恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

間の抜けた「民主党代表候補」からのメールマガジン

2006年03月31日 | 国会・政党・選挙
 民主党の前原代表の辞任により、次期代表の人選に、世間の注目が集まる31日午後5時半過ぎ、有力候補の一人と言われる小沢一郎氏のメールマガジンが届きました。
 早速のアクションかと思い、見てみました。最後の部分をご紹介します。

(以下、引用)
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 来月4日に偽造メールの仲介者である元記者に対する証人喚問が行われる。民主党としては、真相解明に積極的に取り組まなければならないが、元記者はメール提供を否定しており、そう簡単ではなさそうだ。

 ともかく、前原誠司代表以下、所属議員や候補者ら全員が、この現状を深刻に受け止め、どうすればいいかを真剣に考えなければならない。僕も党の一員として、国民の信頼回復のために全力を尽くしていく所存だ。

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(引用終わり)

 数日前の小沢氏のコラムですが、前原氏が辞任表明をした直後に「前原代表以下」という文書を、よくこのタイミングで送ることができたものだ、と呆れ果てるばかりです。
 危機管理能力の欠如が指摘された前原氏でしたが、小沢氏のところも、この有様なのですから、何とも嘆かわしく思います。

民主党の前原代表が辞任

2006年03月31日 | 国会・政党・選挙
■ 3代続けて「引責辞任」

 いわゆる偽「送金指示メール」問題の引責により、民主党の前原氏が代表を辞任すると報じられています。これで民主党は、菅氏・岡田氏・前原氏と、3代続けて任期途中で代表が引責辞任となります。
 後任については、菅氏・小沢氏などの名前が挙がっていますが、これだけ逆風が吹いていることや、苦戦が予想される衆院千葉7区の補選が4月に迫っていること、9月に代表選本選を控えていることなどを考えれば、誰も、すんなりとは受けないのではないでしょうか。

■ 岡田体制・前原体制の「愚」

 さて、この半年余りの前原体制での民主党は、あまりにも不甲斐ないものでした。
 先の岡田体制のときに「野党離脱宣言」をし、「政権準備党」と言っていましたが、結局やったことと言えば、国会外で与党との協議を進め、「野(や)党」でも「与(よ)党」でもないと言うなら、その間の「癒着の癒(ゆ)党」だという批判も上がったほどでした。
 ところが、前原体制ではこれを改めるどころか、自民党との違いについて「8割が同じ」と言明し、「対案路線」と称して粛々と審議に応じ、与党に批判材料だけを提供し、結果として与党ペースでの法案審議に貢献するなど、より悪化するばかりでした。
 いわゆる「4点セット」で少しは政府・与党を追及できるかと思えば、手柄を焦る永田氏の一件で「腰砕け」に終わり、政権末期で「レームダック化」していた小泉内閣に息を吹き返させ、追及もまともにできないという、極めて情けない状態を招きました。
 このように政府・与党を追及できない野党など、それこそ「税金のムダ遣い」と言わざるを得ません。

■ 「野党としての役割」を果たせる政党であれ

 本来、野党が果たさねばならない役割は、政府・与党の横暴に対し、その問題点を国民の前に明らかにして世論を喚起し、数に勝る与党に国民の声を突きつけ、問題の多い法案の成立を阻止し、あるいは国民の立場に立って内容を修正させることにあります。
 最近の民主党が、この「野党としての役割」を放棄してきただけに、今後の民主党がどうなるのか気になるところです。これを機に、少しはまともな政党になってくれれば良いのですが…。

与党が「教育」に求めるもの

2006年03月30日 | 教育基本法・教科書
■ 教育基本法改定案「宗教的情操の涵養」は見送られたが

 自民・公明の両与党の「教育基本法改正検討会」は29日の会合で、教育基本法の改定案に、自民党が強く主張していた「宗教的情操の涵養」を盛り込まないことで一致しました。これは公明党の支持母体である創価学会に配慮したものとされているようですが、子供たちの「信教の自由」に対する介入を排除するものとして当然のことであり、これを盛り込もうとすること自体、始めから実に愚か過ぎる行為だと言わざるを得ません。
 さて問題は、両党が次回以後、いわゆる「愛国心」の表記について詰めの作業に入るとしていることです。これについて自民党が「国を愛する心」という表現を主張し、公明党は「国を大切にする心」という表現を主張し、意見が分かれています。
 では、そのような「愛国心」教育で、彼らは一体どのようなことを行おうとしているのでしょうか。
 私は、同じ29日に明らかになった高等学校用の教科書検定に付された検定意見に、その一端を見ることができると思います。

■ 政府の言うことは正しいと信じ込ませる

 今回の教科書検定で、文部省は「政府見解」に対する強い執着を見せました。とりわけ「靖国」「イラク」「領土」の問題では、それが顕著に表れています。
 例えば「靖国参拝」問題について、まず「公式参拝」は「参拝」に、一昨年の「福岡地裁による違憲判断」は「福岡地裁判決」に、と記述が改められました。
 また、「イラク戦争」について、米軍による「先制攻撃」という記述は認めませんでしたし、イラクへの自衛隊派遣について「非戦闘地域での後方支援活動」「多国籍軍への参加」という事実ではなく、「復興人道支援活動」と、政府が主張した「目的」だけを強調した記述になっています。
 「領土問題」については、竹島や尖閣諸島について、これまで検定を合格していた「(相手国と)交渉中」という表記は認められませんでした。
 これらは全て、政府や首相の主張を反映・踏襲したものでないと認めない、という政府の強い姿勢の現れです。少しでも政府の考えと異なるものや、政府に対する批判に繋がるものは一切排除しようというのです。
 つまり、子どもたちに「政府の言うことは全て正しい」と信じ込ませるための「教育」を行おうとしているのです。政府に対する批判を許さないどころか、批判しようと思うことすら許さない、これが与党が「教育」に求めるものであり、彼らが唱える「愛国心」教育の根幹です。

■ 子どもたちを「政府のロボット」にしてはならない

 しかし、政府がいつも正しいというとは限りません。逆に政府が間違いをおかすことは、よくあります。だからこそ三権分立があり、国会や裁判所のチェック機能があるのです。
 「政府の言うことは全て正しい」と信じ込ませることは、権力者にとっては都合の良いことでしょうが、子どもたちにとっては大変に恐ろしいことです。政府から与えられた情報をただ信じ、自分で価値判断をせず、政府の言うとおりに動く、これではロボットと変わりません。
 この教育基本法改定をめぐる協議の中で、公明党が以前、自民党に対して「『(国という)統治機構を愛せ』とか『国のために死ね』とかは言えない」と批判したことがありますが、これこそ正に「愛国心」教育の本質です。
 「ただ政府の主張を妄信し、『国のため』とさえ言えば喜んで命を差し出すロボット」私は、子どもたちをこんな風に育てたいとは思いません。
 子どもたちを、国家主義者たちに売り渡すわけにはいきません。私は、このような教育基本法改悪は断固として許すことは出来ませんし、教科書検定の姿勢には絶対に反対です。

岩国への移転、県も「容認できない」

2006年03月24日 | 基地・有事体制
■ 山口県が政府に要望書

 住民投票の結果、9割近くが反対を表明した、米軍空母艦載機部隊の岩国基地への移転計画について、山口県知事は23日に防衛庁・外務省を訪れ、「直ちに容認できる状況にはない」とした県の要望書を提出しました。
 合併前の岩国市で示された「撤回要求」については「踏み込み過ぎ」とし、「容認できない」という表現にトーンダウンしたものの、知事が、旧岩国市だけでなく合併した周辺町村など県民の声を受け止め、明確に受け入れに反対する姿勢を、政府に示したことを評価したいと思います。

■ 「民主主義の学校」に学べ

 「地方自治は民主主義の学校」と言います。
 普段から頻繁に顔を合わせる人々が地域コミュニティをつくり、その中で代表者である首長や議員が選ばれます。言わば、双方に「顔の見える政治」が、そこにはあります。
 いわゆる「平成の大合併」や議員定数削減などで、代表者は遠い存在になり、こうした地域コミュニティが壊されつつあることは残念ですが、まだ国政に比べれば、遥かに「顔の見える」ものです。
 今回の基地移転で、市が行った住民投票で「受け入れ反対」「撤回」の意志が示されました。そして、県が市民・県民の声を受け止め「容認できない」という意志を示しました。
 今、国政を預かる人々、そして私たち国民に求められているのは、この「民主主義の学校」に学ぶことではないでしょうか。

■ 声を大きく、強く

 これは今回に限ったことではありません。小泉政権下での様々な政策を見ていると、一体どれだけ国民の声に耳を傾けようとしているのか、全く分からないものばかりです。
 こちらからは小泉首相の顔は見えますが、彼には、私たちどころか、地方の代弁者の声すら届かないというのであれば、独裁国家と変わりません。
 声が聞こえないなら、聞こえるように声を大きく、強く広げていく、やはりこのことが今、私たち国民にとって大切なことだと思います。
 今そうしなければ、声を上げることすらできない世の中になってしまうかもしれない、自民党の改憲案を見ていると、そうした危機感に襲われます。

封殺される被爆者の声

2006年03月22日 | 叫び
■ 「政治的発言」に自粛要請

 長崎市の外郭団体である「長崎平和推進協会」が、被爆体験の証言活動を行なう被爆者の皆さんに「政治的発言」の自粛を求めたことの波紋が広がっている、というニュースを目にしました。
 それによれば、騒動の発端は、この協会が作成した「より良い『被爆体験講話』を行なうために」と題した文書でした。そこには「意見が分かれる政治的問題についての発言は慎んでいただきたい」として、次の8項目がその具体例として挙げられていたそうです。

 ①天皇の戦争責任
 ②憲法(9条等)の改正
 ③イラクへの自衛隊派遣
 ④有事法制
 ⑤原子力発電
 ⑥歴史教育・靖国神社
 ⑦環境・人権など他領域の問題
 ⑧一般に不確定な内容の発言(劣化ウラン弾問題など)

 これでは、「被爆体験を語るのは構わないが、その体験をもとに現在や将来のことについては話すな。」と言うのと同じです。

■ なぜ被爆者の口を封じようとするのか

 人は、過去を背負って生きています。
 その過去を教訓として、より良い自分になろうとする中で成長しますし、より良い世の中を作ろうとするからこそ人類社会が発展するのです。
 過去を、ただの「昔ばなし」の中に封印し、何の教訓にもしようとしないなど、成長や発展を拒絶するに等しい愚行です。

 なぜ今、彼らの口を封じようとするのか、それは、「意見が分かれる政治的問題」だからなどではなく、再び「戦争国家」を作ろうとしている現代の権力にとって「都合の悪いこと」だからではないでしょうか。
 被爆や戦争を経験された方々の、平和を願う声は、その経験に裏打ちされた重みがあります。その「重み」を忌み嫌う人々がいるのでしょう。 

■ なぜ体験を語るのか

 被爆者の方々が、自らの体験を語るのは大変つらいことだと思います。
 忘れられるのであれば忘れてしまいたいような記憶を掘り起こし、必死の思いで語っておられることでしょう。
 なぜ、そうするのか、それは「二度と同じ思いをする人々を生み出したくないから」ではないでしょうか。
 このような被爆者の皆さんの口を封じようとする行為は、私は断じて許すことはできません。
 そして、このような言論封殺を繰り返しながら、「戦争国家」へ逆行しようとする動きも、絶対に許すことはできません。

■ 体験をもとに現代の政治に警鐘を

 私の祖父は61年前、長崎市上空に投下された原爆で爆死しています。
 爆心地のすぐ近くにいたため、遺骨も遺髪も残っていません。

 今も被爆体験の証言活動を続けておられる方々には、ぜひ私の祖父のように既に亡くなった人々の分まで、その被爆体験・戦争体験をもとに、いま何が起きようとしているのかをしっかりと見つめ、現代の政治に警鐘を鳴らして頂きたいと思います。

イラク開戦から3年

2006年03月20日 | 外交・国際
■ 3年前の3月20日

 3月20日、「あれから何年」という報道が目につきます。
 地下鉄サリン事件から11年、福岡県西方沖地震から1年を迎えました。どれも背筋が凍るような記憶です。
 特に私は、やはり3年前の3月20日、非常に気味の悪い国会の中継映像が強く印象に残っています。
 その日、米英がイラクへの攻撃を開始し、衆議院・参議院で本会議が召集されました。このイラクに対する武力行使後の事態への対応について小泉首相が報告を行なうための本会議でした。

■ 狂気に満ちた本会議場

 議場は開会前から、これまで見たことのような興奮状態にありました。
 当時の与党3党の議員が立ち上がり、割れんばかりの拍手と喚声の中、小泉首相が満面の笑みで入場し、与党側の席に手を振りながら自分の席に進みました。
 その直前のニュースでは、空爆の模様が映し出されていました。今こうしている内にも、あの閃光の下で、何人もの命が奪われているというときに、この拍手と喚声、そして小泉首相の笑顔は一体何なのだ、と背筋が凍る思いで見ていました。
 そして小泉首相は登壇し、イラクが「大量破壊兵器」を隠匿していることを理由に、この開戦を「やむを得ない」とし、米軍等のイラク攻撃への支持と、米国への支援、戦後の復興支援を行なうことを表明しました。
 その間も、議場は騒然とし、与党側から拍手と喚声が、野党側から怒号が、やむことはありませんでした。

■ 小泉首相が示した十項目

 このときの議事録を今あらためて読み返してみると、小泉首相は次の十項目の措置を行なうことを閣議決定し、表明しています。(分類は私が行ないました)

Ⅰ.邦人・国内の安全確保
 ①イラクとその周辺における邦人の安全確保のための万全の措置
 ②国内重要施設、在日米軍施設、各国公館の警戒警備等、国内における警戒態勢の強化・徹底
 ③日本関係船舶の航行の安全を確保するための措置

Ⅱ.原油の供給と価格の安定
 ④原油の安定供給を初め、世界及び我が国の経済システムに混乱が生じないようにする措置
 ⑤原油等物資の市場動向や供給状態、金融・証券市場の動向の監視と原油の安定供給のための措置

Ⅲ.イラクとその周辺国に対する支援
 ⑥武力行使によって被災民が発生するのに応じて、国際機関やNGOを通じた支援
 ⑦周辺国に対する自衛隊機等による人道物資の輸送等の支援を含めた緊急人道支援
 ⑧武力行使によって経済的影響を受けるイラク周辺地域に対して、影響を緩和するための支援
 ⑨イラクにおける大量破壊兵器等の処理、海上における遺棄機雷の処理
 ⑩復旧復興支援や人道支援等のための措置

 これを見ながら、この3年間の日本政府が取ってきた行動を振り返ると、多くの疑問が湧いてくるのは私だけではないと思います。

■ 「十項目」の結果

 例えば、①について、イラク人質事件での対応は「万全の措置」と言えるものだったでしょうか。
 ②について、確かに首相官邸や在日米軍施設は、警戒態勢が大変に強化されました。しかし、自衛隊派遣を理由に、日本に対する「テロ予告」が2度も行なわれていますし、テロ組織メンバーとされていた男が何度も日本に入国し、国内で活動していたこともありました。
 ③は今のところ大丈夫なようですが、④⑤は原油価格の高騰が続き、中東依存型の石油政策がいま問われています。強いて言うならば、膨大な戦費を必要とした米国の国債を大量に買い支えたことが「世界の経済システムに混乱が生じないようにする措置」だったのでしょうか。
 ⑥について言えば、逆にNGOを排除する傾向が見られましたし、⑦については、自衛隊機は人道物資ではなく武装した米軍将兵を運んでいます。これは陸上自衛隊が撤退した後も続ける方向だと伝えられています。
 ⑧については、何を行なったのか疑問ですし、⑨で掲げている「大量破壊兵器」自体が存在していませんでしたので「処理」など必要なかったわけです。
 ⑩については、米国の要請に基づいて自衛隊を派遣し、給水活動や学校の修復などを行なったことを挙げるのでしょうが、前述のようにこのことが、日本人殺害の理由になり、また国内に「テロ予告」を招き寄せました。
 あの狂気に満ちた本会議場で、小泉首相が声を張り上げて叫んだ方針は3年後、このような結果となっているのです。

■ 「狂気」から醒めよ

 攻撃の根拠とされた「大量破壊兵器」は存在しなかったことが、既に明らかだということは先に触れた通りです。同時に指摘された「テロ組織との繋がり」「9・11テロへの関与」なども全く根拠の無いものだったということも分かっています。
 米国のメディアはイラク戦争に突き進んだ一因は、政府に騙された自分たちの報道姿勢にあったことを反省して久しいですし、あれほど熱狂的に、ブッシュ政権と、そのイラクに対する強行姿勢を支持した米国の市民も今では、すっかり冷静さを取り戻し「イラク戦争は誤りだった」という声が過半数を占めるようになっています。
 まだイラクに対する強硬策に固執するブッシュ大統領の支持率は、当時の約半分の30%台にまで落ち込んでいます。
 小泉首相も、もういい加減に「狂気」から醒め、こうした現実に目を向けるべきだと思います。

岩国の問題は、岩国だけの問題ではない

2006年03月14日 | 基地・有事体制
■ 投票結果「無視」に躍起になる政府

 12日に山口県岩国市で行われた住民投票で「移転受け入れ反対」が圧倒的多数を占めましたが、それからというもの政府は「再編協議に影響はない」「計画の変更はしない」など、この投票結果を無視する構えです。
 政府がこうした強硬な態度でいるのは、全国各地の基地関係自治体への飛び火を恐れているためでしょうが、政府の主張の中心となっているのは、「安全保障を考えた上で必要なことだ」「安全保障政策は政府が決めることだ」「これは岩国だけの問題ではない」というものです。
 では、この移転問題や米軍再編協議について、政府は本当に「安全保障」を考えているのでしょうか。

■ どう安全保障を考えたというのか

 今回、問題となった艦載機部隊は現在、厚木基地にいます。これを岩国に移設することについて防衛庁は「厚木周辺住民の生活環境改善」と説明しています。
 つまりは、「厚木で迷惑だから、岩国へ」という訳です。これでは単なる「たらい回し」です。
 この論理が通るのであれば、今回、岩国でも迷惑だという住民の意思が明確に示された訳ですから、海外に出て行ってもらえば良いではないかと考えるのが筋でしょう。
 それでもなお、日本の安全保障を考える上で、どうしてもこの部隊は日本にいてもらわなければならない、と言うのであれば、「どう安全保障を考えたのか」「なぜ必要なのか」を、しっかりと説明すべきです。

■ 必要なら具体的に説明を

 具体的に言うならば、この空母艦載機部隊について、どういう事態が起こったときに、どのように動くのか、その事態はどこの国が、どういう戦力を投入して、どう展開することを想定しているのか。その事態が発生する可能性は、どの程度現実味のあるものなのか、もしこの部隊がいない場合、どのような局面で、どのような弊害が考えられるのか、―といったの点について、誰にでも分かるように充分説明することが必要ではないでしょうか。
 もし、それで誰もが「ああ、日本の安全のために必要だ」と納得すれば、誰も異議を唱えたりはしないでしょう。
 隣家で火災が発生し、今にも我が家が燃えそうなときに、自宅に放水されて誰も文句を言わないのと同じです。

■ 説明できない、具体的な危険性

 しかし実際には、そのような説明は誰もできません。
 最新(2005年度版)の防衛白書でも、「見通し得る将来、わが国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」と指摘しています。
 小泉首相も以前、国会で「具体的にどこの国に備えるというのか」と質問され、答えることができず、ただ空念仏のように「備えあれば憂いなし」と繰り返すのみでした。
 政府自らが「特に具体的な危険はない」と証明しているのです。

■ 岩国市だけでなく

 具体的な危険性もないのに、住民の声を無視し、騒音・振動・事故の恐怖に苦しむ人々に、さらなる苦痛を押し付けることは、断じて許される行為ではありません。
 もちろんこれは岩国市だけでなく、全ての基地周辺地域に言えることであり、今回、政府がどう対応するかは、全ての基地周辺の自治体に関係する問題だと言えます。
 さらに言えば、既に成立している有事法により、首相が「武力攻撃事態だ」と言いさえすれば、全ての地域で、どんな施設でも、米軍や自衛隊が強制的・優先的に使用できるようになっています。
 そのことを考えれば、基地問題は、日本の全ての自治体の問題と言っても過言ではありませんし、全ての日本国民にとって、決して他人事ではないのです。

■ 私たち自身の問題として

 岩国市の井原勝介市長は今日、今回の住民投票の結果に基づいて、16日に政府に対して、移転計画の撤回を求める申し入れを行なうことを明らかにしました。
 私は、この申し入れの行方を、岩国市の問題としてだけでなく、私たち自身の問題と受け止めて、見守っていきたいと思います。

岩国市の皆様に敬意と感謝を

2006年03月12日 | 基地・有事体制
■ 移転受け入れ「反対」圧倒的多数

 山口県岩国市では12日、米軍再編による空母艦載機57機の受け入れの賛否を問う住民投票が行われ、この受け入れ案に対し圧倒的多数が「反対」の意思を示しました。
 この岩国市民の皆様の毅然とした選択は、基地問題を抱える日本中の地域の方々に、計り知れない希望を与えることと思います。

 当初から反対票が賛成票を上回る見通しが伝えられていましたが、私も米軍再編による基地機能強化に反対する一人として、やはり結果を聞くまで正直、気が気ではありませんでした。
 この報道に思わず胸が熱くなりました。あらためて心より敬意と感謝を申し上げます。本当に有難うございました。

■ 政府・与党の反応

 しかし、この結果に対し、政府・与党の反応は今のところ大変、冷淡なものです。
 自民党の片山虎之助氏や、山崎拓氏らは、この結果を受け「防衛問題は国が決めることだ」「住民投票というやり方は好ましくない」などと発言しています。
 これは言い換えれば「政府が決めたことに国民は口を出すな」ということではありませんか。これは、あまりにも国民を見下した発言だと言わざるを得ません。

 まして、山口県と同じ中国地方の片山氏、お隣り福岡県の山崎氏がこのようなことを言うのですから、彼らには「地方の代表」などと語る資格は全くないと言えるでしょう。

■ 逃げた人物

 山口県といえばもう一人、有力な自民党議員を思い出します。官房長官の安倍晋三氏です。彼は今日、こうした難を避けるためか、地元でも東京でもなく石川県に行っています。そこで現職の官房長官が国政選挙があるわけでもないのに、なぜか街頭にまで出て演説をしているのですから、普通に考えれば不思議な話です。
 しかし彼は狡猾な人物です。自分のキャリアには非常に強いこだわりを見せます。例えば、応援依頼が殺到した昨年の総選挙でも、「刺客」騒動で分裂・対立のある選挙区には一切、足を踏み入れていません。後々まで禍根が残るような選挙区には、わが身への「飛び火」を恐れ、近づこうとしなかったのです。
 今回の住民投票のように、世間の注目を集め、そして政府側に不利な結果が予測されるときに、地元や東京にいれば、必ずマスコミにコメントを求められます。そこで、彼が片山氏や山崎氏のように、本音を口にすれば後々、総裁選に影響があるかもしれない、と踏んで森前首相の地元に匿ってもらったのではないでしょうか。
 もしそうだとすれば、最も大切なのは我が身という、政治家として実に下らない人物と言わざるを得ません。

■ この「声」を

 その点、同じ山口県民でも、岩国市の皆様は本当に毅然とした「声」を示されました。
 私たちは、これを機に、各地で「声」を強く、大きくしていかなければならないと思います。

 こうした「声」に対し、政府・与党は、暴論で押さえ込んだり、逃げたりせず、真摯に受け止めてほしいと強く思います。
 そのことができるかどうかで、彼らが米国の政治家であるか、日本の政治家であるか、が分かると思います。

「米軍再編」日本政府よ、国民の声を聞け

2006年03月08日 | 基地・有事体制
■ 誠心誠意

 昨日7日の参議院予算委員会で小泉首相は、米軍再編に伴う基地移転先の反対の声を取り上げた社民党の福島瑞穂氏の質問に対し、「(住民の)理解が得られるよう、誠心誠意努力している」と答えました。
 しかし日本時間の今日、日本政府は基地移転先の自治体の了承を事前に得ないまま、日米間で「最終報告」を取りまとめる協議に入っています。
 先に、政府間で「最終報告」を上げてしまえば、関係自治体や住民は後回しです。「もう米国と合意したので、住民の皆さんは黙って従って下さい。」となってしまう訳です。
 一体、これのどこが「誠心誠意」の努力だと言うのでしょうか。

■ 一切無視

 これまでも、米軍再編・基地移転問題に関する政府の対応は、お世辞にも「誠心誠意」と呼べるようなものではありませんでした。
 例えば「振興策」と引き換え、とはすなわち「金をやるから基地を受け入れろ」と札束で頬を張るような行為ですし、普天間飛行場のキャンプシュワブ周辺への移転問題では、「修正案が提示されれば協議に応じても良い」とする名護市長に、その案すら示しませんでした。

 国民や自治体の声を一切無視し、国会で虚言を吐き、米国との協議に粛々と応じる、これが民主主義の国の姿であると言えるでしょうか。

■ 踏んだり蹴ったり

 今回の米軍再編はそもそも、基地が密集する沖縄を始めとする「地元負担」の軽減に主眼が置かれていたはずです。
 それが、在日米軍の行動範囲を、極東から世界中に拡大するという米国の世界戦略の前に、小泉内閣は、国民を無視し、当初の目的さえ忘れ、米国の言いなりで協議を進めています。
 その結果、日本国内での基地のたらい回しと、自衛隊と米軍との一体化、そしてドサクサ紛れの海外移転費用の押し付け、など国民にとって、「踏んだり蹴ったり」の大問題ばかりが残されようとしています。

■ 日本の陸海空・首都を米軍が掌握

 それだけではありません。米軍の新たな配置案を見れば、日本の領土・領海・領空を握っているのは、どこの国でしょうか。「陸」はキャンプ座間に移転されようとしている米陸軍第一司令部、「海」は横須賀に置かれようとしている原子力空母と日本海側に配されるイージス艦、「空」は横田を中心として、「演習」の範囲を日本全土に広げようとしている米軍機、あるいは空母艦載機です。
 正に日本の再占領と、日本全土の基地化と言っても過言ではないと思います。

 それだけではありません。私は、座間・横須賀・横田、3つの地名を挙げました。どこも日本の首都・東京の「喉元」とも言うべき地点です。
 自国の首都周辺に他国の軍隊が来ることに反対するなら分かりますが、わざわざ地元の反対を無視して招き寄せることに必死で汗を流す、これほど愚かな政府がどこにあるでしょうか。
 私は、小泉政権のような政権が現在の日本の政務を執っていることを、本当に情けなく思います。

■ 国民の声が聞こえるように

 米軍再編協議をこのまま進めさせてはなりません。
 山口県岩国市では、米空母艦載機受け入れの賛否を問う住民投票が、12日に行なわれます。
 この受け入れに反対する住民の方々を支援するとともに、全国の移転先周辺の皆様にも住民投票を求める声を上げて下さるようお願いしたいと思います。
 「許せないものは許さない」と、全国の人々が声を上げ、意思を突きつければ、政府も無視してばかりではいられないはずです。

 国民の声が、小泉首相や政府に聞こえないのなら、聞こえるだけの大きな声を上げる、このことこそ今、大切なことではないでしょうか。