教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

4コマ漫画「コボちゃん」を通して視考力を養う(1)

2010年05月19日 | 教育全般
▼「5歳の眼差し」という問題
この前は「クレヨンしんちゃん」の話題に触れたので、今回はそれと相照らし合う関係にある人気漫画の「コボちゃん」を取り上げたい。あえて指摘しなくてもご存知だと思うが、「コボちゃん」も「しんちゃん」も共に5歳の男の子である。これは故意か偶然かという問題ではなく、必然なのだと私は解釈している。そして、それを私は勝手に「5歳の眼差し」の問題と捉えている。ただし、作者たちもそう思っているかどうかは分からない。

▼4コマ漫画の稀代の天才・植田まさし
「クレヨンしんちゃん」の作者・臼井儀人さんが不慮の死を遂げたとき、「コボちゃん」の作者・植田まさしさんの哀悼の言葉に注目した。あたら若き才能の早過ぎる死を誰よりも悼んだのは、「コボちゃん」の作者植田まさしさんだったかもしれない。人は人を見抜くものだから。
「コボちゃん」の作者に対する愛好者の評価は「クレヨンしんちゃん」の作者に対するものに負けず劣らず、いやそれ以上に高いとも言える。しかも、その支持は大人から子どもまでとても幅広い。しかも、「クレヨンしんちゃん」に対するPTAのおばさんのように、あからさまに敵対する人達もいない。「四コマ漫画家の中でずば抜けて面白い」「希代の天才漫画家」という評価は決して褒め過ぎとは言えない。

▼「コボちゃん」は4コマ漫画のバイブル
見方によっては、植田まさしの「コボちゃん」は4コマ漫画のバイブルなのである。言い方がダブルが、彼を評価する人は漫画愛好家だけでなはない。もしかするとこの4コマ漫画を掲載している新聞(読売新聞朝刊)の読者の多くが「今日はどんなマンガかな?」と思って真っ先に目を通しているかもしれない。そして、もしかすると…「コボちゃん」が載っているからその新聞を取り続けているなんてことも結構あったりして…。
その意味では「コボちゃん」は誰にでも愛された漫画「サザエさん」に極めて近い。ただし、「サザエさん」とは決定的な違いもある。それは、漫画「サザエさん」は良くも悪くも──それを作者がどれだけ意識していたかどうかは分からないが──純日本的で平均的な中流家庭をイメージして作られているということだ。「コボちゃん」にも似たような家族像があるにはあるが、意図しているところは全く違う。

▼「サザエさん」の「期待される家族像」的側面
かつて、天野貞祐という人が文部大臣であったとき、「国民実践要領」という冊子を出したことがある。そして、それで有名になった言葉がある。「期待される人間像」という言葉がそれだ(彼のそういう理想を具現化したものが「獨協大学」だとされる)。もし、「期待される家族像」「理想的な家族像」というものが想起されるとすれば、それは「サザエさん」一家である
「サザエさん」が変わらないのはそのためである。人も家族も社会も、本来は時とともに変化するものだが、「サザエさん」の時間は止まっていて、登場人物や家族像の変化や風化が描かれることはない。そのことからも、これは体制擁護の、現実是認派のイデオロギーの道具と見做される側面を持っている。

▼「コボちゃん」の「5歳という原点」
「コボちゃん」には「サザエさん」と同じような家族像が描かれてはいても、そういうイデオロギー的な側面はないように見える。その家庭は理想化されてはおらず、ただ彼が育つための環境として選ばれているに過ぎない。では、「コボちゃん」という漫画は人畜無害な非政治的な他愛のない漫画かというと、どうしてどうして、決してそう断言することは出来ない。人はどのような立場にいようとも──たとえば、何の意思表明をしなくても──その存在自体において政治的たらざるを得ない生き物なのだ。そういう意味においては「コボちゃん」もまた極めて政治的党派的なのである。
しかし、主人公である5歳のコボちゃんが政治的党派的であるというのは、まさにコボちゃんが「5歳」であるということにある。この点においては、奇しくも「クレヨンしんちゃん」もまた5歳であった。そして、緩やかに見れば、「コボちゃん」にせよ「しんちゃん」にせよ、本来は人(大人)への成長物語であるはずのものだが、彼らは「5歳」という原点にとどまり、そこから動こうとはしない。何故なのか。

(2)へ続く

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