呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

上海高島屋に関する現地報道(2)

2014年06月16日 | 日記

 最近よく中国のメディアで上海高島屋の記事を見かけます。ポジティブな内容とは言えないのですが、これだけ取り上げられると少しは知名度が上がってくるのではないでしょうか。ということで、6月2日に引き続き高島屋に関する報道について紹介します。日本でいう日経新聞のような存在で第一財経日報という新聞がありまして、この中で上海高島屋の小森副総経理やそれに関連する内容について書いています。

 

 上海高島屋では昨年12月から6月までにかけておよそ50-60のブランドが引きあげてしまっています。このような状況なので上海高島屋は自営モデルへの転換を図り、日本から直接商品を仕入れることを計画しています。一般的に百貨店はブランドに入居してもらい、賃料と売り上げ歩合を受け取る形式が多く、この形式だと入居店舗が品揃えを決めます。これに対して自営モデルは百貨店自らが商品の仕入れを行って販売するため、完全に自分たちの意向に沿った品揃えを行うことができるというものです。上海高島屋は今年3月から既に1階、3階、4階、5階の一部エリアで自営を開始しています。

 

 一般論として「一部の商品は中国市場では大衆的な知名度に欠けているために消費者に認められず、そのため多くのデザイナーブランド、自社ブランドまたはニッチなブランドは中国では難しい」ことに対して上海高島屋の小森副総経理は、

 

これについては我々も既に分かっている。ブランドの大衆的認知度については多くがアパレルに反映されるので、我々は自営で商品を導入するときアパレルではなく、日本の特色のある工芸品と雑貨領域により注目する。我々の自営方式とは、日本で直接日本の特色のある独自商品、特に工芸品と日用雑貨分野の商品を買取方式で仕入れ、上海高島屋で販売する。(中国語からの翻訳なので硬い日本語になってます)

 

とコメントしています。

 

 上海高島屋の営業面積のうち6%が自営スペースで、来年春までにはこれを10%まで持っていき、将来的にはこれを15-20%にまでもっていこうと計画しています。

 

 上海高島屋は平均で毎日数千人の来客があり、週末のピーク時には平均1万人以上だそうです。しかし、上海高島屋くらいの箱の大きさになるとこれだけでは全然足らないそうです。ネットで検索しただけなので公式データではない(業界団体より売上高は発表されていますが、来客数は発表されていないのです)のですが、日本の百貨店の来客数は、

・都心のターミナル立地…8万人~13万人/日

・中規模の郊外ターミナル立地…2万人~5万人/日

・郊外の駅前立地…1万人~2万人/日

だそうです。単純比較するとかなり見劣りしますね。

 

 顧客構成ですが、VIP会員制度があり、VIP会員のうち90%が中国人(中国なので中国人が多いのは当たり前ですが)で、昨年12月の売り上げのうち約49%はVIP顧客からのものだったのが、今年5月はこれが42%にまで下がっています。メディアでは「上海高島屋にあらたな顧客がついていることがうかがえる」と書いてあったのですが、意地悪な見方をするとVIP客が離れていったと見ることもできますね。

 

 知人と上海高島屋の話題になると最後はいつもロケーションの話に行きつきます。中国メディアでもロケーションがよくないことはよく指摘されています。来客数が少ないのがかなり致命的かと思うのですが、今更場所を移転することもできないでしょう。このような状況で冒頭に書いたような自営モデルへの転換で今の状況を変えることが果たしてできるでしょうか。私の知人で小売業界で働いていた人が言ってました。「小売りは立地が命です」。となると、立地の性質が今のまんまであればやはり難しそうですね。


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