は、この4冊の小学生向け国語辞典から始まります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/bd/71042cf1a00bdf96ab174fa6e3a61755.jpg)
例えば、「自慢(する)」という言葉を教えたい場合、まずそれぞれの辞書の「自慢」に関する記述に目を通します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/aa/16555030f723c15ef4128e54f89d3742.jpg)
「自分のことや自分に関係のあることを他の人にほこること」(「ほこる」が未習語)
「自分のことを他人に示して、得意になること」「自分のことや自分のものを、とくいになってしゃべったり、見せたりすること」(「サッカーが得意です」の「得意」は理解できても、「得意になる」が難しい)
一番わかりやすいのは「自分のものや自分のことを、自分でほめること」なので、それらしい絵を添えて、これを「自慢」の定義として使うことにします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/37/620d915b15d4baab893bd2de5e1f4d61.jpg)
次に、例文をチェックすると…
「自慢話」「自慢の作品」「妹は自分のかいた絵を自慢している」「成績を自慢する」「うでまえを自慢する」が出ています。
「こと」を自慢する例文は、シンプルでわかりやすい「成績を自慢する」で決まりです。
口頭で「テストで100点をとったことを―」なども付け加えます。
「もの」の自慢は「妹は自分のかいた絵を―」がよさそうですが、学生たちにとってあまり身近な例とは言えないので、「Aさんは恋人にもらったバッグを自慢している」に変えました。
最後に、「でもね、あまり自慢はしないほうがいいですよ~。どうしても自慢したいときは、笑顔で『ちょっと自慢してもいいですか?』と聞いてから、自慢してください!」と教えます。
二つ目の例は「費用や時間を使う」という意味の「かける」です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/43/ebc1b653bd99a94cc5e24ee131278b2e.jpg)
「皆さんは何にお金をかけますか」「何に時間をかけますか」と質問をし、お金や時間をかける対象には「~に」という助詞を使うことを意識させます。
いくつか答えを引き出した上で、例文「夕食の準備に時間をかける」「趣味にお金をかける」を表示します。
このとき、他動詞「かける」と対になる既習の自動詞「かかる」にも触れ、「~がかかる」「~をかける」という助詞の違いを確認した上で、いくつか文を言わせます。
ここで、多義語としての「かける」の復習もしておきたいですね。
「何をかけますか」と質問すると、「待ってました~」とばかりに、さまざまな答えが返ってきます。
「電話をかけます」から始まり、「めがねをかけます」「しょうゆをかけます」「カレンダーをかけます」などなど。
最後に水色の部分を表示し、学生からは出にくかった「声を/心配を/迷惑をかけます」などの説明を加えて終了です。
三つ目の例は「つまずく」です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/1c/461747ac956fb11c33bda89f050df953.jpg)
こういう動作を表す語句は、やはりイラストを見せて理解させるのが一番です。
「石につまずく」「階段でつまずく」で、「[もの]につまずく」「[場所]でつまずく」という助詞の使い分けを押さえます。
そして、「つまずいて、ころんでしまいました」では、「つまずいて」という「て形」の確認をします。
応用練習として、「駅の階段でつまずいて、ころんで、けがをしてしまいました」のような長い文を作らせてみるのも面白そうですよね。
* * * * *
学生たちは、その日に学ぶ新出語句に母語訳をつける作業を前日の宿題としてやってきます。
時間も限られているため、授業で扱うのは、使用頻度の高い重要語句や使い方が難しい語句だけです。
ただし、使い方がそれほど難しくなくても、日常生活の中で耳にする機会の多い語句、使用する可能性が高いと思われる語句については必ず取り上げるようにしています。
今回の例でいうと、二つ目の「かける」のような語句です。
このとき、学んだ言葉を使って例文を作らせると、若者らしい自由な発想から、こちらの想像をはるかに超えた、驚くほど興味深い文が生まれたりもします。
(学んだ「文型」を使った例文作りは、使える状況や語彙に一定の制約がかかる場合もあるため、自由度が低くなります。)
また、その言葉を含む2~3往復の対話文をペアで考えさせ、全体の場で発表させるのも楽しいですよ。
クラスの雰囲気が一気に盛り上がります。
伸び伸びと「言葉の海」を泳ぎ回っている学生たちの姿は、やはり見ていて気持ちがいいです。
学生たちに泳ぎ方を教え、溺れそうになっている学生がいたら手を差し伸べる。
それが日本語教師の仕事なのかも…。
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