恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

普天間判決を「偽装」する防衛省

2008年06月29日 | 基地・有事体制
■ 普天間爆音への「断罪」

 沖縄の普天間飛行場の騒音に苦しむ周辺の住民が、国に対して損害賠償と夜間から早朝の飛行の差し止めなどを求めていた裁判で、那覇地裁沖縄支部は26日、騒音の違法性を認め、国に損害賠償を命じました。

 判決では、飛行差し止めについては認めなかったものの、騒音と原告らの精神的被害との因果関係を認め、04年の沖縄国際大学米軍ヘリコプター墜落事故や、その後も続く住宅地上空のヘリ飛行によって住民の精神的被害を増大させたと判断しました。
 そして、普天間飛行場そのものに対して「国が主張するような極めて高度な公共性や公益上の必要性があると評価できない」とも述べました。

 この判決内容について原告団は「普天間初の被害認定」「米軍の爆音を断罪」などと書かれた垂れ幕を掲げました。

■ 防衛省による「偽装」

 一方、判決には政府も素早く反応しました。
 防衛省は、判決後ただちに、中江大臣官房長の談話を発表し「飛行差止請求及び将来分の損害賠償請求について国の主張が認められた」ことを強調するとともに、訟務管理官による「普天間基地騒音差止等請求事件(1・2次)の一審判決について」という文書を関係する各方面に配布しました。
 この文書には、判決についてこう書かれています。

・夜間離着陸の差止め請求:棄却
・夜間の騒音規制:棄却
・日中の騒音規制:棄却
・騒音測定の実施:棄却
・損害賠償の請求(過去分)一部認容  (将来分)却下

 この文書だけを読めば、過去の分として一部の賠償を行う以外は、政府の主張がほぼ全面的に認められた「勝利宣言」のように誤解する人もいるかもしれません。
 何より驚くのは、将来分の損害賠償について「却下」と書かれている点です。
 今回の判決は、「口頭弁論終結から1年間、毎月各3万5千円」の損害賠償が命じているのに、それを「却下」と書いて配りまわるのですから、これでは判決の「偽装」と言われても仕方ありません。

■ 防衛省が「防衛」するもの

 もちろん防衛省が判決に満足しているわけではありません。
 官房長談話では「過去分の損害賠償請求の一部が認容されたことについては、裁判所の理解が得られず残念」と悔しさをにじませ、「今後の取り扱いについては、判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分調整の上、対処してまいりたい」と、控訴さえ匂わせています。
 他の基地訴訟に与える影響を少しでも抑えるために、徹底的に原告の訴えを潰してしまいたいのでしょう。

 そもそも普天間飛行場は、米軍基地です。
 裁判所が「違法」と判断するほど、国民が大変な苦痛を受けているというのに、防衛省は判決を歪めてまで、「被害者」である国民ではなく、「加害者」の米軍に加担しようというのです。
 これではまるで防衛省が、日本国民から米軍基地を「防衛」しているようなものです。

■ 守るべきは「国民」

 官房長談話では、普天間飛行場について「早期移設・返還に努力する」としていますが、この移設先には、名護市の辺野古が挙げられています。根強い反対運動があるこの地域への移設を推進したい防衛省の「火事場泥棒」的な思惑も透けて見えます。

 しかし、「違法」な騒音はどこへ持って行こうが、法が及ぶ範囲であれば「違法」です。
 今回の判決が示した「違法」状態を解消するために必要なのは、このような米軍基地を「日本国外」に移設することではないでしょうか。
 彼らが本当に守るべきものは、「加害者」である米軍ではなく、米軍基地に苦しめられている「国民」なのですから。

「ねじれ内閣」への問責決議

2008年06月11日 | 国会・政党・選挙
■ 首相「問責決議案」の可決

 野党は、何度も「封印」してきた問責決議案を11日、ついに参議院に提出し、可決しました。首相に対する問責決議案を可決した野党の姿勢を、私は評価したいと思います。

 メディアの多くは後期高齢者医療制度への、政府・与党の不誠実な対応への「問責」であるとしてしています。
 先の沖縄県議選での与野党逆転も、最大の原因は後期高齢者医療制度への批判票だと報じられていますが、私はそれだけではないと思いますし、そのように問題を矮小化させてはならないと考えます。

■ 福田内閣の260日間

 福田内閣が発足してから約260日が経ちます。ではこの間、福田内閣は一体何をしてきたのでしょうか。
 最初の約110日間は、アフガン戦争支援のための新テロ特措法の強行に血道を上げるばかりでした。違法なイラク戦争への転用などの疑惑をまともに解明しようともせぬまま、「大連立」で民主党の抱きこみを図り、それが頓挫すれば臨時国会の会期延長を重ね、再可決まで行いました。
 次の約120日間は、道路財源の暫定税率の維持・復活に没頭しました。結局は10ヵ年59兆円という中期計画の見直しなどを行うこともなく、ただ割高な税率を国民に課し続けるために、こちらも再可決を行いました。
 そして最近の福田内閣は、いかに小手先の運用改善だけで批判をかわしながら、後期高齢者医療制度を残すか、に専念するばかりでした。

■ 求めないことは強行、求めることには無策

 この間、多くの政治課題がありました。
 例えば、原油価格・原材料・物価の高騰が国民生活を直撃する中、福田内閣は何の対策も講じようとしませんでした。その間、野党からは定率減税の復活など緊急経済対策の提案がありましたが、福田内閣はこれを無視し続けました。
 また、3月末までを期限と設定した年金記録の照合について「公約違反と言うほど大げさなものなのか」と言い、紙台帳との照合など効果的な対策はいまだに打たれていません。

 国民が求めないことは強行し、国民が求めることは一切何もしない、というのが福田内閣の姿であると言えるでしょう。

■ 福田内閣の全てに「問責」を

 このような福田内閣に対し、支持率は約2割、逆に不支持の声は6割を超え、国民は既に「問責」「不信任」を突きつけています。山口2区補選での与党候補の惨敗、先に触れた沖縄県議選での自民党公認候補6名の落選などもその現われです。
 主権者である国民がこれだけ福田内閣に「NO!」を突きつけているときに、その代表者である国会議員が何もしないのでは、国民の負託に応えているとは言えません。
 後期高齢者医療制度「廃止」法案への対応だけでなく、今までの福田内閣の政治姿勢全般に対して、「問責」を行うのは当然であり、それこそが国権の最高機関である国会の責務だと思います。

■ 自民党すら見放した福田内閣

 与党はこの「問責」を無視するだけでなく、13日に衆議院で「信任決議」を通して対抗する構えですが、議員一人一人としては、福田内閣「信任」は決して本心ではないでしょう。

 先日、時事通信社が自民党の都道府県連幹部に対して「次の衆院選の顔にふさわしいのは」というアンケート調査を行いました。結果、「福田首相でたたかうべき」と答えたのは、47都道府県の内わずか9都府県しかありませんでした。わずか19%程度という数字は、内閣支持率をも下回るものでした。福田内閣は、自民党の地方組織からも既に見放されているのです。

■ 「ねじれ」

 このように、国民と野党から「問責」を受け、自民党からも「次の選挙までには辞めてほしい」という声が、福田首相とその内閣に突きつけられています。

 福田首相は、昨年9月の自民党総裁選に勝ったとき「貧乏くじかも知れんよ。」と笑いましたが、本当に「貧乏くじ」を引かされたのは、小泉内閣から安倍内閣、そして福田内閣という「政権たらい回し」によって、「望まない内閣」が続くことを強いられる国民です。

 昨年の参院選以来「ねじれ国会」などと言われてきましたが、本当にねじれているのは「国民の意識」と「政府の意識」であり、「ねじれ内閣」こそ問題があります。
 また、その「ねじれ内閣」を、衆議院が圧倒的多数で信任するならば、これも「ねじれ衆議院」と言わねばなりません。

 この国の主権は、あくまで国民にあります。こうした「ねじれ」の解消が必要ならば、民意を反映しない内閣や衆議院を再度、国民の側に「ねじり直す」ことこそ必要なのではないでしょうか。

本当の「暴挙」 ~後期高齢者医療「廃止」法案をめぐる攻防

2008年06月07日 | 国会・政党・選挙
■ 「廃止法案」参議院を通過

 6日、後期高齢者医療制度「廃止」法案が、野党の賛成多数で参議院を通過しました。
 前日、参議院の厚生労働委員会では、採決を行うこと決めた委員長に与党が反発し、解任動議案を提出しました。これが否決されたことで与党は退席し、野党単独での採決となりました。
 これに対し、退席した与党議員は「暴挙だ」と、吐き捨てるように言いました。

■ 「暴挙」によって作られた制度

 さて、この後期高齢者医療制度をはじめとする健康保険法などの改定は、2年前に小泉内閣の退陣間際に行われたものでした。
 法案に反対する野党に対し、与党は衆議院厚生労働委員会で一方的に審議を打ち切り、採決を行いました。これもまた「暴挙」と呼ばなければなりません。
 その採決のあった日の議事録には、何度も「聴取不能」という言葉が登場します。つまり、乱闘騒ぎになるほど野党の反発は激しいものでした。

■ 「怒り」の対応

 この後、法案は参議院に送られました。野党はそこでも反対しましたが、衆議院での乱闘騒ぎのような激しいものではありませんでした。
 参議院の委員会採決の直前に行われた討論で、野党議員はこう語りました。

 「怒りを持って席を立ち、法案採決を欠席することもできるのですが、そうしたところでこの法案は通ってしまうでしょう。そうするよりも、国民の皆様にどれだけこの法案が国民生活に密接なかかわりのある重要な法案であるか、そして様々な問題点があるか、これを更に知っていただくために反対討論をすることといたしました。また、政省令や運用で歯止めを掛けていくためにも附帯決議を付けることを決意いたしました。」

 こうした野党の姿勢は、今回「怒りを持って席を立ち、法案採決を欠席」した与党の議員に、ぜひ見習ってほしいものです。

■ 「継続審議」は制度の放置

 今回の「廃止」法案の審議の舞台は、2年前とは反対に、参議院から衆議院に移りますが、そこでの与党の対応は、2年前の野党とは正反対のような姿勢です。
 与党は既に、ろくに審議もせずに会期末まで法案を引っ張り、「継続審議」に持ち込むことにしているのです。
 もしそうなれば、秋の臨時国会まで、この法案も制度も放置されてしまいます。「廃止」法案には、いま行われている保険料の年金からの「天引き」を、遅くとも10月1日までにやめさせることが盛り込まれていますが、臨時国会まで法案が放置されれば、その実現は不可能となり、10月以後も天引きは続けられることになります。
 いま政府は天引きの範囲の変更などを検討していますが、結局は制度はそのままにして、小手先の運用の改善で、国民の目先の批判をかわしながら、福田内閣の延命を図ろうとする政府・与党の思惑が透けて見えます。

■ 国民無視こそ本当の「暴挙」

 こうした与党の動きに対して、野党は今度こそ福田内閣への「問責決議案」を参議院で提出する決意を固めつつあります。
 福田内閣や与党はこれを無視する構えです。
 しかし、そこで無視されるのは、単に決議だけの話ではありません。この後期高齢者医療制度に反対する、高齢者やその家族、実際に医療に携わる多くの国民の声も、無視の対象です。
 さらに言うならば、福田内閣の支持率の低迷は、国民の福田内閣に対する「問責」の声ですが、これもずっと無視され続けてきたと言わねばなりません。
 ひたすら衆議院の解散を先送りし、政権と現在の衆議院での議席にしがみつき、国民の声を無視し続けることこそ、与党や福田内閣による本当の「暴挙」なのではないでしょうか。

「後期高齢者医療制度」廃止に全力を

2008年06月02日 | 社会保障・税制
■ 審議入りした「廃止」法案

 後期高齢者医療制度の「廃止」法案の審議が、参議院の厚生労働委員会で始まっています。
 この「廃止」法案は、4月から導入された後期高齢者医療制度への批判が高まる中、野党4党が共同提出したものです。
 野党は、2月末にも「廃止」法案を衆議院に提出していましたが、衆議院で多数を占める与党の「審議拒否」により、一度も審議されないまま、制度が始まってしまいました。そこで法案を大きく修正した上で、今回の再提出となりました。
 「差別的な制度」「姥捨て山制度」と酷評されるこの制度の廃止に向けて、期待が集まります。

■ 野党に対する疑問

 しかし、これまでの野党の対応にも疑問が残ります。

 まず、2月の「廃止法案」について、なぜ参議院ではなく衆議院に提出したのか、ということです。
 もし、あのとき参議院に提出していれば、少なくとも一度も審議されないという状況に陥ることはなかったはずです。
 「政局優先」と言われる民主党としても、この問題について制度の導入前から与党との対決姿勢をもっと強く打ち出せば、より多くの支持を集めることができたでしょう。それを、わざわざ与党優位の衆議院に提出したことに、本気で制度を止める気があったのだろうかと疑いたくなります。

 また、なぜ再提出が今頃になったのか、ということもあります。
 通常国会は6月15日に会期末を迎えますので、残された日数はわずかです。
 しかも与党は、今回も既に衆議院で否決する姿勢を示しています。衆議院での審議入りさえ微妙な状況で、法案成立はかなり厳しいと言わざるを得ません。なぜ、もっと早く法案を出さなかったのでしょうか。

■ 「廃止」法案に消極的だった民主党

 実は、民主党はこの「廃止」法案提出に、あまり乗り気ではありませんでした。元々「2年後の見直し」を目ざしていたのです。
 07年の参院選のマニフェストを見比べれば分かりますが、民主党はこの後期高齢者医療制度については何も触れていません。参議院で民主党と統一会派を組む国民新党も同様です。
 共産党は、この制度の「抜本的見直し」を訴えていましたが、「見直し」の具体案は一向に見えてきません。
 一方、社民党はこの制度について「凍結」、つまり「導入しない」ことを掲げました。
 すなわち、制度自体を「廃止」しようというのは、元々は社民党の主張であり、政策だったのです。
 実際、この2度の「廃止」法案は、社民党が民主党に対して「こんな制度を2年間も放置するのか」と迫り、ようやく提出されたものでした。

■ 民主党内の事情

 ところが前述の通り、民主党は初め、与党優位の衆議院に提出し、結局は法案を「見殺し」にしましたが、これには民主党内の事情もありました。
 参議院に法案を提出するのは、参議院議員でなければなりません。
 法案提出者は審議の中で、質問に対する答弁にも立たなければなりません。政府の答弁ならば、官僚が原稿を用意してくれますが、野党は全て自分たちでやる必要があります。
 民主党は04年、07年の参院選で勝利し、ついに参議院で第一党となりましたが、その多くが新人議員で占められています。答弁にも立つとなると、新人議員には荷が重い仕事です。
 また、当時、民主党は他にも法案を提出しており、手が回らなかったということも、理由の一つとしてありました。昨年の臨時国会で、国民新党が主張していた、郵政民営化見直し法案の提出を渋ったのも同じ理由からでしたが、このように民主党は自分たちの主張ではない法案に手を取られるのを嫌ったのです。

■ 最後まで全力で

 民主党は、昨年の参院選で「国民の生活が第一。」と訴えたことは記憶に新しいところです。しかし、こうして見てみると、本気でそう思っているのか疑問です。
 いま、この後期高齢者医療制度、特に年金からの保険料「天引き」は、多くの国民を不安に陥れ、その生活が脅かされています。
 この「廃止」法案を提出した以上、何としても成立させてもらわなければなりません。
 今度こそ、法案も、国民の生活も「見殺し」にすることなく、最後まで全力で取り組んでもらいたいものです。彼らが「第一」と宣言した、多くの国民の生活が懸かっているのですから。