「そろそろ出かけないと遅れるぞ」
「はい、でも私のいない一人っきりのお正月って寂しくないですか?」
「別に寂しくないもん、綺麗に掃除された部屋で取って置きのワインを空けて読書をしたり好きな音楽を聴いたりして優雅に過ごすさ」
「じじくさっ」
「そういう君は一体どういう正月を過ごすというんだ、大体君のことだからどうせゴロゴロと」
「あっもうこんな時間行かなくっちゃ」
「元気な顔をご両親に見せて親孝行してきなさい」
「はい、ぶちょおも良いお年を」
「君もな」
*
あー実家はいいな~上げ膳据え膳でゴロゴロできて・・・
て、東京にいても殆どそうだけどヘヘッ
「あの~蛍さんちょっとよろしいでしょうか?」
「えっ私ですか?」
「ホタルノヒカリ外伝の読者?を代表してインタビューをさせてもらってよろしいでしょうか?」
「はいはい」
「お二人はさぞや素敵なクリスマスを迎えられたことと思いますが」
「そりゃあ~もう、あのね!」
「ストップ!女性の間でも非常に好感度の高い蛍さんですが、全国のぶちょおファンから石つぶてが飛んでくるといけませんから詳しい話は割愛ということで」
「へぇ~やっぱぶちょおってもてるんですね」
「で、その後なんですがお二人は毎日ラブラブな生活を送っておられるのでしょうか」
「そうでもないんですよ」
「といいますと」
「あの夜盛り上がりすぎちゃって、朝になってお互いの顔見たらなんだか恥かしくなっちゃって、眼も合わせられないというか、テレビ見ててラブシーンがあるとなんとなく気まずくなったりするんです」
はぁ~相変わらずというか、らしいとゆーか。。。
「ぶちょおは淡白なんでしようかね」
「そんなことないと思います。
だって~凄く激しかったし

(あのクールな顔でそうなんですかい)
あんなの初めてっていうか~


(いわゆるテクがですかい^^)
私って愛されてるなって・・・
あれっインタビュアーさん、どこ行きました?まっいっか」
あーあ、ぶちょおの声が聞きたいな・・・
あーしんど、年末の疲れが出たかな、正月に風邪ひくなんて最悪だ。
ルルル・・・アホ宮
「ぶちょお~あけましておめでとうございます!」
「おめでとう、ご家族の皆さんは元気だったか」
「はい皆すこぶる元気です。ぶちょおは?」
「すこぶる元気で優雅な正月を過ごしているよ、ちゃんと親孝行するんだぞ」
「はい」
ぶちょお鼻声だったな、風邪ひいたのかな。しんどそうだったな。
それぐらい声聞けばわかりますよ。蛍さんをなめんなよ!
熱まで出てきたか・・・
それにしてもこの家ってこんなに広かったかな?
広くて寒いや・・・寝よ。
「ただいま~」
やっぱり~こんな時間に寝てるなんて。もう熱まであるじゃないですか!
頼ってくれればいいのに、水くさいんだから。
「ん?どうしたんだ、こんなに早く帰ってきて!」
「ぶちょおこそ、元気に優雅に正月過ごしているって嘘じゃないですか!
私看病しに帰ってきたんです」
「別に頼んでないもん」
「たく可愛くないな~私の前でカッコつけなくていいじゃないですか、
私声聞いただけで風邪ひいたってわかるんですよ。凄いでしょ(笑)」
「うんホント凄いな・・・ありがとう」
「お腹空きません?なんか作りましょうか?」
「いや・・・別にお腹空いてないから(腹までこわしたくないし)」
ごそごそ・・・
「これはお父さん手打ちの信州蕎麦、これはお婆ちゃん自慢の鴨の燻製、お母さんはだし汁と刻みネギまで用意してくれました。会社でお世話になっている人が風邪ひいてるから看病しに帰るっていったら、しっかり看病してきなさいって言っていろいろ持たせてくれたんです。他にもまだあるんですよ~」
「いい家族だな」
「普通の家ですよ」
君がいるだけでこんなにもこの家は温かい。。。
会社でお世話になっている人か・・・
温かい鴨蕎麦を食べながら俺は若干罪悪感を感じていた。
*
「新年早々忙しいですね~」
「仕事が忙しいっていいことよ、今年も頑張っていきましょう!」
「はーい!」
「部長、お電話です」
「あっはい、わかりました」
「部長は?」
「例のところ」
「ああ」
「例のところって?」
「お嬢様が道楽でやっているジュエリーショップのリノベーションだよ」
「なんでそんな仕事をわざわざ部長が」
「あの五大物産のお嬢様だぜ、うちの大お得意様だし、専務の姪御さんとかで、うちに仕事を依頼してきたんだけど、部長のことがえらく気にいってしまったらしい。ハーバード大を出た才色兼備の凄い美人だそうだ」
「ひょっとしてひょっとすると部長、凄い玉の輿かも」
「バーカ、部長はそんな男じゃなか」
*
「ではこれで進めさせて頂きます」
「高野さんには何度も足を運んで頂いて申し訳なかったわ、今度お食事でもご馳走させてくださいね」
「いえ仕事として当然のことをしたまでです。では失礼します」
クールな男・・・私の誘いを断るなんて・・・
燃えてきたわー!絶対に高野さんをものにするわ!
厄介な仕事が終わってやれやれだ、明日は久々に鍋でもするか。
コタツに鍋に熱燗・・・美味いんだよな~。
鍋を作るのは俺だが・・・
燗するのも俺だし・・・まっいっか(笑)
・・・次の日・・・
「あっ高野君、今日食事でもどうかな?一度会社の今後の展望について君とじっくり話がしたいと思ってたんだよ」
「はっ・・はい、喜んで(鍋が~熱燗が~)」
フランス料理?
「叔父様、高野さん」
「いやー彼女もここで友達と食事することになっていたそうだが、急に友達の都合が悪くなったとかで一緒にどうかと私のほうから誘ったんだ」
「嬉しいです、高野さんとお食事できるなんて」
「はあ・・・」
「ところで私も急なんだが、女房からメールが入ってなんか急用らしいから帰らなきゃならなくなった。申し訳ないが二人で食事を楽しんでくれたまえ、もっとも私がいないほうが楽しいかもしれんがな、ハハハ」
「まあ叔父様たら(笑)」
最悪の一日になった。。。
ルルル・・・
「今山田姐さんちで鍋パーティしてるんですよ。ぶちょおも一緒にどうですか?」
「食べてきたから遠慮しとく」
「フランス料理美味しかったですか~」
「(何で知ってんだよ)いや大したことなかった」
「それにしてもこんな時間に家にいるなんて随分お早いお帰りなんですね」
「・・・?」
「雨宮、ちょっと飲み過ぎだぞ!」
「二ツ木ー!おまえもそこにいるのか!?」
「ちゃんと送ってくから~」
「大体あれだって接待みたいなもんだろ」
「わかってるって、わかってるけど噂に沢山の尾ひれがついてな」
「はあ!?」
たく・・・どんな噂にどんな尾ひれがついてるんだよ!
*
高野さんに一緒に暮らしている女性がいるという噂は本当かしら?
あった、ここが高野さんの家ね。
あらっあの女の子誰かしら?
いやね、若い女の子がスッピンでジャージなんか着て、
嘘!あの子、高野さんの家に入ってくわ!
「ちょっとあなた!」
「はい、なんでしょう?(てゆーか誰?)」
「あなたもしかして高野さんと同居しているという女性」
「はい・・・一応」
「嘘でしょう!あなたみたいな子が高野さんの恋人だとでもいうの!化粧もしないでスッピンで変な頭してよれよれのジャージ着て、信じられないわ」
「す・・・すみません」
「いかにも彼女は俺の恋人だ」
「高野さん・・・」
「ぶちょお・・・」
「大体君はなんだ!人の家に入るのに何の挨拶も無しに、名乗りもせずに、そんな非常識な人間が初めて会った良く知らない人間を見かけだけで判断するとは呆れるね。才色兼備のお嬢様がどうした!ハーバード大がどうした!もう一度幼稚園から入り直して挨拶の仕方から教わってくるんだな」
「しっ・・・失礼しました!」
「キャーぶちょお~カッコいい~いよっ男前!だ~い好き~

」
「こら~にゃんこが見てるだろ」
「にゃあにゃあ(照れるなよぶちょお)」
「でも五大物産のお嬢さんにあんなこと言って大丈夫ですか?」
「これは仕事とは関係ないプライベートなことだ、だから問題ない・・・(と思う)」
「ならいいけど、そういえばぶちょおジャージ着て何処行ってたんですか?」
「にゃんこの散歩だ」
「にゃあ」
とは言ったもののちょっと言いすぎたかな~
「あっ高野君、今五大物産の社長がみえてるんだが、君に話があるそうだ」
「しゃっ社長がですか・・・」
「高野です・・・先日は・・・」
「君が高野君か、なるほど娘の好きそうな男前だな」
「はあ・・・」
「いや失礼、先日は娘のことを怒鳴りつけてくれたようで娘はえらく感動してたよ、もう小さい頃から蝶よ花よと育ててきたから、ただの一度も誰かに怒られたことがなくて我侭な娘に育ってしまった、君にもいろいろと失礼なことがあったんじゃないかと思う」
「いえ、明るく聡明なお嬢さんで」
「ではそう言っておくよ(笑)、ところでジャージというのは最近の流行なのか?最近娘がいつも家の中ではジャージに化粧もしないで、頭はちょんまげみたいにくくっているんだが」
「さあ・・・どうなんでしょう」
*
「ギャハハギャハハ、あのお嬢様がジャージにちょんまげって、あー可笑しい」
「こらっ笑いすぎ」
「根っからのお嬢様なんですね~それに思ったよりいい人というか、可愛い人ですね」
「だな」
「ふ~ん」
「君がそう言ったんだろ!」
「ぶちょおそっち行っていいですか、たまにはぶちょおの横顔が見たいなって」
「いいよ(笑)」
「二人でコタツ一緒に入るとちょっと狭いな」
身体が密着してちょっとドキドキ・・・
・・・・・・・ドキドキ
***気を利かせてコタツからそっと出ていくにゃんこ***
「雨宮・・・」
「はい?」
「君・・・また太ったな」
「はあ~!何なんですか~いきなり!
「そういうぶちょおこそ少し顔が丸くなったんじゃないですか!」
「そんなことないもん・・・」
「最近ジョキング始めたのはダイエットの為じゃないんですか!」
「あれは体力増進とにゃんこの散歩の為だ」
「犬じゃあるまいし、にゃんこは猫ですよ!」
「とにかくこのコタツがいかんのだ、コタツは人間を怠惰させる、よし!コタツを片付けよう」
「駄目~絶対に駄目!コタツ片付けるんならこの家出て行きます!」
「じゃあ出てけば」
***にゃあ(なんて大人げない会話してるんだ、この二人は)***
「そんなこと言うんだ~ べーだっ!大体私太ったといってもせいぜいお餅一個分くらいですよーだ」
「一個分て(笑)二個分じゃないのか~(笑)」
「そんなに疑うんなら確かめてみればいいじゃないですか!」
「ふ~ん・・・確かめてもいいんだ」
「いいですよ~」
「そっまだ日中明るいけどね」
「ん?・・・キャッ駄目!駄目です~こんなに明るいと電気消しても意味ないじゃないですか~」
「確かめてもいいって言ったのは君だよ

・・・」
もう~

end
