goo blog サービス終了のお知らせ 

喫茶去

徒然に、日々の生活を書き留めたいと思います。喫茶去、まあ、お茶でも飲んで、のんびりしていって。

僕の死に方

2013-01-03 | 読後感



先日、レ・ミゼラブルを観にいった時、
始まるまで時間があったので、
エアポートウォーク内の紀伊国屋書店へ行き、
見つけて買ったもの。

「最後まで仕事を続けたい」という願いを叶えるために、
仕事関係者はもちろん、友人や知人にも
自分の病気のことを隠していたのだそう。
事実を隠しているが故に
つかなければならない嘘の数々に、
金子さんは常に心を痛めた。
そこで、これまでのことをまとめ、
お詫びとお礼に代えたいと
自分の死後に出版してほしいと、
亡くなる1か月前にこの本の制作は始まったのだそう。

仕事は自分の中での唯一の支えだった、
生きる希望だったと書いている。
私も白血病になった時、
仕事を辞めようとは思わなかった。
仕事をしていることで社会とつながり、
孤独にならずにすみ、病気を忘れることができた。
社会とのつながりの中で生かされ、頑張れたと思う。
金子さんも、
仕事をしている時は、集中しているため、
病気のことを忘れることができた、
死の恐怖と直接向き合わずに済むと書いている。

病名を告知され、
呼吸器外科ではトップクラスの大学病院を受診したり、
有名ながん専門病院、実績のある大学病院等
病院をハシゴしたと書いている。
書類やスキャン画像に目を落としているだけで、
自分の目を一顧だにしてくれず、実にそっけなかった。
治療しようという意志が、まったく感じられない言い方だった。
病名を告げただけで、「うちではできない」と
門前払いする大病院もあったと。
大岡昇平の小説「野火」に出てくる野戦病院のような
戦線に戻ることができる可能性のある兵士だけを治療し、
戻れる可能性のない、戦力外の者は治療しないという、
戦争中だから許された悲惨な行為を
現在社会の大病院が、平然とやっていると。
あの温和そうな金子さんにこう書かしめている。

そんな時、先輩の紹介で受診した
GクリニックのH先生から
患者の立場になって声をかけられ、
今までは、患者ではなく、「モノ」として扱われていたが
「人間」として扱ってくれたと。
また、H先生から在宅終末医療にも対応している
NクリニックのN先生と
看護師で医療コーディネーターのSさんを紹介される。
医師に求めるのは医療技術の前にまず、
「信頼」や「人柄」だったと。
N先生やSさんに会って、病気である自分を
ありのまま受け入れてもらえているのだという
安心感を日常的に得ることができた。
話をしているだけで、痛み、不安などが軽減されていくと。

最後に奥様が、
「金子は自分の闘病を通して、
多くのことを体験し、学んでいた。
常に、今、与えられている環境で、

全力で前を向いて生きていた。」と

生きる姿勢・死に方はさることながら、
訪問看護師を生業としている者として
この本から多くのことを学ばせてもらった。


『僕の死に方
エンディングダイアリー500日
著  者:金子哲雄
出版社:小学館

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする