狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

山田風太郎「戦中派不戦日記」から

2009-09-10 20:46:07 | 怒ブログ
      解説
           橋本治
 これは、今から四十年前に書かれた、四十年前の一青年による、四十年前の記録である。
"解説"などという二文字を麗々しくも掲げるのなら、この二点に触れなければならないだろう。四十年前にこうであった、ということと、四十年前にこういう記録を綴ったその青年のことと。(以下略)

九月十日(月)曇時々晴暑し
○近頃バスの混雑言語に絶す。すでにわが村を通過するとき満員にて乗れず。八鹿まで歩いて出て、切符前日申告して夕帰る。
○戦争中の日本は、偏していたかも知れないが、少なくともまじめであった。
 敗戦後の日本はこの最後の徳さえ失ってしまった。この数日、十数日、日本に乱舞しているのは――僕は言論のことをいうのだがただ軽薄の一語につきる。いい大人が汗水たらして軽薄のかぎりをつくしている。