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野口英世はなぜ間違ったのか(15)

2013-06-10 15:01:58 | 野口英世
黄熱病の病因学の第Ⅳ報で黄熱病患者血清を接種したモルモットで、幾つかのものは有毒株で攻撃しても生き残ったことから、黄熱病患者の血清に何かがあるのではないかと考えた。
今回示す「第Ⅴ報 Leptospira icteroides に関する黄熱病患者血清の特性(1919年5月2日受付)」では、その血清について検討している。しかし、これらは結果的にはワイル病の研究となっているのが残念である。



論文の要旨

グアヤキルで黄熱病から回復した多くの人の血清と黄熱病患者の一人から分離された Leptospira icteroides 株との免疫学的な関係を確立する目的で研究した。
この目的のため回復期の血清を有毒株の臓器懸濁液又はその微生物の培養液のどちらかと混ぜ、モルモットの腹腔に接種した(Pfeiffer 反応)。
Pfeiffer 反応を最初に研究した。接種されたモルモットは対照のモルモットが典型的な症状を示し実験的感染で死亡しても生きていた。対照モルモットは回復期の血清を加えず、同じ懸濁液又は Leptospira icteroides の培養液を接種、又は黄熱病以外の病気の患者血清を接種した。
研究した18人の回復期患者症例のうち15症例がPfeiffer 反応陽性を示した。すなわち約83%が陽性であった。
10人の非免疫兵士と二人のマラリア患者の血清は、全て陰性結果を示した。
黄熱病回復期患者の血清を受けたモルモットの幾つかは最終の致死的感染から防御された。一方、対照動物は典型的な症状を伴った感染で死亡した。
一例で、病気の2日目と10日目の血清で試験し、Pfeiffer 反応で10日目の血清では感染に対し防御したが、2日目の血清は防御しなかった。
以上の免疫反応の観察からLeptospira icteroides は病因学的に黄熱病に関係している可能性が高いと思われる。(以上)


野口はワイル病の病原体を黄熱病の病原体としていたので、この論文に書かれている「黄熱病回復期患者18人のうち15人が Pfeiffer 反応が陽性」とは黄熱病と診断した18人のうち少なくとも15人はワイル病であったことを示している。
これは当時の黄熱病の診断が如何に曖昧であったかを物語っている。確かに黄熱病とワイル病の症状は似ているが、むしろ現地ではワイル病の存在が十分知られていなかったのではないだろうか。従って黄疸が出て、出血が見られたら、全て黄熱病と診断していたのではないだろうか。野口はワイル病の存在を知っていたが、患者を診たことがあったのだろうか疑問である。
この論文にある Pfeiffer 反応(現象)は、現在ではあまり用いられていない。この反応は血清中の抗体によるものであるが、現在では血清とレプトスピラを混ぜあわせ、一定時間放置後、暗視野顕微鏡で観察することで抗体の存在を知る方法がとられている。
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