恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

二つの「油」に見る「やらせ」政治劇

2008年01月07日 | 国会・政党・選挙
■ 急がないが「転用」については「口出し無用」

 臨時国会の会期末が迫り、政府・与党は「新テロ特措法案」の成立に躍起になっています。
 しかし、法案に盛り込まれているように、給油対象を「テロリスト海上阻止活動に参加する艦船」に限定することに米国は、「活動の制約は絶対に受け入れられない」と日本政府に伝えていることが明らかになりました。さらに日本と給油対象国との間で結ばれる「交換公文」について、米国政府当局者は言っています。「交換公文の締結は何ヶ月かかっても構わない。日本が他国と、同様の(「限定」を盛り込んだ)交換公文を締結できれば、その国の艦船へ給油すればいい。」
 つまり、米国は「給油再開は急がない。ただし、もらったものはこっちのもの。どこに転用しようが口出しするな。」というわけです。
 このような米国の姿勢は、昨年から指摘されている「イラク戦争転用」の疑いを濃くするものであり、さらに今後も「違法転用」が行われる危険を高めるものです。そうなれば、政府・与党の「法案が目的を限定しているのだから、活動内容に対する国会承認は不要」という主張を、根底から覆します。また日本政府ほど米国は「急いでいない」ことも注目に値します。

■ 切り札を「封印」した民主党

 法案の本質的な前提が大きく揺らいでいる以上、その成否をめぐって与野党の攻防が激しくなるべきところですが、国会にはそのような緊張感は見受けられません。
 参議院では、「新テロ特措法案」を審議する外交防衛委員会で10日採決を予定し、翌11日午前の本会議で否決する予定です。これを受けて与党は、同日中に衆議院本会議で「3分の2以上」による再議決を行うことが、もはや「既定方針」とされています。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
 野党第一党の民主党は12月27日、対案(「テロ根絶法案」)の趣旨説明を行いましたが、その同じ日に「今国会中、問責決議案は提出しない」という方向性を打ち出しています。
 これは、「衆議院通過後60日」の「見なし否決」前日に否決することで、与党側からの「時間稼ぎ」批判を免れようという意向によるものです。
 つまり、「民主党は時間稼ぎなどしていない。衆議院通過後60日間より前に採決したし、対案も出した」と主張しつつ、「それでも、再議決するならそれも結構。それを行う福田首相の責任は問いません」と、福田首相の背中を押したのです。
 「問責決議」という切り札を早々に封印してしまうなど、その国会戦術は「ど素人以下」だと言わざるを得ません。また、「どうぞ再議決してください」という民主党のこの姿勢は、「アフガン後方支援は憲法違反であり、反対」という公約を破るものですし、それを信じてきた国民に対する重大な「裏切り」です。民主党も、与党の「再議決」の「共犯」関係にあると言わねばなりません。

■ 党利党略による「計算」

 その民主党も計算には余念がありません。
 福田首相が、「新テロ特措法案」に固執し、国民生活の向上には目もくれなかったことは周知の通りです。
 いま原油高騰の影響で、ガソリンなどの「暫定税率」問題が注目を集めています。「生活第一」を掲げて参院選を勝った民主党としては、「新テロ特措法案」より、この問題で「暫定税率据え置き」を図る政府・与党との違いを明確にして「問責」に踏み切るほうが、選挙に有利だという計算をしています。
 確かに国民の立場から言えば、遠くインド洋での給油活動よりも、日々の生活に直結する課題のほうが重要です。ガソリンの値段「据え置き」を押し切ろうとする自民党と、「25円下げる」という民主党、「レギュラーガソリン1リットルあたり、150円か125円か」どちらのガソリンスタンドに行きますか、というような「折込チラシ」程度の競争になれば、多くの国民は民主党案に飛びつくはずです。
 しかし、それは所詮「党利党略」に過ぎず、本当の「生活第一」だとは言いがたい問題があるのです。

■ 「やらせ」の「再議決」

 参議院で「問責決議」を通して解散に追い込む、というシナリオは、政府・与党が責任を問われるような行為をした上でなければ成り立ちません。
 来年度の政府予算案には、「暫定税率据え置き」が盛り込まれていますが、「据え置き」のための法案を通さなければ、この予算は執行できません。今の国会状況のままであれば、この法案は衆議院で可決、参議院で否決となるでしょう。民主党のシナリオによれば、衆議院がこの法案を再議決したところで、参議院が福田首相への「問責」を通して解散を迫ることになりますが、そのときには、「暫定税率据え置き」の法案は成立していることになります。
 つまり、民主党のシナリオは、政府・与党にやらせるだけやらせておいて、そのことをあげつらい、国民の怒りを利用して自分たちが選挙に勝つというものです。
 しかし本当に国民生活向上のために、「暫定税率据え置き」を阻止しようというのであれば、問責・解散はもっと早くにやる必要があります。例えば、1月か2月に解散があれば、恐らく与党は衆議院での再議決に必要な「3分の2以上」の議席を維持することは困難でしょう。与党が「3分の2」を下回れば「再議決」の道は閉ざされ、当然「暫定税率据え置き」も食い止めることができます。
 やるべきは一刻も早く衆議院解散に追い込むことです。現実に「暫定税率据え置き」を阻止する方法があるのにそれを選ばず、与党の「再議決」を待つだけであれば、それは「やらせ」と同じであり、与党とは「共犯」扱いされても仕方ありません。国民感情をもてあそぶだけであり、とても国民生活を重視している政党のやることではありません。

■ 本当に国民生活を見つめる政治勢力を

 国民生活に全く目を向けようとしない自民党、そして国民生活と国民感情をもてあそび、結局は自分たちの利益しか考えない民主党。
 このような二大政党の「やらせ」の政治劇に振り回される国民は不幸です。
 「偽」は2007年まででたくさんです。
 今年こそ、本当に国民の生活を見つめ、その改善と向上を目ざす政治勢力の伸張を望みます。