恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

「ねじれ国会=政治停滞」という嘘

2007年11月21日 | 国会・政党・選挙
 福田首相が22日に予定している野党との党首会談を前に、町村官房長官は20日、「ねじれ国会」を運営するための新たなルールづくりが党首会談の議題になるとの考えを示しました。
 これは、参議院で野党が多数を占めている状況では与野党が対立し、何も決まらないという「政治停滞論」を受けた発言ですが、果たしてこれは本当なのでしょうか。

■ 冷静に賛否を決めてきた野党

 例えば、一年前の臨時国会はどうだったでしょうか。安倍政権発足直後のこの国会では、教育基本法改定案や当時のテロ特措法延長法案、防衛「省」昇格法案などが審議され、さらに与野党とも翌年の統一地方選や参院選をにらんで激しい攻防を繰り広げていたという印象があります。
 この会期中、参議院では25法案が可決されましたが、どれだけ野党は反対したのでしょうか。
 実は、国民新党4回、民主党も5回しか反対していません。かつて前原前代表が「民主党は自民党と8割同じ」と語っていた通り、民主党は8割の法案について賛成していたのです。
 他の政党では、社民党が10回、共産党は11回の反対です。これは前述の2党に比べれば多いですが、社民党は60%、共産党でも56%の法案には賛成してきたことになります。
 加えて、全会派が賛成した法案は、全体の半数近い12法案でした。
 これを見れば、野党が何でも反対しているわけではなく、国民にとって必要な法案や一定の前進が見られる法案であれば冷静に賛成していることがよく分かります。

■ 政府・与党の嘘

 さて、確かに「ねじれ国会」と言われる今国会において、11月14日までの時点で同じ参議院で可決されたのは6法案だけです。しかしこれだけを比較して「政治停滞論」を信じるのは早計です。
 ご存じの通り、今国会は開会2日後に安倍前首相の突然の辞任があり、自民党の総裁選がありました。その後、あらためて福田首相の所信表明、それに対する代表質問、予算委員会などがあり、しかも野党が多数を占める参議院で、与党が委員会のできるだけ審議日程を遅らせようとしてきたこともあり、法案審議が本格化し出したのは、10月末頃のことでした。
 与党が「政治停滞論」を騒ぎ出したのもその頃ですが、これはもっぱら政府・与党側の事情によって国会が正常に動いていなかったというのが実状です。
 すなわち「政治停滞論」などは、自分たちがその状況を生み出しておきながら、国民が国会のことを何も知らないだろうと多寡をくくった、政府・与党の「まやかし」に過ぎないのです。
 では、なぜ政府・与党はそのような嘘をつくのでしょうか。

■ 「ねじれ国会」によって取り戻された「あるべき姿」

 与党が衆参両院で多数を占めていたときであれば、一定の時間が過ぎれば「審議を尽くした」として、とにかく採決に持ち込んで、原案通り可決するという手法も通用しましたが、今度はそうはいかなくなりました。彼らは思い通りに法案を通すことができなくなりました。これが「ねじれ国会=政治停滞」という嘘の理由です。
 ただ、考えてみれば、7百名以上の国会議員が何十時間もかけて審議しているのに、結局は何の修正もされず、ほぼ原案のまま押し切られてきたことの方が異常です。法案審議の中で様々な問題や不十分な点が浮かび上がってきましたが、それらは何も法案には反映されてこなかったのです。国会が「空洞化」「形骸化」していると指摘されてきたのも、そのためです。
 ところが「ねじれ国会」で法律を作るためには、野党にも賛成してもらえるよう法案修正などの努力が必要となっただけのことです。
 国民全体に影響する法律を作るのに、できるだけ幅広い合意を得ようとするのは元々当然のことであり、国会は「ねじれ」によって、本来あるべき姿を取り戻したと言うべきです。

■ 合意形成への「努力」

 では、与党が「嘘」に頼らなくてはならないほど、野党の賛成を得るのは困難なのでしょうか。
 前述の通り、約半数の法案は全会派が賛成していますし、民主党や国民新党では2割程度、共産党や社民党も4割程度の反対です。この2割ないし4割についてのみ、法案修正などの譲歩があれば良いのです。元々その程度の努力もせずに「審議を尽くした」と言ってきたこと自体が誤りなのです。
 しかし、どうしても合意が得られず、通らない法案もあるでしょう。それは「廃案」もやむを得ません。これを「政治停滞」とする意見もあるかもしれませんが、今まで野党側から提出された多くの議員立法に対する、与党の対応を思い出せば、それも説得力を欠きます。与党はそのほとんどを委員会にも付託せず、握り潰してきたのです。果たして、それでどのような「政治停滞」があったでしょうか。

■ 「密室」に逃げず、国会での審議を

 さて、与野党で話をするとき、これまでは「密室」に閉じこもりがちでした。2度にわたる福田首相と民主党の小沢代表による党首会談などはその典型ですが、いくら合意形成のためとは言え、これでは国会の「空洞化」「形骸化」は進むばかりですし、何より国民に公開できないような協議を行うようでは、国民の政治不信は増すばかりです。
 与野党協議の「新たなルール」を作ろうというのであれば、公開が保障された、国会内での審議を通じてでなければなりません。元々そうした掘り下げた議論を行うために委員会があるのです。それでも足りなければ、予算委員会のように、委員会の下に小委員会を設けてさらに深く議論を行うという方法もあります。

 「ねじれ国会」が生まれ、国会が本来あるべき姿を取り戻した今、「密室」での談合に走ることなく、国会で徹底した「審議を尽くす」ことこそ必要であるはずです。

「異常な事態」からの撤収

2007年11月02日 | 外交・国際
■ 撤収命令

 11月1日、時限立法であるテロ特措法の期限を迎え、現地で活動に当たってきた補給部隊に撤収命令が出されました。
 これに関連して、政府は「補給活動の早期再開を期す」「法案の早期成立を図る」という内容の総理談話を発表しました。
 町村信孝官房長官は、この談話が関係各国にも伝えられる(つまり新たな国際公約である)ということを強調しつつ、「民主党から対案も示されていない」と、新テロ特措法案に反対する野党を批判しました。

 しかし、そもそも「対案」など出さなくてはならないものなのでしょうか。

■ 「異常な事態。早く終わって」と語っていた防衛大臣

 この活動については、数ヶ月前の通常国会の時点では、政府も次のような考え方でした。
 以下は当時の久間章生防衛大臣の答弁です。

 「本当に、正直言ってこんなに長く闘いが続くというのは異常なことでございまして、・・・アフガンの場合はもうとにかくテロとの闘いでありますから、・・・闘いに自衛隊が出ていくというのは非常に異常な事態でございますから、とにかく一日も早く終わってもらいたいという思いが強うございます。」 (4月27日 衆議院テロ・イラク特別委員会)

 「あれ(インド洋での補給活動)は特別の法律によりまして、しかも二年ということで一応区切った、それが結果として五年になっておるという、そういう状況でございますから、言うなればちょっと異常な事態ですよね、法律も二年ということでやったわけでございますから。」 (5月31日 参議院外交防衛委員会)

■ 「異常な事態」からの撤収

 所管大臣までもが、元々この活動に自衛隊が出ていくということや、2年で区切ったものがここまで延長を重ねてきたこと自体が、「異常な事態だ。一日も早く終わってほしい」と言ってきたことを踏まえて考えれば、今回の撤退は、事態が「正常」に戻るだけの話です。
 そう考えてみれば、政府がここへ来て「活動の早期再開を」「民主党は対案を」と騒ぐこと自体、「異常」な気がしてなりません。
 せっかく「異常な事態」からも「撤収」することになったのですから、政府は再開に固執する必要もありませんし、民主党も政府の論調に乗せられて安易な「対案」などを出す必要もないと思います。

 「やめる」なら「やめる」で良いのではないでしょうか。
 国会で延長法案が成立しなかったということも、主権者の「意思」が先の参院選で実現させた与野党逆転の厳然たる結果なのですから。

福田首相への手紙

2007年11月01日 | 国会・政党・選挙
内閣総理大臣 福田 康夫 様

 謹啓 初めてご挨拶申し上げます。
 遅れ馳せながら、先の内閣総理大臣ご就任を、心よりお祝い申し上げます。

■ 利権化と私物化

 さて、去る10月29日、守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問が行われました。防衛利権に群がる関連企業の接待攻勢、そしてそれを食い物にしてきた実態に驚かされました。
 福田首相が記者会見で述べられた「悪質」「非常識もいいところだ」との言葉、正に同感です。調達・購入の原資は言うまでもなく税金であり、それを利権化し、私物化することなど絶対に許されるものではないと思います。

■ 飛躍的な増加

 ところで、私は先日2008年度予算の概算要求を拝見しました。その防衛省分について気になる点がありましたので少し申し上げたいと思います。
 「89式小銃」の調達数が近年、高い伸びを示しています。04年度までは毎年約3,000丁前後でしたが、05年度には7,084丁、06年度6,869丁、07年度6,424丁と、従来の2倍以上になり、そして08年度の概算要求では、20,005丁です。飛躍的な増加です。

 この「89式小銃」を製造しているのは、愛知県清須市にある豊和工業(株)という企業です。豊和工業はこの「89式小銃」以外にも、「81㎜迫撃砲L16」「120㎜迫撃砲RT」を防衛省に納めています。恐らく随意契約です。
 この3品目の防衛省との取引額は、ここ3年間、27億円、25億円、28億円とほぼ横ばいでしたが、今回の概算要求では約68億円と、こちらも2倍以上の金額が計上されています。

■ 天下りと集金

 この豊和工業ですが、やはり防衛省からの天下りを受け入れています。ここ数年では、01年12月に一等陸佐、04年1月に陸将、05年5月には陸将補を採用しています。

 さらに、豊和工業の社長は、「国民政治協会」の理事、そしてその愛知県支部の支部長を務めています。総理もご承知の通り、「国民政治協会」とは、自民党の政治資金団体として個人・企業・団体などから金を集め、その金を自民党に流している「集金団体」です。
 同協会に対する豊和工業の寄附は毎年140万円と比較的小額ですが、愛知県内での自民党の「集金」を取り仕切る支部長である以上、その発言力は決して小さくはないと思われます。愛知県は民主党が強い地ですが、自民党も、首相経験者を含め16名の現職国会議員を輩出しているのですから。

■ 「癒着構造の中心」自民党

 総合しますと豊和工業は、防衛省OBの天下り先、自民党にとっては「集金企業」という有難い存在であり、その見返りとして防衛省と自民党は豊和工業への発注を増やそうとしている、という癒着の実態が浮かび上がってきます。

 多くの省庁で取り沙汰されてきた天下りと随意契約の問題は、会計検査院や国会から厳しい指摘・追及を受けています。また、自民党あるいは自民党議員への「利権の還流」についても、かねてから多くの批判を浴びてきたところです。
 天下りが最も多い官庁は防衛省です。その数は毎年、天下り全体の約半数を占めています。また、その天下りの監視が他の省庁とは違い、防衛人事審議会という他省庁とは別の機関の手続きを踏むことや、その可否を判断する基準が極めて甘く、言わば「野放し」に近いということも、問題の原因だと思います。
 加えて、豊和工業に限らず、国民政治協会という自民党の「集金団体」である国民政治協会の役員には、公共事業など国と取引きのある企業の経営陣がずらりと並んでいます。
 すなわち、税を原資とする国の歳出を利権化し、私物化するという、自民党と国民政治協会の存在が、この癒着構造の中心にあると言わざるを得ません。

■ 福田首相、官房長官時代の決意

 さて、こうした政官財癒着の構造については、総理も頭を痛めておられることと思います。総理は官房長官時代、国会で次のように述べられている通りです。

・「政官財の癒着とか利益の誘導政治が行われないように努めるとともに、税金のむだ遣いなどが起こらないように努力していかなければいけない」(2002年1月25日 衆議院予算委員会)

・「いやしくも所管の官庁とそれから業界が疑念を持たれるというようなことがあってはならない」(2002年10月30日 衆議院内閣委員会)

 私は、そのご決意に深く賛同致しますし、今こそ総理が当時の決意に従い、こうした癒着構造に徹底してメスを入れられるものと信じたいと思います。

■ 最後に

 総理は自民党総裁というお立場もお持ちですが、自民党や政治資金団体に絡むことだからと、その決意を揺るぐるようならば、それこそ一大事です。今回の「悪質」「非常識もいいところだ」というご自身のコメントが、総理ご自身に降りかかることになるのではないかと案じます。

 向寒の候、総理にはくれぐれもご自愛下さるようお祈り申し上げますとともに、「政官財の癒着」「利益の誘導政治」を断ち切るとの決意を決してお忘れになることなく、真に国民のための政治を体言されますよう、心より祈念致します。
謹白

【参考】

■ 防衛省・自衛隊(予算等の概要)
■ 防衛人事審議会答申等
■ 国民政治協会
■ 豊和工業(株)
■ 国会会議録検索システム