狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

ある政治家の本から

2008-12-06 22:43:03 | 怒ブログ
         

 余談になるが、古書店を歩くのは、私の趣味の一つであった。神田の書店街も大体の略図は今でも頭に描くことができる。しかしそれは昭和時代の頃の街並の姿で、今では大分変わってしまっているかも知れない。いや、当然変わっているだろう。また今は神田まで行って本を捜すような暢気な時代ではなくなってしまった。
 私の住む村から車で30分ぐらいで行ける隣市は、学園都市の別名でも知られているように、嘗ては数え切れないほどの古書店(古本屋)があった。大概の本は見つかったし、頼めば必ず取り寄せてくれるような良き(?)時代があった。最近行ったことはないが、大分廃れてしまっているのではあるまいか。殆どがネット販売に変わってしまった所為だと思う。

 店頭に並んでいる古本を眺めて歩くのは、ネットで探すのとは全く違った楽しみがある。いろいろの本を、手に取って眺めることができるからである。
 上図は、一昔隣市の古本屋で求めた、ある著名な政治家の著書の中に挟まっていた封書で、隠れてしまっている部分の書き出しはこうだ。
 
謹啓
 夫○○ ○○郎永眠の祭は
御懇篤なる御弔辞を頂きかつまた
ご鄭重なる御弔辞を賜りまして
御高志のほど誠に有り難く厚く御礼
申し上げます      本日
○○院殿○○○○○○○大居士
百ヶ日忌に当たりますので追善も法要
を相営みました
 就きましては供養の印までに
故人最後の出版物となりました
「政治家の方丈記」をお届け申しあげます

つまりこの本は、故人の百ヶ日追善供養に参列者に差し上げたもので、封書の差し出し人は故人の令夫人であった。
468頁の豪華な装丁で、勿論非売品である。
古本の中には、贈呈先の名前と、著者の署名入りのものもあり、稀に便せんに記した贈呈先宛の手紙などが挟まっていることがある。
こうした本の流通経路は分からないが、こういう本に出会うと、ふと様々な思いが脳裡に浮かぶのである。