唐突ですが、皆さんは自国の企業を売って外資から金を受け取る算段をする政党があるとすれば、どのように思われるでしょうか。
■ 外資からの献金規制の緩和
今は外資の持ち株比率が50%以上である企業は、政党に対する政治献金を行うことができま受け取ることができません。
50%以上の株式を外資が保有していれば、その企業は完全に外資の支配化にあると言えます。企業であれ個人であれ、日本の政党が外国から金を受け取れば、誰のために政治を行うのか見失いかねません。
その意味において、この規制は極めて妥当な規制であると思います。
いま国会では、これを規定した政治資金規正法の改定案が審議されています。
これは自民党の加藤勝信氏らが議員立法として提出した改定案なのですが、僅かばかりの修正によって民主党までもが賛成にまわっており、13日にも成立する見通しです。
その中身は、この「50%条項」の撤廃です。
すなわち、日本で上場さえしていれば、たとえ外資が完全に支配する企業であっても献金ができ、政党はそれを受け取ることができるようにするというものです。
■ 政治献金を導く「前段」と「後段」
この政治資金規正法の改定には「前段」があります。それは今年5月に施行された会社法です。
これは「三角買収」を外資にも解禁し、日本企業を買収しやすくする制度です。
もちろん、いわゆる「敵対的買収」もその範囲内です。
この制度が、あまりにも外資に有利なため、政府・与党も「防衛策」などの準備期間として1年間この条項を凍結せざるを得なかったのです。
さらに「後段」もあります。
今月9日、政府税制調査会はこうした「企業買収」の促進のために、買収時の株式のやり取りへの課税方法の見直しや、多国間での「移転価格税制」についての「納税猶予期間」の導入などを行う方針を固めています。
全面的に、日本企業買収をバックアップしようという姿勢です。
■ したたかな企業
企業は営利社団法人です。もし利益を度外視した支出を行えば、定款に違反し、経営陣は「背任」に問われるかもしれません。実際そうした訴訟があちこちで起こされていますが、元来何らかの「見返り」を期待して金を出すものです。
日本経団連は数年前から政治献金集めを再開していますが、企業に有利になるような政策提言を行い、自民党と民主党を競争させて採点し、その採点結果によって献金を行うという手法をとっています。
3年前の総選挙では、企業減税と消費税増税を求めていた日本経団連の政策提言に従い、民主党が公示後に突然、「マニフェスト」にも書いていなかった消費税増税を打ち出したということもありました。
「政治とカネ」はこれほど露骨なものなのかと愕然とさせられました。
■ 危険極まりない「政治とカネ」
さて、それほどまでに露骨な「政治とカネ」のつながりが、与党と外資との間で行われればどうなるでしょうか。
正に、誰のための政治か分からなくなるばかりでなく、「金ずく」での内政干渉も起こりかねません。
米国の軍需産業が軍やホワイトハウスと密接に結びついていることは有名ですが、密かに日本企業を買収して日本の与党との間にパイプを作り、金を流して軍需を拡大するということも、あり得ない話ではなくなります。
実際、今年4月に米軍再編協議の最終合意に調印した後、米国のラムズフェルド国防長官(当時)は、額賀福四郎防衛庁長官(当時)に対して、「次は『省』昇格ですな。」と語り、また「日本の防衛予算の『GDP比1%』は低すぎる。合衆国(の軍事予算)は4%ですよ。」と注文しました。
ラムズフェルド氏は、昨年6月にも当時の大野防衛庁長官とシンガポールで会談したときも同じように「4%」を語り、日本の防衛予算拡大を要求しています。
これが、米国企業の「現ナマ」攻勢によって行われるとしたら大変です。
企業献金はその規模に応じて量的規制があり、年間最高10億円まで献金を行うことができますが、例えば、自民党には数千、民主党にも数百の政党支部があります。しかも、この両党の国会議員は、企業献金の受け皿として1人1つ以上の政党支部を持っています。
その政党支部に仮に10億円ずつばらまけば7千億円余り。それで防衛予算が4倍になれば、14兆円余り。すなわち約20倍ものビジネスチャンスが生まれることになります。
このような危険性を秘めた法改定が、いま行われようとしているのです。
■ 日本の将来を危うくさせるもの
その自民党のホームページをのぞいてみると、「教育基本法改正Q&A」が教育基本法を変える理由をいくつか述べています。その理由の中にこういうものがありました。
「ライブドアの決算粉飾事件や耐震偽装建築問題に代表される拝金主義やルール無視の自己中心主義が、日本社会や日本人の意識の中に根深くはびこり、日本の将来を危うくする事態に陥っています。」
冗談ではありません。ライブドア社の社長だった人物を、昨年の総選挙で幹事長や閣僚まで応援に派遣し、あれだけ持ち上げたのはどこの政党だったでしょうか。「耐震偽装」をめぐってヒューザー社の社長を国土交通省に引き合わせていた伊藤公介氏はどこの政党の議員だったでしょうか。
何より、数々の汚職事件を引き起こしてきたことに見られるように「拝金主義」が「意識の中に根深くはびこり」過ぎて、「ルール無視の自己中心主義」に走っているのはどこの政党でしょうか。
「日本の将来を危うくする事態」を作り出しているのは、正に彼ら自身だと言わなければなりません。
■ 外国からの金で再び政治を狂わせるのか
安倍首相の祖父にあたる岸信介氏が米国のCIAから数百万ドルもの資金を受け取りながら、日本の軍事的負担を強める日米安保条約改定(いわゆる「60年安保」)を行ったのは有名な話です。
また、その窓口を務めた佐藤栄作氏も、日米安保条約改定(「70年安保」)を行いました。
また、「60年安保」のときには民主党の小沢代表の父である小沢佐重喜氏も、自民党の一員として衆議院安全保障条約等特別委員会の委員長を務め、この安保改定実現に大きな役割を果たしています。
そして今、安倍晋三総裁が率いる自民党、そして小沢一郎氏が率いる民主党が「両輪」となって、再び外国からの金で政治を狂わす方向へ進もうとしていることを、私は憂慮せずにはいられません。
このような政党の存在を、皆さんはどのように思われるでしょうか。