恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

小泉首相の動きに見る「大騒ぎ」ではない日本

2006年07月11日 | 外交・国際
■ 「大騒ぎ」という韓国の指摘

 北朝鮮のミサイル発射後の対応について、韓国の青瓦台(大統領官邸)が9日、「無理に日本のように未明から大騒ぎする必要はない」と発表しました。これに対し小泉首相は10日夜、「賛成できない。日本としては納得できない」と語り、強い不快感を示したと伝えられています。

 なるほど小泉首相の言うことはもっともです。今回の韓国の指摘は「的外れ」だと私は思います。
 それは、この数日間の小泉首相の動きを見れば明らかです。

■ 小泉首相、「余裕」のミサイル発射当日

 最初のミサイル発射があったのは、5日の未明ですが、小泉首相がその日に外国の首脳と会談したのは、アフガニスタンのカルザイ大統領、西アフリカのベナン共和国のヤイ・ボニ大統領だけで、関係国との会談は、電話すらありません。さすがに「余裕」です。

 昼には、皇室典範改正準備室長と食事をしながら、叶わなかった「皇室典範改正」について語り合い、夜には、先の国会で「医療制度改革」による高齢者負担増を成し遂げた、自民党の厚生労働部会の面々と「打ち上げ」に興じています。朝には隣国でミサイルが「打ち上げ」られたばかり、夜には「国民負担増」法案成立の「打ち上げ」というのですから、本当に「余裕」です。

 ちなみにこの「打ち上げ」には、少し遅れて安倍官房長官も同席しています。

■ さらに「余裕」の翌日

 さて、小泉首相が関係国の首脳と連絡をとったのは6日の9時25分、すなわち最初の「発射」から約30時間後、もちろん相手はブッシュ大統領でした。それ以外には中・ロはもちろん、韓国とも連絡を取っていません。大変「余裕」が感じられます。

 ようやくブッシュ大統領に電話の相手をしてもらえて安心したのか、その後は「無派閥新人議員(小泉チルドレン)の会」の昼食会に出席するなど、極めて「余裕」です。

■ ますます「余裕」の小泉首相

 翌7日になっても小泉首相は、午前中「地球温暖化対策推進本部」で環境問題の話を聞き、夕方には次の外遊に備えて「散髪」に行くなど、本当に何事もなかったかのようです。

 さらに週末の8日・9日はしっかりと「お休み」を取り、公邸でのんびりと過ごしています。
 これほど「余裕」のある週末は、日本の首相としては本当に珍しいことです。

■ 小泉首相が「大騒ぎ」に反発する理由

 これほど「余裕」に満ちた日々を過ごしているのに、韓国が「日本のように・・・大騒ぎする必要はない」と言うのですから、小泉首相が「賛成できない」「納得できない」と不快感を示すのも無理はありません。

 小泉首相本人が、これまで見てきたとおり「大騒ぎ」どころか、「何もしていない」のですから。

 そして11日、この問題と全くかけ離れた中東に小泉首相は旅立ちます。イスラエル・パレスチナ間の衝突がまた激しくなる中ですので無意味とは思いませんが、その地域を気遣うほどの「余裕」が日本には十分あるということが分かります。

■ 「的外れ」

 ところで、「こういうときのため」だとして自民・公明・民主によって作られた「有事法制」や、自民党の改憲案では、内閣総理大臣を「最高責任者」として定めています。
 「武力攻撃事態」かどうかを判断するのも、内閣総理大臣です。

 その人々が決めた「最高責任者」が、医療制度の「打ち上げ」に興じ、「チルドレン」への派閥工作を行い、散髪をし、週休二日を満喫して、無関係のない外遊に旅立つという、一連の「余裕」の判断をしています。
 冒頭にも書いた通り「大騒ぎ」を指摘する韓国は「的外れ」ですが、日本で「大騒ぎ」して危機を煽り立てる面々もまた大変に「的外れ」なのではないでしょうか。

北朝鮮のミサイルと日米の温度差

2006年07月05日 | 外交・国際
■ 北朝鮮のミサイル発射

 7月5日早朝から、北朝鮮が複数回(これを書いている時点では6回)にわたり、ミサイルの発射を行ない、いずれもロシア沿岸の日本海上に落ちたことが報じられています。
 複数回、しかも異なる場所から発射されたということですから、当然「人工衛星」などではなく、ミサイルと見なければなりません。
 また、3回目に発射されたのが、長距離ミサイル「テポドン2号」の可能性があり、後は射程の短い「スカッド」タイプのミサイルだと報じられています。
 私は、この北朝鮮の愚かな行為に強く抗議したいと思います。

■ 「憂慮すべき事態」

 これに対し、日本政府は、朝7時半過ぎから安全保障会議を開き、その後の記者会見で「憂慮すべき事態」という認識を示し、米国と協議しながら、特定船舶の入港禁止などの制裁措置、国連安保理事会での協議を求めることなどを検討すると発表しました。
 この安全保障会議の前に、米国のシーファー大使とも外相・官房長官・防衛庁長官ら関係閣僚が会談していることから見ても、(米国の大使に「お伺い」を立ててから安全保障会議を開くというのも実に嘆かわしい話ですが)やはり「日米同盟」を軸に対処する構えを示しています。
 では、こうした日本政府の危機感に対し、米国はどのように受け止めているのでしょうか。

■ 「脅威ではない」と、花火見物を楽しむブッシュ大統領

 国家安全保障問題を担当するハドリー大統領補佐官は、この発射について「挑発行為」としながらも「差し迫った脅威ではない」と語りました。
 また米国のボルトン国連大使が、関係6カ国などの国連大使ら関係者を招集したところ、ホワイトハウスからは「時期尚早」と非難する声が上がっています。
 さらには、先週の小泉首相訪米の際、連携強化を確認したはずのブッシュ大統領は、ワシントンで行なわれる独立記念日の「花火大会」を予定通り見物に行くと伝えられています。
 この冷淡な反応に、日米の「温度差」を痛切に感じます。

■ 北朝鮮の相手とは

 さて、このミサイル発射について北朝鮮は、4日前に「米国が朝鮮半島で核戦争を起こす準備をしている」「北朝鮮は対応策として抑止力を強化する」とほのめかしていました。
 これはその2日前の日米首脳会談で、ブッシュ大統領が小泉首相とともに「ミサイル発射は受け入れられない。北朝鮮の指導者は意図を説明する義務がある」と発言したことに答えたものと考えられます。
 もちろん北朝鮮の愚かな言動には全く納得できませんが、彼らが警戒する相手が米国であるということだけは読み取れると思います。
 米国の独立記念日に発射が行なわれたことや、一発目の発射が米国のスペースシャトル打ち上げの時刻に合わせて行なわれていることからも、明らかに米国を意識したものと言えるでしょう。
 「悪の枢軸」と位置づけたイラク・イラン・北朝鮮の3ヵ国に対し、「先制攻撃論」を掲げた米国がイラクに対して何をしたか、イランに対して何をしようとしているかは誰もが知るところです。
 日本が、その米国と一層の連携や一体化を強化することは、むしろ逆効果ではないでしょうか。

■ 周辺諸国の動きと、日本の愚かな二人

 ところで、先月から騒がれているこの問題に関して、日本では他の近隣諸国の動きがあまり伝えられていません。
 韓国は6月20日、米国と北朝鮮の両国が直接対話によってミサイル問題の解決を促しましたが、米国がこれを拒否しました。
 ロシアも事態を憂慮し、22日には北朝鮮の大使を呼び出し「地域の安定を脅かし、朝鮮半島における核問題解決へのプロセスをこじらせる可能性のある行動は望ましくない」と北朝鮮に思いとどまらせるよう直接説得しています。
 27日には、中国と韓国が外相会談を開き、北朝鮮がミサイルを発射せずに6者協議に復帰できるような外交努力の必要性を説き、韓国が中国に北朝鮮を説得するよう要請し、中国側は協力を強化しミサイル発射回避のために努力することを約束しています。

 周辺諸国がこうした努力を続けている間、小泉首相は連携どころか、米国への「卒業旅行」に夢中でした。安倍官房長官は、民主党の訪中団について「米国とは同盟関係だが、中国とは違う。」と時宜をわきまえない揶揄で中国の反感を煽っています。
 日本の中枢である「官邸」の責任者2名がこのような有様なのですから、頭を抱えてしまいます。

■ 米国偏重ではなく周辺諸国との連携を

 いずれにせよ今回の発射により北朝鮮は一層孤立を深めました。これは自業自得としか言いようがありません。
 しかし日本も、「頼みの綱」であった米国の冷ややかな反応を見ても分かる通り、明らかに孤立を深めていることを認識する必要があります。
 あれほどまでに「いざというときは米国が守ってくれる」と「米国追従」を貫いてきた小泉外交が、いかに「的外れ」であったかは明白です。

 しかし今のところ、北朝鮮を除く日・米・韓・中・ロの政府は、それぞれが「北朝鮮を6者協議に引き戻す」という対応策で一致しています。
 この方針を堅持し、今後このような事態が起こらないよう、北朝鮮をしっかりと「対話」の枠組みに組み込んでいくことが最も重要であり、そのためにも、米国偏重ではなく、周辺諸国との連携が欠かせないということを強調したいと思います。