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新テロ特措法案をめぐって ~「暴走」と「監視」

2007年10月19日 | 憲法
■ 監視体制

 福田内閣は17日、「新テロ特措法案」を閣議決定しました。そして18日の衆議院の議院運営委員会で、23日からの審議入りが了承されました。
 さて、この新法案で最も気になるのは、活動に対する監視体制の問題です。

 これまで活動内容については国会の「承認」が必要とされてきました。自衛隊が遠く離れたインド洋で実際にどういう活動をしているのか、それは適切なのか、という監視を、「国権の最高機関」である国会が、曲がりなりにも担ってきたわけです。
 しかし新法案では「(事後)報告」だけで良いということになっています。これは言うまでもなく、野党が過半数を占める参議院で「承認」を得られないことを恐れたものですが、「報告」だけということになれば、違法な活動がないかを監視するのは政府だけということになりかねませんし、不都合な事実も国会に対して「報告」するかどうかという点も疑問です。

■ 6年前の暴走

 このインド洋派遣について、私は6年前の事件を思い出します。
 「9・11テロ」の10日後、自民党元幹事長の野中広務氏の事務所に1本の電話がありました。その電話の主は海上自衛官の奥様からのものでした。
 「夫が乗った船がインド洋へ向けて出発しましたが、先生はそのことをご存じですか。」
 野中氏はすぐに当時の官房長官、つまり福田康夫氏に電話をし、「こういう情報があるが、何か聞いているか」と尋ねましたが、福田氏も当時の防衛庁長官もそのことを知らなかったそうです。調べたところ、それが事実であったことが分かり、慌てて引き返させたということでした。
 その後、その艦は現場の指揮官の独断によって行動していたことが分かりました。法的根拠もなく、命令もなく、日本を離れ、遠くインド洋まで「米軍のお手伝い」に向かったのですから、とんでもない「暴走」です。
 その「暴走」を、ときの首相や官房長官はもちろん、防衛庁長官ですら把握できていなかったのです。
 現場の「暴走」を政府が監視しきれないということは、そのときの当事者であった福田首相も、その事件の数ヵ月後に防衛庁長官になった石破防衛大臣も、正に身をもって知っているはずです。

■ 隠蔽と追認

 さらに問題なのは、野中氏が引退して語り始めるまで、このときの「暴走」について政府が隠蔽してきたという点にあります。
 野中氏の話によれば、前述の艦船が帰港したのは3日後のことでしたので、結果的に政府は「暴走」を止めたことになりますが、「暴走」の責任者である指揮官がどのような処分を受けたのか、どのような再発防止策をとったのか、といった当然のことですら明らかにされていません。
 そればかりか、これを追認するかのように現行の「テロ特措法」を成立させ、「米軍のお手伝い」のために海自の艦船を次々とインド洋に送り出していったのです。
 加えて、現地で給油した米軍等の艦船がイラク攻撃を行っていたという「転用」疑惑が、次々と浮上しています。しかもその出所は米軍の記録や米軍関係者の発言などです。莫大な戦費に苦しむ米国にしてみれば、数億ドル分の燃料を「タダ」でくれる「戦争のスポンサー」を失いたくありませんので、火消しに躍起になっていますが、その度に新しい証拠や証言が出てきています。
 この「転用」疑惑については、実はイラク開戦直後から国会でも追及されてきました。対する政府の答弁は「各国には趣旨を説明する文書を出したので、転用はないと思う。」の一点張りでした。「監視したのか」という再質問に対しては、「信頼して大丈夫だと思う」と、ただ「希望的観測」を繰り返すのみでした。
 監視し、国会に「承認」を求める必要があったときでさえ、政府の監視体制はこのような有様でした。「承認」が「報告」だけで良いということになれば、一体どうなってしまうのか、分かったものではありません。

■ 国会対内閣

 私は、本当に情けない思いに駆られることがあります。
 それは、与党の国会議員が足並みを揃えて、この新法案を推し通そうとしていることです。
 「三権分立」は、国会・内閣・裁判所が互いに監視し合うという仕組みであることは言うまでもありません。国会と内閣で言えば、国会による内閣不信任決議、内閣による衆議院解散については授業で習うところですが、「国権の最高機関」である国会は、衆議院では「決算行政監視員会」、参議院では「決算委員会」「行政監視委員会」という委員会が常設されるほど、行政府の監視に重点を置く傾向にあります。選挙を通じて直接、国民の負託を受けた国会議員が、直接選ばれていない内閣や官僚の行うことを監視するという点において、民主主義的観点から大変良いことだと思います。
 しかし今回の法案は、活動についての監視という国会の責務なり権限を放棄させ、内閣に「白紙委任状」を差し出せ、という中身なのです。これは、民主主義のあり方を問われる問題であり、「与党対野党」という構図以前に「国会対内閣」という問題であるはずです。
 新法案を積極的に推進しようという国会議員に、果たして「国権の最高機関」である国会の一員たる自覚があるのでしょうか。直接、国民の負託を受けた「国民の代表者」たる気概は失われてしまったのでしょうか。
 もし、それに気付かない国会議員がいるならば、国会議員としての資質を問われるべきでしょうし、国民からの負託よりも「党が決めたから」を優先する議員であれば、議事堂を去ることも考えて頂くべきだと思います。

 内閣に「白紙委任状」を渡すような国会議員は、自分たちが最も監視しなければならない対象である内閣が「暴走」したときも、それを止めることができないことは明らかなのですから。

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2 コメント

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はじめまして (三介)
2007-10-28 14:07:17
仲@ウキウキさんや鳥居さんのサイト見てきました。
自衛隊の暴走は、政府を超えて?、ずっと前に始まっていたんですね。既成事実を作り、オイオイ追認させていくという手法。いまだにやろうとしているとは。ジエイタイ独自の判断というより、米軍からの依頼[弄い]もあったのでは? 政府は後で事後的に、知らされるというパターンだったのか?
極ごく一部は知らされていたのか?
イズレニセヨ、の中氏は、どういう意図で、この件をリークしたのか? 気になるところです。

では、今後とも宜しくお願いいたします。


「暴走」と野中広務氏 (goo-needs)
2007-10-30 11:29:10
三介様

 こちらこそはじめまして。goo-needsと申します。
 コメントをお寄せ頂き、ありがとうございます。

 まず、自衛隊の「暴走」の件について補足させていただきます。その艦艇(野中広務氏によれば「イージス艦」)が日本(横須賀)を後にしたのは9月下旬でした。米軍のアフガン攻撃の開始が10月7日ですから、それよりも以前のことになりますが、その頃、アフガン攻撃のために同じ横須賀からインド洋に向かった艦艇がありました。米軍の空母・キティホークです。
 そうした状況から、「暴走」した自衛隊艦艇とキティホークとは何らかの形で連動していたと見て間違いないでしょう。
 野中氏らに「暴走」を止められた自衛隊はその後もあきらめず、米国政府に対し「イージス艦を派遣するよう日本政府に圧力をかけてほしい」と要請し、これも問題となりました。
 やがて政府は「居住性」を理由にイージス艦派遣を決め、自衛隊のあるまじき「暴走」を政府が追認した形になりました。

 さて、この「暴走」をリークした野中氏の意図についても触れさせて頂きます。
 野中氏が「悪役」を演じさせられた小泉政権時代は、テロ特措法・イラク特措法・有事法制など、戦後防衛政策の転換期でもありました。
 野中氏は終戦当時19歳であり、召集令状によって徴用された経験もあります。かつて幹事長代理だったときに、国会で「私たちのような古い苦しい時代を生きてきた人間は、再び国会の審議が、どうぞ大政翼賛会のような形にならないように若い皆さんにお願いをして…」と語ったことは有名ですが、国会だけでなく、内閣や自衛隊までもが続ける「暴走」に警鐘を鳴らしたかったのかもしれません。

 以上、雑駁な説明で恐縮ですが、こちらこそ今後とも宜しくお願い致します。

goo-needsより

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