傾聴ボランティア~緩和ケアにて~

~薬剤師・社会福祉士による小さなボランティア活動~

緩和ケアへの入り口

2005年11月29日 | 在宅ホスピス
どうしてこの道へ入ったのかと、先日質問をいただいたので、ブログで回答します。


私は某製薬会社の臨床開発部で抗がん剤の開発を担当していました。

ある時企画部の方が、日本で発売されていないそして開発も着手されていない、とあるがん性疼痛緩和薬の情報を片手に現れました。

「おぅ、ゆきぃ!この薬なイケルと思うねん。開発コストとスケジュール、がっとで出してや。
・・・そんな怖い顔せんと。ざっくりでええから。
・・・上司ぃ?あぁ、後で言うとくわ。んなよろしく頼むでぇぃ!!」

(注:全員がこんな馴れ馴れしいことばで話しているわけではなく、この方一人だけです!)

私は開発の計画などを担当していましたから、開発計画の素案を考え、コスト、スケジュール、ヘッドカウント、スケジュールに沿った人件費をはじきだします。

別にマーケティング部が売り上げを予想します。

そうやって開発にかかる費用と売り上げ予測を天秤にかけ、GOなのかNO GOなのかをBOSSが決めます。

開発計画の素案、といってもただ机の上で考えているわけではありません。

開発したヨーロッパの別会社と頻繁にコンタクトをとり、薬と欧州での試験内容に関する情報をとことん聞きだします。

そして新しいことをするときはその道の達人に聞くのが筋です。

そこで某大学病院医学部麻酔科のM先生にアポイントを取り、ヨーロッパの会社から得た情報を持ってご意見を伺いにいきました。

そのM先生はとても熱心に緩和医療に取り組まれ、身を削る思いをしながら診療にあたり、さらによりより緩和医療の普及に努めておられました。

M先生のお話を聞いて疼痛緩和の一般的な現状、問題点、そして患者さんの立場にたって改善を進める使命感に感動しました。

同時に緩和医療の役割について考えさせられました。

患者側に立たなければ治療ができない。検査では痛みは計れないから。患者の声がすべてなのだ。

そこの点に気づくと緩和医療に抱いた興味はなくなりませんでした。

そして札幌で開催された癌治療学会で、緩和ケアチームの取り組みの発表を聞きました。

詳しくは11月17日付けのブログに書いてあります。

もう私の頭の中疼痛緩和のことでいっぱいです。

そこから紆余曲折を得て、

「人生最期の時を不安と孤独から解放し、人生の全面肯定を通じた心理社会的支援を行う」

という現在のサービスにたどりついたんです。

長いようであっという間。

これからもっともっと長い月日を緩和ケアを見つめて生きていくのだと思います。