呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

資生堂中国の四大改革

2015年07月08日 | 日記

 中国のスキンケアの市場規模は212億米ドルでトップ、2位が日本で162億米ドルなのですが、大きく引き離しています。しかしながら、一人当たり消費額となると日本は127米ドル/年、中国はわずかに16米ドル/年、北京・上海・広州等の大都市だと30米ドル/年ですが、まだまだ日本と比べて大きく後れを取っており、逆に言えば潜在力のある市場ともいえます。

 さて、2014年の中国化粧品市場ですが、2014年のロレアルの中国売上高は143億元で前年比7.7%増、韓国の愛茉莉太平洋が25.5億元で前年比なんと44%増、エスティローダーは売上数値を公開していないものの、前年比二ケタの成長をしているようです。そして、日本を代表する資生堂、中国のトップがいつのまにかドイツ人になっています。知らなかった。中国ビジネスに成功した日系企業として良く取り上げられる資生堂ですが、昨年の資生堂中国の売上高は1148億円(58億元)と、表面的には大きく見えますが、前年比わずか2.8%しか伸びていません。将来的には中国市場での売上目標を2000億円に設定しており、最近8か月の間の20名以上のマーケティングの高級人材を採用しており、今後さらに多くの人材と管理面で現地化を進めていくとのことです。

 

 この2000億円の目標を達成するために、ドイツ人トップは4大変革なるものをアピールしています。

 

1.ブランド再建

 急成長している韓国ブランドはブランドストーリーを消費者に対してアピールできているのに対して、資生堂のドイツ人トップは資生堂は消費者に対してそれができていないと感じており、これとポジショニングを今後明確にしていくとのことです。

 

2.商品イノベーション

 ブランドのポジショニングを明確にすること以外に、中国現地での研究開発を強化していく方針です。既に北京に研究開発センターがあるのですが、上海にも儲けて商品の現地化を促進していくことを考えています。

 

 

3.組織調整

 日本に合った「中国事業部」の経営とマーケティング機能を資生堂(中国)投資有限公司(中国の傘型会社)に移します。これにより今後資生堂(中国)は独立して中国戦略、企画、マーケティング、研究開発の意思決定を迅速に行うことができるようになり、中国現地のニーズにより対応しやすくなっていきます。

 

4.ビジネスモデルの変革

 資生堂の中国におけるEコマース販売の比率は商品により異なるのですが、ざっと5-20%、これを2020年までに30%にまで引き上げていく計画です。これは計画ですが、ドイツ人トップはもっと高い数値にいなるのではないかと予想しています。ニールセンが3万人の中国人消費者に対して行った調査によりますと、昨年42%の中国人消費者がスキンケア商品をネット販売で購入しているという結果が出ていますが、世界全体ではこれは25%に過ぎず、中国のネット購入比率がかなり突き抜けていることがわかります。また、今後はデジタルマーケティングの重視し、3年以内には従来のマーケティングとデジタルマーケティングの比率を逆転させると計画しています。

 

 冒頭にも書きましたが、欧米系の化粧品ブランドが非常に人気がある中で、資生堂の伸びが弱いというのが現状です。生堂の中国事業はわりと早い段階に中国市場に入ってきたことが成功要因として取り上げられています(時期が早かったが故に多くの怪我もしてきていると思います)が、その貯金ももうなくなってきていると思います。伸びが鈍化したこの時期にドイツ人トップが提唱した計画をどれだけ実践に移すことができるのか、なかなか興味深いところですね。


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