五反田発リスボン行き急行列車

五反田駅からリスボン行き急行列車に乗ることを夢想する前期高齢者の徒然

2022・4・26

2022-04-27 10:27:46 | 日記
台本には冒頭少年に扮した若い女性と初老の男が浜辺でキスするとある。それが一度だけじゃなく、続けて二度、三度、四度と二人は十分程の間にキスする。それも挨拶のキスではなくて、二人の新たな旅立ちの証拠となる熱烈な愛のキスだ。そんなシーンで始まる「パラソル」という芝居の週一で続けてきた勉強会。初老の男は俺が演じ、少年と若い女はKさんが演じる。先週まではホンヨミに徹してきた。台詞も全部覚えた。そして今日からは立ち稽古だ。でも、ここで問題が発生する。キスの真剣度だ。特に少年は愛を請い求めるように初老の男の唇を求める。台本を読んで貰って出演交渉する段階で、キスするシーンが多いことはKさんは分かっていたし、抵抗はない筈だ。だから「堂々と」俺にキスを迫る。でも、そこで演出家としてそのキスシーンに物足りなさを感じた俺は、彼女に「もっと激しく」とか「もっと求めて」とか言ってシーンを成立させる為に要求を加熱させる。勿論まだリハーサルだし、コロナ対策的にもマスクをしたままで唇はつけていない。でも、キスをされる男と演出家が同一人物だと、うっかりするとセクハラなんてもんじゃない。おまけに経費削減の為、稽古は二人きりだ。見方をかえれば立派なセクハラだ。公演の時まで彼女の怒りを買って訴えられないように注意が必要だ。そんなことをもやもや思いながら稽古終了後母を寝かしつけてから、6時に山種美術館近くにあるご飯屋「めぐたまキッチン」で殆ど同年配の脚本家筒井ともみさんに会う。昨日会ったTさんも40年のつきあいだったが、今日のともみさんとも知り合って40年だ。数々の名作を執筆して来た彼女と凡作を辛うじて書いてきた俺とは脚本家の位が違うが、美味しいものを限りなく求め,作って食べるところで二人の利害と立ち位置と興味が一緒になる。彼女の最近のエッセイ集「もういちど、あなたと食べたい」や以前出版し映画化もされた「舌の記憶」には決してグルメではないけど彼女の「食べ物史」が書かれていて、読んでいる人間の胃袋を刺激する。この「めぐたまキッチン」は彼女と成城時代からの親友のOさんが経営するお店で、安くて美味しそうなオリジナル料理が手書きの日替わりメニューから溢れている。それらを殆ど片っ端から注文して、テーブルにOさんの好意でドンドンドンと置かれた何本かの銘酒を酌み交わしながらお喋りした三時間。昨夜に続いて今夜もいい宵だ。★テアトロジャージャン次回公演 再演シリーズ2「音楽劇 ロバくんとポニーちゃん」作演出・桃井章 音楽・荒木真樹彦  出演・棟里佳+荒木真樹彦  2022年7月5日~10日
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