読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

王と言う漢字

2008-10-10 09:47:19 | 漢字

中国、殷の遺構を見ると殷の王が絶大なる権力を持っていた事が判る。権力が有っただけではなく神聖なもので有ったがその神聖性は必ずしも王が権力が有ったためではなかった。権力は神聖性のゆえに生じた。王の神聖性は王が神と人との仲介者で有った為である。従ってその神聖性が失われればその王は殺されたり、追放される事が有った。「フレーザー(金枝偏)」。ところで後漢の許慎の著した「説文解字」と言う字書に王と言う文字の字形の解釈について天、地、人を示す三本の横線を一本の縦の線が貫く事によって王を意味するものと解されているが、そうではなく、王の最初の甲骨文字の形は鉞(まさかり)の形になっている。(岩波新書 白川静著「漢字」18p図4)
三本の横に引かれた線の内、上二本は近接して書かれ、他の一本は離れて書かれているのである。「説文解字」の王についての解釈は間違いだが伝統的な王の観念を示していると言う点では間違っていない。説文解字を著した許慎時代には甲骨文字や金文の存在は知られていなかった為、「説文解字」のなかの文字字形の解釈について多く限界や間違いが有ると言われている。