before dawn

青年海外協力隊でトンガにて活動、インドの大学で教壇に立つなどしていましたが今は母国で働いています。笑うことが一番大事。

24時間の涙

2007-12-01 18:18:29 | トンガ 青年海外協力隊活動記
結局 文集が仕上がったのは夜中の3時。
その後 学生達を 自宅まで送って、校長先生と同僚のレルと私の3人でコーヒーを飲みながら オフィスで深夜のくだらないハイテンショントークをしていたところ
ここ1週間あまりに忙しくて すっかり忘れていたことを思い出した。

なんと 同じ教員住宅にすんでいて いっつもジョークばっか言い合っていたシオネという新卒教師が
Diplomaを受け取りにトンガタプに今日行ってしまうということを!!!

この1週間 忙しすぎて朝から翌朝まで 学校に入り浸っていて 自宅に帰るのはシャワーを浴びる時だけ(2日一回)だったので シオネとゆっくり話す時間がなくて すっかり忘れていた!

しかもシオネの乗るボートは あと2時間後の5時に出航する!
運よく この日は カラプ
(お金を集めるために行われるかなり規模の大きいカバパーティー ※カバ・・・南太平洋ではとてもポピュラーなアルコールに代わる嗜好品。トンガは男性だけが飲むことを許され、毎週末、または何かイベントがあるたびにカバパーティーが開かれる。飲むと感覚が麻痺する)
がエウア高校のホールで開催されており カラプはたいてい夜明けまで続くので シオネもまだホールにいる筈!と急いで電話をする。
(オフィスからホールまでは徒歩20秒だが カバを飲んでいる人たちはちょっとおかしくなっているので 女性一人で行くのは危険のため。)

私 「シオネ!なんで行ってくれなかったの!?今日 トンガタプ(本当)にいっちゃうんでしょ?!
   そしたらもうエウアにもどってこないんでしょ?」
シオネ「あー うー キオコー??(注:酔っている)今どこにいる?」
私 「オフィスにいるから 来て! 港まで学校の車で送るから!」

と言って電話を切った後 ここ5日間の睡眠不足がたたり ふかーーい眠りに落ちた私・・・。ひどい・・・。
で、結局30分後に シオネがオフィスにやってきた。
私 「ひどい ひどい!なんで 教えてくれなかったのーー! もう会えないじゃんかあー!」
シオネ「だって キオコ めっちゃ忙しそうだったんだもん。 心の中で伝えたんだけど 届かなかった?」
私 「カセレ(便所野郎!)そんなん伝わるかよ! つーかまだお別れのプレゼントももらってないよ!」
シオネ「だからエウアにもどってこないで 本島に残って キオコを見送りに 空港にいくんだよ」

だあーーーーーーーー
そうだったの?!知らなかったー 知らなかったよー
でも そういやあ 最近やけに シオネが優しいなあとは思ってたんだよ。
眠いし びっくりしたし 船の時間も近づいてるし とりあえず そこらへんになっているバナナを一個もぎ取って 「ありがとう」といってシオネに渡し、 同僚のレルと私でシオネを港まで送った。

港まで車で3分。車の中で、いつものように 3人(3人とも教員住宅にすんでいてかなり仲良し)で下ネタとかswearを言い合った。

でも 港に着くと 急に涙がとめどなく でてきた。
何度も見てきた 早朝の船。
それに1週間後に乗る私。
シオネともうエウアの教員住宅で 笑い合うことはもうない事実。
毎日 毎日 シオネを初めとする同僚みんなで ふざけあった時間。
シオネがこの船に乗ったら 
何かが一個終わる。
そして 次にわたしがこの早朝の港に来る時は
全部が終わる。

シオネ「キオコ だいじょぶだよ また本島で会えるじゃん」
レル 「カセレ(便所野郎!) キオコは いっつもすぐ泣くんだからー!」

全て わかっていたことだけど こうやって ひとつ ひとつ と 終わりがくる。
今まで 頭ではわかっていても 現実味がなく いまいち実感がわかなかったけど
この夜 すべてが現実となった。

ああ 私は あと一週間後の 同じ時間に この島を 去るんだ。
それが どんなに辛いことか ようやく現実を帯びて 一気におそってきた。

アホのシオネも なんか涙ぐんでるし、いつもはジョークを機関銃のようにいい続けるレルも無言。
で ボート出航の時間が近づいて とりあえず シオネとは またトンガタプで会えるから といって別れ
車を出した。
でも レルが「なんか 今 学校にもどりたくないね。」というので、レルが煙草一本吸い終わるまで もうすこし港にいることにした。 車の中から 二人でシオネの乗ったボートを 眺めながら 
私とレルが作った エウア高校の歌を歌ったりした。
でも 私は 涙が 本当に とまらなくて困った。
「シオネと一緒に今年の卒業式を迎えたかったね」とレルがボソッと言って また涙が溢れてきた。
が、その瞬間 シオネの乗ったボートに むっちゃでかい馬が乗り込んで行く様が見えた。
定員50人くらいのボートに ばかでかい馬といっしょに乗って 2時間の船旅をしなければいけないシオネを思うと 笑いがとまらなかった。 ぜったい 臭いだろー  

「そろそろ行こうか」と レルが車を出したら 船の屋根の上に乗っかって 何かを叫びながら大きく手を振っているトンガ人が見えた。
「どうして深夜って ああいうアホな人がいるんだろうね・・・・・! え!? あれ シオネだよ!」
そう それは まさしく シオネだった!
「馬鹿だねー あいつ ずっと船の屋根に乗って なんか言ってたんだよ。気がつかなかったねー」
と 二人で笑いながら 泣いた。二人で 大声で「‘Ofa lahi atu!(Love you!)」とシオネに叫んだ。

泣いた。泣いた。大いに泣いた。 
で 学校に帰ったら 私の泣きっぷりが ひどかったので 校長先生が「きょうこ、今日はもう寝た方がいいよ」というので うちに帰った。 うちに帰って シオネに「あんた 馬鹿だねえ」と言いたくて 電話をしたら 言葉を発する前に 泣けてきた。
んで シオネが 「キオコには たくさん たくさん 助けられたよ。 本当にありがとう」というので
いっつもは くだんないジョークしか言わないくせに!と また 泣けてきた。
電話を切った後も あと1週間しかここにいられないということを考えると 嗚咽がでるほど涙が出てきて
わんわん泣いて 泣きつかれて いつの間にか寝ていた。
翌朝10時くらいに 目が覚めて
自分の部屋のカーテンの色が 青くて 「ああっ。よかった。あたし まだエウアにいるんだ。」と思った。
日本の私の部屋のカーテンの色は 白だから。

そんで 起きて パパイヤを食べたんだけど パパイヤを切りながら泣いた。食べながら泣いた。
ゴミを燃やしながら泣いた。洗濯をしながら泣いた。買い物に行く道で泣いた。誰かに「キオコ エー」と呼ばれるだけで泣いた。いつも見ている海を見て泣いた。1日中泣いた。たいてい土曜日は トンガ人とわいわい騒いで過ごしてきたけど 今日は一人でいたかった。

数日前、このブログで これは終わりじゃなくてスタートなんだ って書いた。
それは正しい。 今まで27年生きてきて いろんな終わりを経験して、その度にまた新しいスタートを切ってきたから、どんな別れでも 「新しい何かが始まる!」と思えた。
でも
今回は どんなに頑張っても そう思えない。
次のスタートに繋がるには、「終わり」が重過ぎる。
だから 「新しいスタートだ」なんて考えずに この苦しい終わりをありのままに受け止めて
泣くだけ泣くしかないのだろう。 それだけ 私はこの島を愛していて、島の人たちからたくさんの愛をもらったのだから。 苦しい終わりを迎えるのは その証拠だ。





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2 コメント

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Unknown (べ・ゆっこ)
2007-12-02 00:50:04
ひさしぶり。
実はたまにここをのぞいてました。
2年、早いね。
きょうこの積もり積もった2年間分の思いは
想像できないくらい大きいのでしょう。
その大きさゆえに乗り越えるのは大変なのでしょう。
私はそんなきょうこをかげからみてることしかできないけど、、

無事に日本のおうちに帰るんだよ!
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Unknown (きょん)
2007-12-09 20:24:40
>ゆっこ
帰るよー 帰ってしまうよー
今 本島にいるよ。明日トンガをたって
フィジー サモアによって帰るよ。
島を出る前 いろんなサプライズをトンガ人が企画していてくれました。

こんなに苦しい別れは なかったです。今まで。

これが 人生!
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