北村薫先生のいわゆる「私のベッキーさん」シリーズ3部作とは以下の3作品。
1作目「街の灯」 (虚栄の市 銀座八丁 街の灯の3短編収録)
2作目「玻璃の天」 (幻の橋 想夫恋 玻璃の天の3短編収録)
3作目「鷺と雪」 (不在の父 父と地下鉄 鷺と雪の3短編収録)
戦前の昭和初期の帝都、東京。
日本経済の一翼を担う「花村財閥」のお嬢様の英子とその運転手ベッキーさん(別宮みつ子)を主人公に様々な事件(それこそ事件から、小さな暗号)を解決していきます。
この物語は謎解きのミステリーとしても面白いのですが、なんと言ってもその時代背景でしょう。
我々知るべくも無い、当時の華族・士族のなどの上流階級の暮らしぶり、恋、苦悩、そして文学や古典などの教養世界が巧みストーリーの伏線として張られていきます。北村先生の徹底的な時代考証によりもう、圧倒的な説得力によりそのお公家様たちの暮らしぶりが再現されていきます。
昭和7年の「五・一五事件」の起きた帝都が舞台の「街の灯」では英子の運転手としてベッキーさんが配属され、その文武両道の彼女の才により様々な事件を解決していきます。今後のシリーズに登場する重要人物たちもここで紹介されていきます。特に桐原侯爵家の長男桐原大尉とのベッキーさんのエピソードは胸をすくようなお話。
もちろん、題名の「街の灯」はチャールズ・チャップリンの名作から。チャップリンの自伝にもこの日本での「五・一五事件」にふれています。
次作の昭和8年が舞台の「玻璃の天」では、主軸のストーリーと並行して才色兼備の主人公ベッキーさんのなぞめいた過去がラストに明らかにされます。ここでも、桐原大尉はベッキーさんへの恋心か尊敬の念か武人の誇りをみせ、3作目の伏線を張ります。伏線と言えば、語り部の英子お嬢様の若月少尉への淡い恋心もここで語られます。3作目ラストへの本当に重要な伏線となります。
そして、完結編昭和9年から11年を描く「鷺と雪」ではまだ、ほのぼのした語り口を残しつつも着々と戦争へ向かっていく日本の姿が描かれています。(二・二六事件のあたりまで)
いずれ、そう遠くない将来終わるであろう「お公家様」と「軍属」を頂点とした日本社会が崩壊することを知っている現代の我々が読むだけに緊迫感はよりいっそう盛り上がります。
ベッキーさん(使用人)と桐原大尉(支配者)は身分の差を越えて、お互いを尊敬しあっている故、隠れた薄暗い場所で日本の将来を語り合うエピソードは胸をうちます。
そして、英子がほのかな恋心をよせる若月少尉への切ないラストなどはもう、ミステリー好きだけなく歴史好きもただただ唸らせるストーリーテリングといえるでしょう。
ちなみに誰かが解説した評論に昭和7年をばっさりと「暗い時代」と表現した人がいましたが、果たしてそうでしょうか。
この物語も、戦争へのすすむ不気味さを表現していますが、当時の人たちに我々の現代の平成日本を見せたらそれこそ「暗い時代」に見えないでしょうか。
映画評論家の「淀川長治自伝先生自伝」も当時の暮らしぶりが良く分かりますので興味のある方は是非ご一読ください。
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ちなみにですけど、本編で触れられる日本を揺るがした「二・二六事件」のちょうど三ヵ月後・・・・・この新郷村(当時は戸来村)へ竹内巨麿と鳥谷幡山らが訪れ「キリスト渡来伝説」を説きました。
日本帝国が崩壊へと動きだしていく時、まさにここ新郷村では「キリスト渡来伝説」産声をあげたと言えるでしょう。
1作目「街の灯」 (虚栄の市 銀座八丁 街の灯の3短編収録)
2作目「玻璃の天」 (幻の橋 想夫恋 玻璃の天の3短編収録)
3作目「鷺と雪」 (不在の父 父と地下鉄 鷺と雪の3短編収録)
戦前の昭和初期の帝都、東京。
日本経済の一翼を担う「花村財閥」のお嬢様の英子とその運転手ベッキーさん(別宮みつ子)を主人公に様々な事件(それこそ事件から、小さな暗号)を解決していきます。
この物語は謎解きのミステリーとしても面白いのですが、なんと言ってもその時代背景でしょう。
我々知るべくも無い、当時の華族・士族のなどの上流階級の暮らしぶり、恋、苦悩、そして文学や古典などの教養世界が巧みストーリーの伏線として張られていきます。北村先生の徹底的な時代考証によりもう、圧倒的な説得力によりそのお公家様たちの暮らしぶりが再現されていきます。
昭和7年の「五・一五事件」の起きた帝都が舞台の「街の灯」では英子の運転手としてベッキーさんが配属され、その文武両道の彼女の才により様々な事件を解決していきます。今後のシリーズに登場する重要人物たちもここで紹介されていきます。特に桐原侯爵家の長男桐原大尉とのベッキーさんのエピソードは胸をすくようなお話。
もちろん、題名の「街の灯」はチャールズ・チャップリンの名作から。チャップリンの自伝にもこの日本での「五・一五事件」にふれています。
次作の昭和8年が舞台の「玻璃の天」では、主軸のストーリーと並行して才色兼備の主人公ベッキーさんのなぞめいた過去がラストに明らかにされます。ここでも、桐原大尉はベッキーさんへの恋心か尊敬の念か武人の誇りをみせ、3作目の伏線を張ります。伏線と言えば、語り部の英子お嬢様の若月少尉への淡い恋心もここで語られます。3作目ラストへの本当に重要な伏線となります。
そして、完結編昭和9年から11年を描く「鷺と雪」ではまだ、ほのぼのした語り口を残しつつも着々と戦争へ向かっていく日本の姿が描かれています。(二・二六事件のあたりまで)
いずれ、そう遠くない将来終わるであろう「お公家様」と「軍属」を頂点とした日本社会が崩壊することを知っている現代の我々が読むだけに緊迫感はよりいっそう盛り上がります。
ベッキーさん(使用人)と桐原大尉(支配者)は身分の差を越えて、お互いを尊敬しあっている故、隠れた薄暗い場所で日本の将来を語り合うエピソードは胸をうちます。
そして、英子がほのかな恋心をよせる若月少尉への切ないラストなどはもう、ミステリー好きだけなく歴史好きもただただ唸らせるストーリーテリングといえるでしょう。
ちなみに誰かが解説した評論に昭和7年をばっさりと「暗い時代」と表現した人がいましたが、果たしてそうでしょうか。
この物語も、戦争へのすすむ不気味さを表現していますが、当時の人たちに我々の現代の平成日本を見せたらそれこそ「暗い時代」に見えないでしょうか。
映画評論家の「淀川長治自伝先生自伝」も当時の暮らしぶりが良く分かりますので興味のある方は是非ご一読ください。
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ちなみにですけど、本編で触れられる日本を揺るがした「二・二六事件」のちょうど三ヵ月後・・・・・この新郷村(当時は戸来村)へ竹内巨麿と鳥谷幡山らが訪れ「キリスト渡来伝説」を説きました。
日本帝国が崩壊へと動きだしていく時、まさにここ新郷村では「キリスト渡来伝説」産声をあげたと言えるでしょう。