ハノイは久しぶりに朝から雨。木の葉っぱにこびりついたホコリを洗い流すほどではなく、ドロドロにして垂れそうになるくらいの量だからよけいにキタナくなる。もっと続けて降ればブレードランナー的世界になるのだが、今は雨季じゃないし。コノ寒くてジトジトした裏ベトナム的気候が2月まで続く。
で、コレはきのうの夜に見た映画。シゴトの後の半分シゴトの続きのつまらぬ付き合いを断って見に行ったカイがあった。こういうのを見ると、映画って、、ホントにいいもんだと思ったりして。あり得ない話をホントに起きているコトのように見せてくれる。
話はアメリカの田舎町の鉄道模型屋でスタート。小さな、といってもアレは何とかという病気で身長が極端に低いオトコと、もう一人は極端に背の高いジャイアント馬場のような雰囲気のオトコがその店をやっている。ある朝大きな物音がしたかと思ったらその馬場さんのほうが床に倒れていて、突然死んでしまった、らしい。どうして倒れたとか、病院に行ったのかとか、そのあとの店の経営はどうなったのか、そういう細かな話の展開は完全に省略されていて、どうやら店は閉めて、小さなオトコのほうは鉄道の近くの、むかしは駅長室だったような廃屋に引っ越しをする。どうしてそこに引っ越せたのかとか、賃貸か、とか、そんなよけいな話はない。
そのオトコは他人との付き合いをまったくしないで朝から晩まで線路の上を歩いて、時々列車が通り過ぎるのを見たり、図書館に行って鉄道の本を借りてきて公園で読んだりしている。で、オトコの住んでいる小屋のすぐ前に車でコーヒーとかを売る若い威勢のいいオトコが毎日来て、その小さなオトコにいろいろ話しかけるが、メンドクセ、みたいな感じで日々が過ぎていく。
で、ある日オトコが道を歩いていると向こうからビジンが運転する車が来るのだが、そのビジンは携帯電話かなんかしながら極端にダコウしながら走ってきて、、オトコを跳ね飛ばしそうになる。ビジンは大げさにアイム総理、とか言うがオトコは、ま、いいからほっといてくれ、みたいにして立ち去る。
でまた別の日にオトコが歩いていると今度はコーヒーを飲みながら、それをこぼして、あららーみたいにしてまたダコウしてビジンのクルマが走ってきて同じようにはね飛ばしそうになる。このへんはお笑い。
おわびのしるしにビジンがオトコの家にウィスキーかなんか持って行くと、飲み過ぎてビジンは一晩泊ってしまう。で、オトコとクンズホグレツになるかと思うとそんなことはなく、オトコは浴槽で寝る。その結果オトコとそのビジンは親しくなってコーヒー売りのオトコも一緒になって仲良く遊んだりする。
でもって、そのビジンは2年前に小さな息子を亡くしていて夫とも別れて湖のほとりのいい家に一人で住んでいるのだが、ある日急にその別れた元夫が戻ってきてヨリを戻そうとするようなことがあってだんだんノイローゼっぽくなって、ある日、電話をしても出ないのでオトコが家に見に来たら、オマエなんかに会いたくない、みたいにワメキ散らして追い払う。ゲット・アウトの世界。
ヒトとの付き合いを避けて静かにこれまで生きてきて何の不自由もなかったオトコは、ビジンと付き合ったりコーヒー売りと一緒に飲みに行こうとしたりすることでよけいなメンドくさいモノを背負い込んでしまったと思うようになる。で、ある日コーヒー売りが会いに来た時にほっといてくれ、と言って、その後、コーヒー売りは姿を見せなくなる。
ま、そんな感じで特に大きな事件があったりするわけでもなく、ひたすら歩くオトコと、時々通る列車とが繰り返し映されるような映画。いろいろあったあとで最後はまた3人で一緒にテレビを見ている場面で終わる。早いはなし、ニンゲン関係の映画。
ヒトとの出会い、タイセツにしたいデスね、とか、ソレはナカマです、、みたいな薄ら寒いセカイじゃなくて、もっとドロドロしていてメンドくさくていろんな種類のコドクとかがあって、山あり谷ありでミソもクソもある、まあそっちのほうが普通のセカイだと思うが、そういうサワヤカじゃないところの薄い油の膜のようなニンゲン関係をおもしろく見せてくれた、かなと。
監督はThomas McCarthy。ビジン役は名女優Patricia Clarkson。同世代。キレイな背中を見せてくれる。2003年アメリカ映画。
詳しくはコッチで。