■ 「誠実な国会対応」という約束
「自由民主党総裁選挙の実施に伴い、国会運営にご迷惑をおかけしたことについて、議員各位、そして国民の皆様に対し、お詫び申し上げる」
今月初め、福田首相の初めてとなる所信表明演説でこう陳謝しました。臨時国会召集直後の安倍前首相の辞任、その後の自民党総裁選の影響により法案審議は全く行われてきませんでした。
この政府・与党側の不始末を反省し、謝罪した上で、福田首相はこう語りました。
「今後、誠実な国会対応に努めてまいります。」
しかし、この約束とはむしろ正反対とも言うべき極めて「不誠実な」国会対応が目に付いてなりません。
■ 自民党ぐるみの審議先送り
この10月、国会では首相や主要大臣の所信表明があり、それに対する各党の代表質問があり、その後衆参両院での予算委員会がありました。
通常ならばその後、各委員会での大臣所信表明と、それに対する質疑、そして実質的な法案審議へと進むわけですが、与党は特に参議院での日程の「引き延ばし」にかかっています。
今回、参議院で与野党逆転を果たした野党側は「大臣所信を18日、それに対する質疑を23日に」という日程を主張しました。しかし与党側はこれに難色を示し、「23日に所信表明、25日には『秋の園遊会』があるため質疑は次週に先送りして30日に」という案を提示しました。審議の先送りです。
ご存じの通り、この国会の会期は11月10日までであり、所信に対する質疑が10月30日ということになれば、残りの会期は11日間、実働で言えばわずか数日間しかありません。これでは審議時間が足りません。
しかも、ある委員会の理事懇談会で、一人の自民党理事が「(この日程を)党の国対で決めた」ことを漏らしてしまい、この審議の先送り策が、自民党ぐるみだということが露見しました。当然、野党側からは猛反発が浴びせられました。
結局、参議院で18日に大臣所信表明を行ったのは、総務・農林水産・経済産業・環境の4委員会だけで、残りの委員会では与党側の主張した日程が押し切られてしまいました。
なぜ自民党は日程を引き延ばし、審議をさせないようにしているのでしょうか。
■ 政府・与党が嫌がる生活関連法案
野党が過半数を占める参議院で第一党となった民主党は、社民党など他党とも協力しながら、「年金保険料流用防止法案」「労働契約法案」「被災者生活再建支援法改正案」「障害者自立支援法改正法案」「特定肝炎対策措置法案」などを提出し、その成立を目指しています。
民主党は既に無所属議員の一部、新党日本、そして23日には国民新党をも統一会派に組み入れました。後は共産党か社民党いずれかの協力が得られれば過半数に達しますので、これらの法案の参議院通過は十分可能です。
年金・雇用(格差是正)・被災者支援・障害者福祉など、国民に身近な「生活関連法案」を参議院で可決させ、衆議院に突きつけることで与党に揺さぶりをかけながら、世論に訴えるというのが野党側の既定方針ですが、政府・与党にしてみればこれが嫌でたまらないのです。
■ 「新テロ特措法案」と同じ「姑息な発想」
現在、与党が大騒ぎしているのは「新テロ特措法案」です。与党は「国際貢献」や「国益」を強調していますが、結局はアフガニスタンで戦争をしている他国の軍隊に、国民の税金で買った燃料を、無料でばらまき続ける法案に過ぎません。
与党がこんなことに血道を上げる中、国民生活重視の法案を野党が参議院で次々と可決させていけば、野党への評価は高まるでしょう。さらに、これらの法案を与党が多数を占める衆議院で次々と否決すれば、与党への評価の低下は免れません。次なる総選挙への影響は必至です。
そこで与党が苦肉の策として選んだのが「参議院の動きを封じ、審議をさせない」という国会戦術だったのです。
それこそ、活動内容について参議院の「承認」を得られる見込みがないので「報告」だけで良いことにしてしまおう、という「新テロ特措法案」と同じ、極めて姑息な発想です。
■ 天に吐いた唾
従来の野党の審議拒否の場合は、法案に関わる重大な事柄について、「それが解明されない以上、審議には応じられない」というもので、その「解明」さえ行われれば審議に復帰するという、それなりに根拠が認められるものでしたが、今回の与党の場合はそれすらもなく、「ただ逃げ回るだけ」のものです。
これまで野党の審議拒否戦術について与党側は「時代錯誤だ」「税金の無駄遣いだ」などと非難してきましたが、今国会での与党や福田内閣の姿は、それこそ「天に吐いた唾」を顔全体で浴びているようなものです。
「誠実な国会対応」を約束しておきながら、僅か数週間でその「不誠実さ」を露呈した福田首相にも同じことが言えると思います。
このような矛盾に陥り、不誠実で姑息な国会対応しか行えないような福田政権に、もはや政権担当能力などないと見るのか、初めから平気で国民に嘘を吐けるような老獪さを持っていると見るのかは皆さんのご判断に委ねますが、いずれにしても、実に「恥ずかしい」政府・与党であることに変わりありません。
「自由民主党総裁選挙の実施に伴い、国会運営にご迷惑をおかけしたことについて、議員各位、そして国民の皆様に対し、お詫び申し上げる」
今月初め、福田首相の初めてとなる所信表明演説でこう陳謝しました。臨時国会召集直後の安倍前首相の辞任、その後の自民党総裁選の影響により法案審議は全く行われてきませんでした。
この政府・与党側の不始末を反省し、謝罪した上で、福田首相はこう語りました。
「今後、誠実な国会対応に努めてまいります。」
しかし、この約束とはむしろ正反対とも言うべき極めて「不誠実な」国会対応が目に付いてなりません。
■ 自民党ぐるみの審議先送り
この10月、国会では首相や主要大臣の所信表明があり、それに対する各党の代表質問があり、その後衆参両院での予算委員会がありました。
通常ならばその後、各委員会での大臣所信表明と、それに対する質疑、そして実質的な法案審議へと進むわけですが、与党は特に参議院での日程の「引き延ばし」にかかっています。
今回、参議院で与野党逆転を果たした野党側は「大臣所信を18日、それに対する質疑を23日に」という日程を主張しました。しかし与党側はこれに難色を示し、「23日に所信表明、25日には『秋の園遊会』があるため質疑は次週に先送りして30日に」という案を提示しました。審議の先送りです。
ご存じの通り、この国会の会期は11月10日までであり、所信に対する質疑が10月30日ということになれば、残りの会期は11日間、実働で言えばわずか数日間しかありません。これでは審議時間が足りません。
しかも、ある委員会の理事懇談会で、一人の自民党理事が「(この日程を)党の国対で決めた」ことを漏らしてしまい、この審議の先送り策が、自民党ぐるみだということが露見しました。当然、野党側からは猛反発が浴びせられました。
結局、参議院で18日に大臣所信表明を行ったのは、総務・農林水産・経済産業・環境の4委員会だけで、残りの委員会では与党側の主張した日程が押し切られてしまいました。
なぜ自民党は日程を引き延ばし、審議をさせないようにしているのでしょうか。
■ 政府・与党が嫌がる生活関連法案
野党が過半数を占める参議院で第一党となった民主党は、社民党など他党とも協力しながら、「年金保険料流用防止法案」「労働契約法案」「被災者生活再建支援法改正案」「障害者自立支援法改正法案」「特定肝炎対策措置法案」などを提出し、その成立を目指しています。
民主党は既に無所属議員の一部、新党日本、そして23日には国民新党をも統一会派に組み入れました。後は共産党か社民党いずれかの協力が得られれば過半数に達しますので、これらの法案の参議院通過は十分可能です。
年金・雇用(格差是正)・被災者支援・障害者福祉など、国民に身近な「生活関連法案」を参議院で可決させ、衆議院に突きつけることで与党に揺さぶりをかけながら、世論に訴えるというのが野党側の既定方針ですが、政府・与党にしてみればこれが嫌でたまらないのです。
■ 「新テロ特措法案」と同じ「姑息な発想」
現在、与党が大騒ぎしているのは「新テロ特措法案」です。与党は「国際貢献」や「国益」を強調していますが、結局はアフガニスタンで戦争をしている他国の軍隊に、国民の税金で買った燃料を、無料でばらまき続ける法案に過ぎません。
与党がこんなことに血道を上げる中、国民生活重視の法案を野党が参議院で次々と可決させていけば、野党への評価は高まるでしょう。さらに、これらの法案を与党が多数を占める衆議院で次々と否決すれば、与党への評価の低下は免れません。次なる総選挙への影響は必至です。
そこで与党が苦肉の策として選んだのが「参議院の動きを封じ、審議をさせない」という国会戦術だったのです。
それこそ、活動内容について参議院の「承認」を得られる見込みがないので「報告」だけで良いことにしてしまおう、という「新テロ特措法案」と同じ、極めて姑息な発想です。
■ 天に吐いた唾
従来の野党の審議拒否の場合は、法案に関わる重大な事柄について、「それが解明されない以上、審議には応じられない」というもので、その「解明」さえ行われれば審議に復帰するという、それなりに根拠が認められるものでしたが、今回の与党の場合はそれすらもなく、「ただ逃げ回るだけ」のものです。
これまで野党の審議拒否戦術について与党側は「時代錯誤だ」「税金の無駄遣いだ」などと非難してきましたが、今国会での与党や福田内閣の姿は、それこそ「天に吐いた唾」を顔全体で浴びているようなものです。
「誠実な国会対応」を約束しておきながら、僅か数週間でその「不誠実さ」を露呈した福田首相にも同じことが言えると思います。
このような矛盾に陥り、不誠実で姑息な国会対応しか行えないような福田政権に、もはや政権担当能力などないと見るのか、初めから平気で国民に嘘を吐けるような老獪さを持っていると見るのかは皆さんのご判断に委ねますが、いずれにしても、実に「恥ずかしい」政府・与党であることに変わりありません。