恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

北朝鮮のミサイル発射準備と日本の外交

2006年06月19日 | 外交・国際
■ 北朝鮮の愚かな行為

 先週から、北朝鮮の「テポドン2号」と見られるミサイルの発射準備の報道が続きます。
 「人工衛星だ」という説もあるようですし、方向も不明ですが、もし発射され墜落すれば、甚大な被害につながる危険性があります。
 政府は、日本国内に墜落した場合には、「武力攻撃と見なす」としていますが、それも当然のことと思います。
 そのような事態にならないよう、発射が中止されることを祈るばかりですし、このような北朝鮮の愚かな行為に、強く抗議します。

■ 日本政府の「策」

 さて、日本政府も、ただ手をこまねいているわけではありません。一応、次のような「策」を講じています。

【日本独自で】
 ○発射後の「万景峰号」など特定船舶の入港禁止措置の検討
 ○発射後の、北朝鮮への送金停止の検討

【米国と連携して】
 ○発射後の、国連安保理への付託
 ○7月のサンクトペテルブルク・サミットに主要議題として提出

 整理してみてあきれるのですが、全て「発射後」です。
 麻生外相は「最悪の事態は考えておかないといけない」と語っていますが、「最悪の事態」とは「日本国内に墜落して多数の死傷者が出る」ということも含まれるのでしょうか。
 そして、その「最悪の事態」の事後についてしか政府は考えていないということなのでしょうか。
 だとすれば、これほどお粗末な話はありません。
 事前に防ぐ策を講じるならともかく、「やるならやってみろ。後でこうなるぞ。」と言うだけ、という政府の「愚策」を極めて情けなく思います。

■ 選択肢のない「外交チャネル」

 事前に防ぐとなると、やはり北朝鮮に対して働きかけることが必要です。
 北朝鮮と接触を試みるのであれば、連携すべき相手は、北朝鮮に対して一定の関係と影響力を持つ、中国、ロシア、韓国などです。

 今回、政府は一応「北京ルート」を通じて、北朝鮮に対して発射中止を呼びかけましたが、北朝鮮側からの回答は得られていません。北京在住の日本メディアの記者が、今回の発射について中国は人工衛星の打ち上げだと見ていると伝えた後ですから、政府の対応は遅きに失していると言わざるを得ません。

 これまで、この3ヵ国との関係を緊密にし、もっと日本側に引き寄せておくことができていれば、中国側の対応も違ってきたかもしれませんし、各国首脳との電話会談だけで止めることも可能だったのではないでしょうか。

 しかし、そのような外交チャネルを小泉首相は持ちませんし、また持とうともしてきませんでした。この3ヵ国との関係は、小泉政権下での5年余り、悪化の一途をたどっているということは言うまでもありません。
 各国首脳とのホットラインどころか、首脳会談すらまともに行えない状況です。
 かつての小泉首相の「日米関係さえうまくいけば、アジアとの関係もうまくいく」との言葉が、虚しく思い出されます。

■ 「連携強化」先の米国への不信感

 そこで、いつものように米国に相談し、いつものように「連携強化」を打ち出したわけですが、いま米国は北朝鮮に対する金融制裁の真っ最中です。
 北朝鮮の直接の対立先である米国と連携を強化するなど、わざわざ火に油を注ぐようなものだということが、日本政府の人々には分からないのでしょうか。

 その米国に対しても、不信が尽きません。
 日本で、この問題が報じられ始めたのは、今月中旬になってからです。
 しかし報道によれば、米国は5月の初めから、今回の北朝鮮の動きを察知していたというのです。また、発射台周辺で作業を進める車両の衛星写真が公開されていますが、この写真も5月24日に撮影されたものだということです。
 米国が北朝鮮の動きを察知してから約5~6週間、衛星写真が撮られてから約2~3週間もの間、米国は日本にこの情報が伝えなかったことになります。

 先ほど「北京ルート」の接触について、遅きに失したと書きましたが、こうした情報提供の遅れに起因していると言わざるを得ませんし、このような情報すら提供しない米国しか相談相手がいないという状況が、いかに危険なものであるか、改めて実感させられます。

■ あらゆる手を尽くして発射阻止を

 日本の安全に関わる重要な情報をも提供しない米国との関係ばかりを偏重し、近隣諸国をはじめ多国間外交の構築を怠ってきた、稚拙で愚かな「小泉外交」が悔やまれてなりません。

 しかし、国民の生命がかかっている以上、諦めるわけにはいきませんし、今からでも遅くはありません。
 中国ルートがだめでもロシアルート、韓国ルートと、あらゆる外交チャネルを駆使するべきです。
 外務省内にも、北朝鮮要人に独自のチャネルを持つ外交官がいるはずです。その人々も動員し、北朝鮮の動きを止めなければなりません。

 それにしても、この一連の報道で、防衛産業関連の株価が高騰していると報じられています。
 こうしたことが「金儲け」の手段となってしまう、今の社会構造や経済構造を、本当に嘆かわしく思います。

 日本の外交姿勢と合わせて、この経済構造こそ「改革」しなければならない課題だと思います。

ワールドカップと医療制度改悪

2006年06月12日 | 社会保障・税制
 唐突ですが、私はサッカーが好きです。私自身、サッカー部に所属していたこともあります。
 だからという訳ではありませんが、サッカーを政治利用する人々を歯がゆく思うのです。

 ドイツで行われているサッカーのワールドカップでは、日本時間の12日夜、日本対オーストラリアの試合があります。
 日本中が沸き立ち、メディアもこれを煽るでしょう。
 日本代表が勝っても負けても、報じられるのはサッカーの話題ばかりです。
 勝てば、その興奮を掻き立て、負けや引き分けならば、今後の展望について熱く語ることでしょう。
 「今サッカーの話題に触れない人間は、もはや日本人ではない」とばかりに騒ぐでしょう。
 そして18日のクロアチア戦に向けての話題でメディアは盛り上がり、その間に成立する医療制度改悪の話題など、多くの国民が「どうでもいい」と思わされてしまうでしょう。
 政府・与党の狙い目が、そのタイミングなのです。

 喧騒の中、与党は医療制度改悪法案を成立させてしまうでしょう。
 現在の高齢者の皆さんは声を上げます。しかし、サッカーの話題がその声を掻き消します。
 その声に耳を傾けようともせず、サッカーの勝敗に熱狂している「将来の高齢者」、つまり今の若い人々は、後で苦しむことになるのです。 
 舞い上がって「ライン」を上げ過ぎて、カウンター攻撃の危機に気を留めなければ、待っているのは「後悔」の二文字です。

 サッカーの勝ち負けも興味深いところですが、今行われようとしていることや、自分たちの将来のことにも目を向ける必要があるのではないでしょうか。

 政府・与党が、このように攻撃をかけてくるとき、大切なものを守る「キーパー」は私たち国民自身なのだということを、決して忘れてはならないと思うのです。

「共謀罪」法案は、継続審議ではなく廃案に

2006年06月05日 | その他
 先週末、「共謀罪」法案をめぐる与野党のあわただしい動きがありました。
 結果的に採決は回避され、与党は「継続審議」にする方向だと伝えられていますが、私はこれに強い違和感をおぼえます。

■ 「政府案」成立を放棄した与党

 今回、政府案があり、民主党案がありました。
 与党は修正を重ねた挙げ句、民主党案を「丸呑み」しようとしたのですから、その時点で与党は政府案の成立を放棄したわけです。

■ 「民主党案」成立を放棄した民主党

 その民主党案ですが、提出した側の民主党が、与党の「丸呑み」提案を拒否しました。
 自分たちの出した案を成立することが分かっているのに、その採決を拒否したわけですから、この時点で民主党も、民主党案の成立を放棄したわけです。

■ 成立を放棄した法案をなぜ「継続」にするのか

 このように、それぞれが成立を放棄した法案を「継続審議」にして、次回の国会での成立を目ざすというのは、あまりにも筋が通らない話です。
 まして、衆議院で三分の二以上の議席を占める巨大与党が、その衆議院さえも通過を断念しなければならない法案など、法案に重大な問題や欠陥があるからだと言わざるを得ません。

■ 「継続審議」ではなく「廃案」に

 実際、「共謀罪」法案は、「行為」を裁くのではなく「意思」を取り締まる、という内容であり、これまでのわが国の刑事法体系を全面的に引っくり返すばかりでなく、国民の広範な日常活動を監視の対象にし、憲法の大原則の一つである「基本的人権の尊重」を根底から覆すような中身です。
 このような法案だからこそ、今の国会以前から何度も廃案になり、何度も修正を繰り返し、それでも成立させることができなかったのです。
 政府・与党は、この法案を「継続審議」にするのではなく「廃案」にすべきです。

「共謀罪」法案を止めなければ

2006年06月02日 | 叫び
 「共謀罪」法案が急展開を見せています。
 1日の夕方、与党が民主党が提出していた対案を「丸呑み」することを決め、民主党に採決を迫っています。
 一時は、「共謀罪」法案について与党が今国会成立を断念したとの報道に、胸を撫で下ろしていた自分を情けなく思います。

 民主党は、2日午後に行なわれる法務委員会で、質疑に対する政府答弁の内容によって、採決の可否を判断する、としていますが、もし自公の両与党に民主党が取り込まれてしまえば、あと2週間の国会日程の中で、成立してしまう危険性が極めて高くなります。

 民主党案の中身については、政府原案よりハードルは高くなっているものの、犯罪行為を取り締まるのではなく、「意思」を取り締まるという危険な核心部分は何も変わりません。

 加えて、一旦「共謀罪」を作ってしまえば、その後どんどん適用範囲を拡大する改定を行ない、結局は政府原案か、それ以上の法律に化けていくという危険性もあります。
 「共謀罪」法案と並び称される、「治安維持法」にしても1925年の公布以後、2度の「改悪」によって最終的な「史上最悪の法律」になったのです。

 さらに、「悪用」「乱用」の危険性についても同じです。
 「弾圧」というものは、「裁判で犯罪を立証すること」よりも、まず「検挙すること」に力点が置かれます。何でも良いから罪状をつくり、逮捕し、報道させ、社会的に抹殺する、という手法です。
 その検挙のきっかけづくりには「持って来い」なのが、犯罪行為がなくても検挙できるという「共謀罪」法案です。

 将来に禍根を残さないためにも、この法案を、何としても止めなければなりません。
 私も、民主党に、絶対に与党への同調をさせないよう、電話・メールなどを駆使して働きかけています。ぜひ多くの方々に声を上げて頂きたいと思います。

日本全土を「軍事基地」化する米国の戦略

2006年06月01日 | 基地・有事体制
■ 「米軍再編」政府の取り組みを閣議決定

 政府は5月30日、米軍再編についての政府の取り組みについて閣議決定を行ないました。
 この米軍再編の本質は、米軍基地の機能強化と、日米軍事一体化を推し進めるものだということについては、言うまでもありません。沖縄県や名護市、山口県の岩国市など地元自治体は、この「頭越し」の閣議決定に、不快感をあらわにし、設置が予定されている「協議機関」にも参加しない方針を伝えるなど、政府への反発を強めています。
 何より、政府が唱えた「負担軽減」どころか、一層の負担を押し付けられようとしている住民の皆さんにとっては、このような政府の暴挙は許せるものではないと思いますし、米軍の移転費用に3兆円とも言われる巨額の税金を投じることも納得できるものではありません。

 しかし最近の動きを見ていると、このような暴挙ですら、まだ「序の口」に過ぎないのではないかと思えてなりません。

■ 「武力攻撃事態」の判断のための情報は米国

 現在、もし政府が「武力攻撃事態」だと言いさえすれば、空港・港湾・道路・公共施設・電波などを、米軍・自衛隊が優先的に使用することが可能になります。
 一般の空港は米軍・自衛隊の基地となり、上空を軍用航空機が爆音をまき散らしながら飛び交い、近くの港が軍港となり、家の前の道路を戦車や装甲車が走り、近くの公共施設に武装した米軍将兵や自衛隊が駐留する、という光景を思い浮かべてください。自治体が協力するということは、単に首長や職員が協力するという問題ではなく、そこに暮らす住民全員に降りかかってくる問題なのです。

 このとき「武力攻撃事態なのだからしょうがない」という意見もあるでしょう。
 しかし「武力攻撃事態」かどうかは、「政府がそう判断するかどうか」にかかっています。しかもそれを判断するための情報は、米軍や米国政府が日本政府に与えるものがほとんどです。
 こうした情報が「まともな情報ばかりではない」ということは、イラク攻撃の根拠とされた大量破壊兵器の議論を通じて証明された、言わば「世界の常識」ではないでしょうか。
 
■ 拡大する協力の「責務」

 さらに、政府は「周辺事態法」の改定を検討を始めています。
 内容は、「周辺事態」が発生した場合に、米軍・自衛隊への協力を、自治体の「責務」、つまり強制力をともなう義務にするということです。
 その理由について政府は、「実際に日本が攻められることより、周辺での有事の可能性が高い」と説明しています。

 それでも「周辺事態なのだからしょうがない」という意見もあるでしょう。
 しかし「周辺事態」というのは、法律上も具体的な定義は全くありません。政府答弁も「地理的概念ではなく、事態に即した概念」などという説明です。つまり、日本から遠く離れた地で米軍が引き起こした戦争でも、政府が「日本にも関係が深い」「日本の安全にも影響する」と言えば、日本全国の自治体の施設を使用できることになります。
 現実に米国は世界のあちこちで戦争を繰り返してきました。今後も改める気配はありません。
 そうした米軍の戦争のたびに、あらゆる場面で日本全土が「軍事基地」化されてしまうのです。
 しかも、この検討を始めたのは、5月初めに行われた「2プラス2」協議での、米国政府の要求によるものです。共同発表の中には「2国間の安全保障・防衛協力の実効性強化」が盛り込まれ、日本政府は直ちにこの法改定の検討に取りかかったのです。
 米軍再編協議と同様、政府は自治体や日本国民の声よりも米国政府の声を重視するのか、と言わざるを得ないのではないでしょうか。

■ 「平時」にも日本中を「軍事基地」化

 ところが、米国の要求はそれにとどまらないのではないか、と思える出来事が2月に北海道の室蘭港でありました。
 米軍のミサイル巡洋艦が室蘭への寄港を求めましたが、その頃、この巡洋艦の母港である横須賀で起きていた殺人など米兵による犯罪や不祥事が相次いでいたことから、室蘭市は市民の不安を考慮して、米軍側に入港を見合わせるよう要請しました。しかし、この要請を米軍は拒否し、強引に入港してきたのです。
 この件に関して、日本政府は抗議どころか調査すらしませんでした。

 このことについて「~なのだからしょうがない」と言えるでしょうか。
 今、日本は「武力攻撃事態」でしょうか。「周辺事態」なのでしょうか。また、このミサイル巡洋艦の室蘭入港に、どんな防衛上の必要性があるのでしょうか。
 何もありません。何もない、つまり「平時」のときでも、日本全土を「軍事基地」として使用するための既成事実づくりと考えれば、辻褄が合うように思います。

 米国側から見れば、日本中を「軍事基地」として使用することについて、2年前「武力攻撃事態」の場合について認めさせることに成功し、今後は「周辺事態」の場合、「平時」と、その範囲を拡大していく、このことが米国の軍事戦略の一つとしてあるのではないでしょうか。

■ 過剰な公共事業は誰のためか

 そう言えば、公共事業への赤字国債の乱発により、国や自治体の借金は膨大な金額になっていますが、ここ十数年で急増した国債は、90年の海部内閣のときの「日米構造協議」での米国の要求と、橋本内閣のときの米国の要求に、応えたものが大半(元本だけで総額630兆円)を占めています。

 日本国民から集めた税金だけでなく、多額の借金を作らせてまで、米国が日本に公共事業をさせた理由について考えるとき、この十数年で過剰なまでに整備が進んだインフラが、空港・港湾・道路・公共施設・電波、すなわち現在既に「何かあれば、自衛隊、そして米軍が優先的に使用できるもの」と、ほぼ一致していることに目を向ければ、決して軍事戦略と無縁だとは思えません。

 整備が進んだのは、もちろん物質的なインフラだけではありません。
 これまで述べてきたように、法制度面での条件整備があります。小泉内閣の5年間だけを見ても、有事関連10法、テロ特措法、イラク特措法などが作られましたし、今国会での成立は見送られたものの「共謀罪」創設法案や、教育基本法改定案、国民投票法案が、既に国会に提出されています。また、憲法改定の自民党案も昨年、発表されています。それぞれについて詳しくは語りませんが、米国の戦略・要求と、極めて強い因果関係があることを指摘しておきたいと思います。

■ 日本の「軍事基地」化を食い止めるために

 このような米国による日本全土の「軍事基地」化や、これに追随して国民を米国に売り飛ばすかのような自民党という政党は、決して許せるものではありません。

 こうした大きな動きを食い止めるためには、一つ一つの小さな動きに目を配り、その本質を見抜き、対応していくことが大切だと考えます。
 まずは、今回の閣議決定にあきらめることなく、これに反対する住民の皆さんとともに声を上げ、自分たちの自治体でも、こうした動きに協力しない勢力をつくり、そうした声を広げながら、米国政府よりも自国民の声に耳を傾ける国にしていくことが必要だと思います。